【直撃1万字】経産省トップが明かす「若手ペーパー」に秘めた覚悟

2017/6/2

次官・若手プロジェクトの意味

5月18日に公開されるや否や、ネット上で、賛否両論を巻き起こした経済産業省の若手官僚らによるペーパー「不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」。
この文書を作成したのは「次官・若手未来戦略プロジェクト」という名であり、実は若手だけでなく、次官も関わっている。次官といえば、各省の事務方でトップのポストである「事務次官」のことだ。
現在事務次官を務める菅原郁郎氏は、2年前の就任直後から、努めて若手100人と何度も議論の場を持ち、将来の日本の課題への足がかりを探ってきた。
つまり、このペーパーは、若手の強い思いを引き出すために、経産省トップの菅原氏が仕掛けたものでもあるのだ。
批判も巻き起こったあのペーパーを通して伝えたかったものは何なのか。6月1日、経産省11階、事務次官室のドアを叩いた。

「悔悟、後悔、やり残し感」

──こんにちは。
なかなか私の方には取材がこなくて、寂しかったんですよ(笑)。
──そうなのですね(笑)。では早速、お聞きしたいのが、なぜ次官就任後から、積極的に若手との会合を持ち、このプロジェクトを始動させたのか、という点です。
理由は、大きく2つあります。
1つは、事務次官になったということは、役人としては最後のポストなわけです。しかも、それほど長くやる職務ではありません。
私自身、37年間役所にいて、自分なりに国家公務員として、国のためと色々やってきました。
その中で、公務として自分がやってきた足跡を改めて振り返ったときに、「まぁ、いい仕事したな」というのもあるんですが、それよりも「これができなかったな」という悔悟というか、後悔というか、「やり残し感」を痛烈に感じたんです。
僕は、たまたま国家公務員として経済産業省に入り、経産省の立場、窓口から国を変えていきたいと、経済、エネルギー、中小企業であったりとか、色々やってきたんですけども、今や、社会のもっと根本のところが、大きく変わろうとしていますよね。
時代の大きな変化があって、それについていけないがために、人々の不平等感とか、社会保障がマッチしなくなってきている。さらに、技術進歩のスピードにもついていけていない。

下が本当に変われば、上も

そこで、どうしたらいいのかというと、これは経産省という限られた窓口だけでは、全く対応できない。しかも、次官というポジションについた自分が残された2年間で達成できるかというと、とても解決できる問題でもない。
すると、これを誰に託すべきかと考えた時に、実力ある同僚である長官や局長に「よろしく」と言うのもいいんだけど、これは彼らにもやりきれない時間軸です。
やはり5年、10年、もしくは20年かけてやり遂げないと、日本の社会は変われないんじゃないか。