【本田圭佑・人生哲学】目標設定論

2017/6/14
サッカーファンやビジネスパーソンだけでなく、すべての人のために本田圭佑選手が自らの哲学を語る、本田圭佑のオフィシャルメルマガ「Change The World by KSK」(毎週水曜配信)の人気連載コンテンツ『人生哲学』。本連載では、その一部を特別にお届けします。(全5回)

まずはてっぺんを知る

──今日のテーマは目標設定の仕方です。
なるほど。目標設定の仕方ね。
──なんでその話を聞きたいかっていうと、世の中の社員がそれぞれ自分で目標設定できないとダメだと思うんですよ。
なんでそう思うの?
──自分たちで自主的に動く組織を作りたいのであれば、上司からの無茶な目標設定に応えるだけじゃダメで、同じような感覚を共有しつつ目標設定の仕方も共有できるとよりいいかなと思って。日本人(選手や監督)の多くは、メッシやネイマールに勝つって普通考えないと思うんで、ぜひその目標設定の仕方をテーマにしたいです。
でも初めから(メッシやネイマールに勝つって)考えないと、いずれそこに到達するんですよ。
すごく考え方はシンプルで、二度手間でしょ?っていう考え方をすればいいんですよ。
今は高校レベルで頑張っていろいろやって喜ぶのもいいけど、結局、次の壁に当たるんです。二度手間なんですよ。次また基準を上げるのは大変なんですよ。最初から上げときゃいいだけなんです。
ひとつの勝利に中途半端に喜ぶ必要はないし、喜んでる暇もない。ひとつの目標に向かってやっていくだけなんです。
「高校が終わったらそこから違うステージ」ってのが、日本のサッカーで。高校までが一つのステージになってて、プロになるまでがまた次のステージ。
でもヨーロッパの奴らは全然違うねん。
 (Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images)
やっぱり、最初からバルサのプリマベーラ(下部組織)の奴らは、プロになったら一区切りっていう感じじゃなくて、プリマベーラからロナウジーニョとプレーするチャンスがあるし、メッシとプレーするチャンスもある。
ミランも、育成はそこまで充実してないけどそうなの。15歳から17歳くらいの子たちでも我々に合流してくる。日本のシステムはそこがほんとセパレートすぎて……。
──確かに高体連って名前も影響してるかもしれないけど。
名前を別にしたりとかするでしょう?いや、サッカー界は大きくひとつやから。結局、基準は高く持ってこないと。
高校生がなぜ俺らと一緒のレベルで話ができひんのかって。日本のユース世代の選手たちがこの後どうやって俺を目指すんかなあ、とか俺を超えるんかなぁと考えてしまう。
せっかく可能性も努力もあるのに、指導者がそういう話をしてあげへんことで考え方が狭くなってる。
「お前らまず人間教育を高校3年。次にそっから大学に行くなりプロに行ったリして別の世界を味わえ。」ということを耳にするけど、そのせいでだいぶ時間をロスしてると思うことがあるわけです。
──なるほど。思考の壁を社会が作ってるし、疑問を持たない指導者、子供が多いってことね。
そう。だからサッカーやテクノロジーが進んでも根本的にテクノロジーを扱う人間の考えが変わらへんかったら、ボトルネックと言うのは解消されへんやろうなあと思ってて。
──自分が高校生の時にいつ気づいたの?「なんでこんなみんな限界を設けてるんだろう? 小さく考えてるんだろう?」って。
いやでも僕はねぇ自然に出来てたから、親父のおかげで。そこにとにかく無我夢中やったんで、それを叶えることにね。
何か始まるって時に目標設定の仕方としては、まずてっぺんを知るって言うことから始めるんですよ。

共感したビル・ゲイツの言葉

──それはビジネスでも同じってこと?
全部同じ。間違いなく一緒。
経営で成功したいと思ったら、まずトップを知る。例えばですけど、トップはなんぼ稼いでるの?と。で、9兆なんぼやから、じゃあ10兆を目標にしようという感じです。
──なるほど。ビル・ゲイツの、あれを調べたんだよね。
フォーブスの長者番付調べたんですよ。お金が全てではないけどね。
──そりゃ確かに。それは何にでも通じる、と。
自然にそうなるんですよ。
──トップはどんなものかっていうのをまず見る、と。
トップがどんなことやってるかを知らないと。基準を上げないと。
──ああ。じゃあ金額の規模見て、何やってるか見て、とか。
でもちなみに、何回も言うけど俺は天才じゃない。天才はこういうやり方でやらないと思うんですよ。
俺は努力の人間やからこういうことやるんです。目標を設定しないといけないんです。なぜなら努力で登っていくやり方しか知らないから。
天才は違うんです。僕には考え付かないような、えげつないようなビルゲイツの9兆円への辿り着き方があるんですよ。
──ビル・ゲイツの考えを参考にすることもあるの?
俺が共感できた(ビル・ゲイツの)言葉があって。
「成功の鍵は、的を見失わないことだ。自分が最も力を発揮できる範囲を見極め、そこに時間とエネルギーを集中することである」
後者も大事やけど、「成功の鍵は的を見失わないこと」ってのが本質で。どこに自分が向かってるのかっていうのを見失ったらだめ。やっぱ効率が違うよね。当然ながらどんな努力も。どこに向かってるかの努力と、何となく努力、言われたことやるだけの努力。
だから何でも、やらされてやるんじゃなくて、自主的にやる。自分で向かおうとする。
──そこをもうちょっと詳しく教えてほしいんだけど、例えばトップをまず知る、その次の段階として、目標の大切さとしては至る所で(本田選手が)言ってるのは聞いてるけど、それの見つけ方がみんなわからないという場合が多いと思うんです。
逆に俺も聞きたいんだけど、目標ってどんな風にみんな立てるんですかね? 目標なんか持たない?
──なんとなくこうなりたいな、とかが漠然と……
でもあえて目標持たへんって言う名言もたまにスポーツ選手でさえもあるよね。
──うん、決めない。自由だって。
決めると自分を追い込んでしまってパフォーマンスが落ちるからとか、言わないとか。
──そういうのもあると思うだろうし、あと具体的にそこまで、例えばお金持ちになりたいって言う目標じゃなんとなく持ったとしても、それを金額までは明確には言わないとか。
それはでもなんでなんですか?
──なんでだろう?あまりにもリアルな物として捉えられてないということなのか。1000万円稼ぐのと1億円稼ぐのと、幸せ度の、自分の満足度の違いを明確に考えてないとか。なんでなんだろう?そこに数字とか、明確に物を決めるとか。さっきの、頂点を見るって言うのもまず分かりやすいあれかなとは思ったけど。
人に言わなくてもいいと思うんですよ、目標設定って。いつかノートの書き方を人に説明した時に、ノートに自分の夢でもいいし目標でも書きなさい、と。
まあ夢と目標はちょっと違うんやけど。自分の目標を書け、と。最終ゴールをね。
© HONDA ESTILO
本連載は本田圭佑選手のメルマガ『CHANGE THE WORLD by KSK』でご購読いただけます。ご購読申込はこちらから
(バナーデザイン:櫻田潤、バナー写真:© HONDA ESTILO)