【本田圭佑・人生哲学】かっこいい人物像(後編)

2017/6/12
サッカーファンやビジネスパーソンだけでなく、すべての人のために本田圭佑選手が自らの哲学を語る、本田圭佑のオフィシャルメルマガ「Change The World by KSK」(毎週水曜配信)の人気連載コンテンツ『人生哲学』。本連載では、その一部を特別にお届けします。(全5回)

自分の幸せが経営哲学

──器がでかくなったのはいつぐらいから?
わからん。すごく仲間、仲間や上下関係なんてないって思えるようになった。
──会社に?
会社っていうかこの世に。
俺が決定権与えられてるだけの話で、それ自体がルールで、そのルールも変えてしまって俺がおらんくなっても、誰かが決定権持つだけの話やから。
ただ、そこに対しての議論とかアプローチとかプロセスに対して、どっちが有利とかは無いねん。
──いつからそんな考えになったんだろうね? フェンロの時はまだない?
どうやろなぁ。
──CSKA? 2010年W杯?
アメリカ勉強するようになってからかも。オランダの時は絶対なかった、この考え。
──アメリカに触れるようになってから?
W杯終わってからかな、2014年。
──2014年の後?
あのW杯終わった後に初めてリサーチが始まったから。
Dennis Grombkowski - FIFA
──そこでいろんな出会いというか、スケールの大きさというか……
スケールの大きさに驚いたことは今でも覚えているけど、何やろ? よくわからへん。うまく説明できへんね。
でも、合理性はすごく気にするようになった。
──無駄なことに怒ったり?
例えばね。時間を無駄にもしたくないし、その批判して持ってきた提案が面白いかだけでいい。
──なるほど。自分のプライドが傷つくとかは……
そんなんどっちでもいいの。これが、ものすごくゴール地点に役に立つものなのか、だけでいいねん。
それよりも、今まではザ・日本的なものを持ってて、「誰に批判してやってるねん?」と。「誰に直接連絡してきてんねん?」と……。今は違う。
──共有してる目標に対してプラスになるなら全部やる、と。
そう。だってその方が効率的だから。
──今までだったら絶対に論破するタイプだと思ってたけど。本田圭佑がね。
でも論破、論破ってどういうこと?
──たたきのめすみたいな。でもそれはだから、例えば、そのさ、違う船と戦ってる時はそうするかもしれへんよね。自分のゴールが正しいと思ってる部分もあるし。
かっこいい男の集まった集団がいいね。なぜならそんなグループと、一生を過ごしたい。そんなグループと一生海を航海したい。
──ちなみに女性はそこには入れない?
いっぱいいるよ。かっこいい女で言うたらあんな感じ? ナミみたいな。知ってる? ワンピース読んでない?
──はい。
漫画何好き? 何読んでる?
──もちろんドラゴンボールとかスラムダンクとかは読んだけど、ワンピース……
最近は?
──最近、キングダム読んでます。
キングダムにも女性、出てくるやん。河了貂と、あいつ誰やったっけ?
──きょう。
きょうね。
──だいぶ使命のところに関して、明確になってきたっていうか、こういう人がこの会社にふさわしいというか、本田圭佑と働くにはどういう人を求めてるのか……
ちょっとだけね。ただのイエスマンじゃない。
親分がいて、親分の言うことだけでやってるような、そういう風に見られがちだった、超強烈なリーダーだから。言うことを聞くヤツだけ集まれ、みたいな。そういうのじゃないと。
そういう意味では、確かに俺が好きな曹操孟徳なんて超怖いからね。ゴッドファーザーも怖いし。
──怖さは遺伝子に組み込まれているかもしれないよね。甘くはない。
あ、俺? 俺はそんなに。
逆になんで怖いと思ってる、「え、どこが?」って思ってる。
──もしかしたら、そこに向き合うのが怖いと思ってるかもしれない。普通の人は。あまりにも燃えてる生き方をしてる人に意見するってことは、戦わなきゃいけない、同じ舞台に立つのは怖いかもしれない。そういう怖さ。
自分の船に乗ってほしいよね。
あともう一個は、人の会社で働いてるっていう感覚でおらんといてほしいよね。たまたま、すでに船員がいて、リーダーがいただけの話で、みんなの家なんですよね。
──そこはでも難しいよね。
でも、自分がそのゴールをもともと持ってる、と。そのゴールを掲げている、でっかい海賊船があると。それを途中で港に寄った時に、それ(でっかい海賊船があること)を知ってしまったと、酒場で。その海賊、リーダーと船長と船員と話してて飲んで、「めっちゃおもろいやん、そのゴール」ってなったと。
2つ選択肢があるんですよ。
筏(いかだ)で自分でその町で新しい船員を見つけてスタートするか、その船に乗るか。
その2択のどっちかを選んでほしくて、でも自分の俺らの船に乗った場合は、自分の船なんですよ。
──なるほど。乗せてもらってるんじゃなくて……
そう、手っ取り早い。ゴールはそこやから。変なことは考えなくていい。
だってゴールは一緒やから。
筏自分でやってやるよりも、こっち乗った方が早いんやから。
でも自分で何かやりたい、自分の船で航海したいだけという、「ゴールなんかどこでもいい」っていう人は自分で起業すればいい。
──なるほど。今後、本田圭佑がいるから働きたい、っていう人が増えてくると思う。
増えてきますかね?
──同じ船に乗りたいっていうのに近いと思うけれども、主体的な理由、ゴールをなんとなく、ふわっと、何となくかっこいいからこの集団で働きたいっていう人は増えてくると思う。
そんなんもう、絶対にどっかのタイミングで「入られへん」っていうか。
──本物じゃないと残れない?
……と思うんですけどね。無理あるでしょう? ゴールが違うってお互いわかると思うの、さっきの話と一緒で。
提案、批判出して話したときに、折り合いつかなくなってくると思うんです。
「何で?」って言った時に……
──そこは育てるのがもしかしたら使命かもしれない。使命っていうか、会社としても組織として、みんながそういう精鋭じゃないだろうから。
一番大事なのはゴールを示すことね。
──ビジョンを示し続ける、と。
何やろ? 自分の会社の社員だけに求めてもダメだと思うんですよ。
これ、僕思うんですけど最近思うのは自分の会社もそれ以外のグループ系の会社も、全部ひとつに感じてきて……
──もちろんそうだと思う。
でしょ? だから、グループのビジョンを示さないとあかんくて、HONDA ESTILOのビジョンはビジョンであるんですよ。
「スポーツ、教育を通じて、世界の子どもたちに、夢や希望を与え続ける組織であること」っていうね。
これって、結局グループとしては、“人を育てる”っていうような、教育中心になったような、ビジネススキームが多いじゃないすか? 人を応援するとかね、人に希望、元気を与えるようなメディアとかね。
根本的に言ったらそんなところからスタートしてるわけじゃないですか。
で、僕が投資してる投資先もそうなんですよ。
──社会貢献的な意義は大きいというかね。
社会貢献的な意義は、むしろ会社組織にとって当たり前の話で。
──なるほど、そこは根本にある、と。必ずしもそうじゃないときもあるだろうから。
だからそれが踊らされてるんでしょ? それは踊らされる典型ですよ。いわゆる利益、最初ね。
──やっぱそういう会社があることも、世の中を見渡すとね。
多いね。
──でもそうじゃないってことだよね、本田グループっていうのは。
そうでありたくないよね。失敗もしてきてるけどね。
──そこはすごい伝わりやすい。
でも結構、こういう考え方で経営してる人ってあんまりないんちゃうかなあと思ってて、僕はその、社員とグループメンバーと一緒に歩んでたいって気持ちが強いから、自分の幸せが経営哲学なんですよ。
どうやったら利益あげるかっていうような前提に作られた話は一つもないから。どんなメンバーと一緒にいたら自分が幸せかっていうような……
──なるほど。本田圭佑の一番すごいなと思ったことは、普通、社会的意義と利益っていうのが、矛盾する、時に相反する。
ほとんど相反やね。
──でも、両方、世界一目指してるって感じがして、2軸が矛盾してることが、普通、人の中で持てないのに、どっちかに寄るっていうか……
ね、ずっとそれで苦しんでる。
──苦しんでるんだ?
苦しんでる。毎回それの難易度を感じている。
──なるほど。感じてたんだね?
常に感じてる。
*明日の「失敗論」に続く。
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