人気×実力×地方=ホークス練習着のスポンサー価値

2017/6/3
練習着にスポンサー。それは、プロ野球界で初の取り組みだ。
5月23日、福岡ソフトバンクホークスはZTEジャパン株式会社(東京都中央区)と「チームスポンサー」契約を締結したと発表。
同日から同社のロゴマークが、選手たちの着用するチーム練習着の背中上部に貼付されるようになった。
また、ヤフオクドーム内にあるプレスカンファレンスルームにて記者会見も行われ、ホークスからは今季ブレイク中の上林誠知外野手がチームを代表して出席した。
「僕自身もZTEさんのように、世界で活躍する選手になりたいと思います」と気の利いた力強いコメントで、御礼の気持ちを厚く表した。
ZTEは中国に本社を置く、通信設備、通信機器や端末の開発・生産を事業とする大手メーカー。
ソフトバンク本社とのかかわりも深い企業だが、なぜユニフォームではなく、練習着のスポンサー広告が実現する運びとなったのか。
実は冒頭に記した、「チームスポンサー」というのがポイントなのだ。

練習着スポンサー大歓迎の理由

現在、ホークスのオフィシャルスポンサー数は計およそ500を数えるが、その中において「チームスポンサー」というカテゴリーは今回締結されたZTEジャパンを含めても5社しかない。
チームスポンサーのみ、監督・コーチを含むホークスの全選手が着用するユニフォーム(上下)や帽子、ヘルメットへのスポンサー広告掲出が可能。ただし、これらは各箇所につき一社のみというのが球界のルールとなっており、ホークスはすでに4箇所すべてが埋まっていた。
そのため今回、ホークスは新たに連盟に対して練習着へのスポンサー広告許可を申請。そのアクションが奏功して、新規のチームスポンサーの枠を広げることに成功したのだ。
発表会見に出席したZTEコーポレーションのチャネルディレクターを務めるハーバート・チャン氏はホークスとのチームスポンサー契約について、次のように話す。
「1日数時間の試合に取り組むために、それよりはるかに長い時間の準備、練習に取り組む選手たちへ尊敬の意を表す意味もあり、練習着スポンサーを締結させていただきました。再度日本一を目指して戦うホークスを心より応援したいと思いました」
と、むしろ練習着スポンサーは大歓迎という姿勢を示した。

水曜1日で1時間テレビに露出

また、ZTEはスポーツへの貢献と革新的なイノベーションを大切にし、数年前からスポーツ業界へのスポンサーシップ活動に積極的だ。
今年5月にはスペインのリーガ・エスパニョーラ「セビージャFC」との公式技術スポンサーの2年間の契約更新も発表。アメリカNBAの「ゴールデンステート・ウォリアーズ」「ニューヨーク・ニックス」「ヒューストン・ロケッツ」「シカゴ・ブルズ」など、各界でチャレンジを続ける複数チームの公式技術スポンサーにもなっている。
ただ、練習着のスポンサーでどれだけの効果が期待できるのか、疑問の声が上がるのは当然だ。
そこはホークスという球団の特性がプラスに働くのではなかろうか。この練習着広告は球場でファンの目に触れる機会よりもメディア露出による効果が大きく期待されている。
ホークスの場合、練習中から多くのメディア媒体が常にグラウンドに張り付いている。それは試合のない練習日でも例外ではない。
4月の1カ月間における、全国放送および福岡ローカルの各テレビ局のホークス露出データがある。
曜日別になるが、たとえば6連戦初戦翌日の水曜日。福岡ローカル全6局で計およそ243分の「ホークスニュース」が伝えられている。4月は水曜日が4度あったので、4で割るとおよそ60分となる。福岡全テレビ局の合計ではあるが、1日の中で1時間もホークスが露出をしていることになる。
では、試合のない月曜日の翌日である火曜日はどうなのか。
やはり数字はヘコむが、それでも4月計153分が記録されている。これも4で割ると、1日あたり38分となる。もちろん練習風景が放映のすべてではないが、少なくとも関東の球団ではありえない数字なのは間違いない。
人気、実力、地方――この3点が実にうまくかみ合っているのがホークス。
たとえ練習着への広告掲出でも確かなメリットを見いだせたわけだ。
(写真:©SoftBank HAWKS)