【本田圭佑・人生哲学】「失敗論」

2017/6/13
サッカーファンやビジネスパーソンだけでなく、すべての人のために本田圭佑選手が自らの哲学を語る、本田圭佑のオフィシャルメルマガ「Change The World by KSK」(毎週水曜配信)の人気連載コンテンツ『人生哲学』。本連載では、その一部を特別にお届けします。(全5回)
失敗は積極的学習
俺はサッカーは才能のない分野やと思ってたからね。経営やってみて、俺100%経営の方がセンスあるわ、と思いながらやってるもん。
──でも、サッカーで才能ないって言うけど、日本だとワールドクラスの才能がある……。
何でか知ってる? 不屈の魂だけが世界ランキング1位やから。これ全部に生かせるから。
──それがなんとなくわかってきました。
それだけよ、ほんまに。サッカーのセンスまじでないから。
──闘争心とその貪欲さだけ?
そう。センスまじないで。ミスするたびに成長してるから。サッカーみたいにミスが許されるスポーツでよかった。
──そのミスの定義が多分普通の人と違って……
失敗の?
──「何でそんな監督みたいなことしゃべれるんだ?」と前に(本田選手に)聞いた時、「それだけコミュニケーションで失敗してるから」と聞いて「あ、なるほどね」と(思いました)。普段、トライ・アンド・エラーを繰り返してるなら納得がいくというか。失敗まで行かないにしても……
“失敗”って言うと日本語やとネガティブに捉えられるけど、なんやろなぁ、学習って言えばいいんかな。
──積極的学習。受け身じゃない学習。
うん。失敗イコール、「次こうやったら失敗するってわかったよね」学習。「新しいこと知れた学習」やね。
──でも、心は傷つくときもあるでしょ? ちょっとしたミスはあるわけだから。例えば、コミュニケーションとかで「あ、失敗したなあ、やめよう」っていう人もいると思う。
あのね、失敗そのもので傷つくことはまずない。
──あ、そう?
それはね、例えば、人間関係の失敗とはまた別の、何て言うたらええかな? 心配とか……何て言ったらええかな……
──自己防衛的なのかもしれないね。自分が傷つきたくないという……
すごく心がつらくなるようなシチュエーションはいっぱいある。
──一応あるってことだよね。
え、ちゃう。だから失敗そのものに傷つくことはない。
──傷つかないでもう1回同じトライができるということだよね、多分。
全然(できる)。超前向き。失敗(そのもの)に関しては傷つかへん。「何でそこで傷ついてるの?」っていうのが9割9分、俺の周り。9割9分は失敗(そのもの)で傷ついてる。「なんでそんな失敗で傷ついてるねん、アホちゃう? そんなん、かすり傷のようなもんやろ」と言いたくなる。
階段から落ちて「痛い」って言えばしまいで、明日には治ってる。心の擦り傷じゃないし。学んだだけやん、よかった、喜べっていう感じ。
失敗したら乾杯するのいいかもね。乾杯文化を変える乾杯。
子供の教育も変える。何か失敗したとかテストで赤点取ったら、乾杯。「はい、学んだね」って。
© HONDA ESTILO
──例えば授業で、手を挙げて答えて間違ってたら?
拍手。「今日乾杯何人? 10人おる?」って。そこで採用されたやつは一気飲みやね。
──成功しても失敗しても乾杯だ、と。
成功したバージョンは一気飲み。セレブレーションやから。だって学んだんやもん。
でも学んでないヤツは同じミスを何回もする。これはまた別問題。「お前学んでないよね。学べ」と。
──失敗から逃げるのが、多分今の日本の問題だろうから。
いや、学んでないってこと(が問題)。傷つくだけ傷ついていることが問題。
──失敗したら、もう1回失敗したくないと思って、戦うんじゃなくて、そこから逃げるっていうのが、問題なのかなと思います。
いや、もう1回失敗せえへんよ、学んだら。
痛みを知る男がかっこいい
──それは上級者の考えじゃない? 失敗して学んで、失敗して学んで、もう1回同じ過ちを繰り返さないのが一番望ましいけど、失敗したら同じミスしたくないから、そこに近づかないように、できれば一歩踏み出さないとか。そこが今の日本の……
変えよう。少なくとも本田グループは変えよう。乾杯。
──そこをもうちょっと解き明かしたいところでは……
(失敗した後)次にどうやってチャレンジするかってこと?
──(本田選手が)あまりにも簡単に挑戦してるから。普通の人と違って。あまりにも失敗の仕方が、フットワークが超軽すぎて、普通、ちょっとでも失敗すると、心が沈んだりして、フットワークが鈍ると思うんだけど。
そこじゃあ、この辺は時間かけ(て説明し)たほうがよさそうやね。
──ギャップがありすぎて、一般の人と。ここに鍵があるような気もするし。
だって理解したことないから。アホちゃう?って思ってたもん、いつも。
──身体が先に動いてるみたいな?
そうそう。失敗しにいってるみたいなところがあるもん。何やったら、学びたいから。「え、ほんまかな? ほんまこけるのかな?」って。
──そういう探検的な気分?
そうそう、そうそう。「知りてえ!」みたいな。そして「みんなビビってるから俺が先にこけてやる」みたいな。
──それわかりやすいね。
「え、何で何で? こけるの? ほんまに?」という感じ。
──確かに、みんながまだビビって行ってないところでこけたら、それはかっこいい失敗かもね。
それをみんな辞書にして、「あいつがあれやってこけた」ってみんなインターネットで勉強してるでしょ? それやったら俺は、「誰もやってないね? 誰もやったことないやつをやりたい」って思う。
──失敗に関してもそうってことなの?
俺はもちろん失敗は過程やと思ってるから。その先にゴールがあると思ってるから。失敗はゴールではない。
ただ、失敗自体に関しての考え方はその程度で、先にこけておいた方が、辞書で学んだ、インターネットで学んだ「事例の失敗学」を学ぶヤツより、実際に骨折れた俺の方が、その痛みを知ってるし。
──学びが多いってこと?
そう。そこに価値があるから。
──周りから見たら「あいつは、誰も飛び込んだことがない所に飛び込んでる」みたいな、一般的な視点でいうと。
それも、もしかしたら自分の「かっこいい男哲学」にあるかもしれないですね。ケガもしたことないヤツのことをかっこいいと思わない。痛みも知らないヤツをかっこいいと思わないっていうところがあるんで。
──小学校時代から、そういう目立ちたがりなところがあって、失敗ももしかしたらそこにつながってるのかもしれないね。
そう。踊らされへん男っていうのがかっこいいっていうのが、自分が痛みを伴ってない男がかっこいいと思わない、っていうところにもつながってるかもしれないよね。
──ただ本で読んだりとか遠くから見ていたりするだけでわかったつもりじゃなくて……
人より傷ついてる、人より痛みを知っている男こそがかっこいい、と思っている自分がいるかもしれない。
──なるほど。それはわかりやすい。つながるなあ。
つながる。かっこいい男の哲学としては。
*明日に続く。
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