趣味に熱中しすぎることは、生産性を低下させるのか

2017/5/18
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
18日は、作家の伊東潤さんが出演。「オタクがオタクでなくなるとき」(文春オンライン)を題材に、趣味と生産性の関係について解説しました。

“オタク”で生産性は低下するか

サッシャ 今日は、「オタクがオタクでなくなるとき」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の伊東潤さんです。
伊東さんは、日本IBM、外資系企業のマネジメントを経てコンサルタントとして活躍後、作家業に転身されました。代表作に『巨鯨の海』『国を蹴った男』などがあります。よろしくお願いします。
伊東 よろしくお願いします。
サッシャ これはそもそもどういうニュースで、なぜピックされたのでしょうか。
伊東 このニュースは、いまの世相を最も反映しているなと感じたんですね。一言で言うと、「日本人が平和ボケしている証かな」と思ったんです。
オタクにも定義がありますけれど、この記事ではゲームやアニメやアイドル好きを指してオタクと言っています。
何かを好きになることはいいことですし、個人の自由だから構わないと思うんです。
でも、いまの世の中では行き過ぎていて、それがビジネスパーソンとして働かなければいけない年代における、生産性の低下に表れているんじゃないかと、憂慮しています。
サッシャ なぜ、それで生産性が下がるんですか?
伊東 いままで、こうした趣味はせいぜい大学生くらいだったんですけど、30~40代にも浸透してきていて、「そういう時間の使い方でいいのかな」と私は疑問に思うんですよね。
サッシャ でも、業務時間外ですよね。
伊東 業務時間外でも、「自己啓発」が大事なんです。
サッシャ 「自分の好きなことをやることで、仕事がさらにうまくいく」と、ならないんですか。
寺岡 リフレッシュとかね。
伊東 リフレッシュも大事ですけれど、自分の仕事に関連した本を読んだり、勉強したりすることで、それが自分の会社の利益に反映されると思います。
サッシャ ごめんなさい。今日、僕はちょっと納得できないので、もっといきますけれど(笑)。
伊東 どんどんいきましょう。
寺岡 いこう、いこう(笑)。
サッシャ 全く違うことをやることで、いまの仕事のヒントになることもあると思うんですよね。
仕事と違う趣味をやることで生産性が下がると、一概には言えないと思うんですけれど。
伊東 どれだけ熱中するか、節度の問題ですよね。
サッシャ 熱中しすぎていると。でも、海外でも広がっている日本のアニメカルチャーなどを育てているのは、それを応援している人たちではないんですか?
伊東 それを応援することで、日本のアニメやゲームが発信されて、利益を生む構造はいいと思います。
ただ、それは作り手の利益になるわけで、応援しているだけでは、自分の利益になりません。
もっと、自分の仕事に関連することに力を割いたほうがいい。それがひいては日本の生産性の向上に結び付き、日本経済が活性化し、自分のリターンになる。これが私の考えです。

仕事に対する向き合い方の違い

サッシャ このコーナーでよく話題になるのは、「日本の生産性が低い」という話です。
海外の人は、仕事は業務時間内で効率的に終わらせて、趣味を楽しんでいます。それに対して、日本では労働時間が長いにもかかわらず、GDPがそれほどでもないのが問題だと。
いま、政府も含めて仕事にメリハリをつけようという流れになっていると思うのですが。
伊東 それは錯覚ですね。僕は外資系で22年間働いてきましたが、みんな日本人よりも働きます。余暇もしっかり勉強しています。
僕は、自分が任された仕事を完全にコンプリートしようとする外国人の姿勢を見てきたので、それが日本人においては、高度成長期から足りないなと思っています。
このまま働き方改革と言って、もっと働かなくさせようとしたり、仕事は悪いものだという概念を植え付けられたりしたら、本当に日本は問題だと思います。
サッシャ 確かに、僕も仕事をすることが悪いとは思いません。
海外でも、エグゼクティブには日本人以上に仕事をしている人がいっぱいいます。
ただ、仕事に対する向きあい方は立場によっても違うかなと。自分の人生の幸せをどこに置いているかによって、ヨーロッパの人は生き方を変えているような気がします。
伊東 それは言えますよね。全員が全員、必死に働いているわけじゃなくて、僕の接してきた人たちですからね。
サッシャ 僕の外国人の知り合いだと、日本に来てあまりに仕事のメリハリがないので、「仕事をしていて辛い」という方もいるんです。ヨーロッパでの生活のほうが、しっかり仕事ができると。
伊東 そうですか、なるほどね。

“頑固オヤジ”が必要

サッシャ 僕としては、仕事の業務時間外に何をするかはその人の自由で、それによって出世するかはその人の判断なので、充実したオフを過ごすことによって仕事へのいいフィードバックになったら、それでいいと思っていたんですけれど。
伊東 それは正論ですよね。でも、正論を話している段階ではないくらい、働き方改革やオタク文化が浸透しすぎていると思うんです。
もう少し仕事に対する姿勢を真剣に考えて、仕事の中に喜びを見出すというライフスタイルを築いていかない限りは、日本の国際競争力がどんどん下がっていくというのが、私の考えです。
サッシャ それでは、仕事への自覚を持ち、きちんとこなせたならば、どんなに趣味に時間を使ってもいいということですか?
伊東 そうなりますね。しっかり能力のある人がパフォーマンスを上げて、オタク文化を好きなのであれば構わないと思います。
ただ、自分の仕事に関して自覚を持って勉強していかなければ、「プラスアルファ」は生み出せないです。
サッシャ この話をするのであれば、それによって「どの程度生産性が下がっているのか」といった具体的な数字を出さないと、やっぱり感情論になってしまうと思うんですよね。
ラジオを聞いている方も、「趣味に使ってもいいじゃん」と思ってしまうので。
伊東 日本の生産性が低いのは、会議が多いとか時間の効率が悪いだけではなくて、余暇に過ごす時間の使い方が、外国人の方と比べて上手くないなということです。
サッシャ でも、休暇の日数でいえば、日本の方がはるかに少ないですよね。
伊東 外国人でも、会社に来たり、仕事をしたりする人は多かったですよ。
サッシャ そうかなあ。イタリアに40日間行って帰ってこない人とかいますけれど。
寺岡 バケーションとかありますよね。
伊東 夏休みが長いことは認めますけどね。
サッシャ なかなかこれ……。
伊東 この話は結論出ないですね(笑)。
でも、僕はサッシャさんの言うことは、すごくよく分かるし、その通りだと思います。
ただ、誰かが“頑固オヤジ”をやらなければいけない段階に来ているということです。
サッシャ なるほど。僕も伊東さんのおっしゃっていることは良くわかります。僕自身、仕事のオフの時間に、仕事のことを常に考えていますから。
だけど、アニメなどを好きになってくれる人がたくさんいることで、日本の大きな産業になっています。僕はそのファンの人たちを応援したいし、否定したくないという気持ちがあるんです。
それによって、海外でも「日本ではこんなに面白い文化があるんだ」と言われ、個性になっているところもあるので。だから、こういう風に言っているんですけれど。
難しいですね。またやりましょう(笑)。
伊東 またやりたいですね、これはね(笑)。
サッシャ また来てくれますか、大丈夫ですか。来たくないとか言わないですか(笑)。
伊東 頑固オヤジは何度でも来ます。
寺岡 ゴングとか持ってきましょうか(笑)。
サッシャ 楽しいですね。こういうところから何か生まれますからね。
伊東 そうですね。
サッシャ 伊東さん、ありがとうございました。
伊東 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした伊東さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週22日はH2L, Inc.共同創業者で工学研究者の玉城絵美さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください