今、一番『お金の匂い』がするテクノロジーはこれだ

2017/5/27

グーグル、NASAがこぞって導入

「このコンピュータは、従来のコンピュータに比べて、1億倍高速だ」
2015年12月、米シリコンバレーで、衝撃的な発表が行われた。グーグルとNASA(米航空宇宙局)が、あるコンピュータを2年間運用し、圧倒的な数字がはじき出されたのだ。
量子コンピュータ。
我々が慣れ親しんでいる従来のコンピュータ(ノイマン型)とは全く異なる量子力学の原理で動く「量子コンピュータ」。1980年代から開発が始まり、長年の停滞を経て、ここ数年で一気に花開きだしているのだ。
グーグルとNASAの担当者が量子コンピュータについて発表した会見(ロイター/アフロ)
そのきっかけとなったのは、2011年にカナダ「D-Wave」が初めて商用化に成功した量子コンピュータだ。グーグルやNASAだけでなく、米航空宇宙産業のロッキード・マーティン社なども導入しており、各社が一気に投資へと踏み出している。
それもそのはず。量子コンピュータの性能が本格的に生かされるようになれば、これまでどれだけ性能の高いスーパーコンピュータでも解くのに果てしなくかかった問題が、わずかな時間で解ける可能性があるからだ。
しかも、今をときめく人工知能(AI)のカギとも考えられており、最先端のテクノロジーを引っ張る米国や、それを追う中国で、研究者たちの大きなシフトが起きている。
もう一つ面白いのは、今導入が進む量子コンピュータの方式「量子アニーリング」は、日本人の研究者が最初に論文で発表した方式であること。業界では「ノーベル賞級の研究」と指摘する声も大きい。
この量子コンピュータは、一気に時代を塗り替えていくのか。
NewsPicks編集部では、長年、量子コンピュータや量子力学に注目してきた元日本マイクロソフト社長で書評サイト「HONZ」代表の成毛眞氏と、日本で生まれた量子コンピュータ方式「量子アニーリング」の研究者である東北大学の大関真之准教授の、対談を実施した。
量子コンピュータだけにとどまらず、日本のアカデミズム、ビジネスの問題にまで踏み込んだ、異なる分野の2人が織りなす知の対談をお読みいただきたい。

儲かるのは科学が切り替わる瞬間

──成毛さんは、2016年、自らが主催する書評サイト「HONZ」で量子コンピュータへの関心を強く表明していらっしゃいましたね。
成毛 HONZ恒例の「今年の一冊」という企画で、僕が選んだテーマは「お金の匂いのする本」だったんですね。でも株式投資やセカンドジョブの本を紹介してもありきたりで捻りがない(笑)。
で、「お金が一番儲かる」のって、基礎科学の研究が工学に切り替わる瞬間なんですよ。