デジタルマーケ→EC→サポートは「一気通貫」が常識になる

2017/5/23
トランスコスモスが2016年に中期的な戦略ビジネスの推進役として立ち上げた組織が「DEC」だ。全従業員の半分にあたる約2万人を投じるほどの力を込めた「DEC」は何を果たすのか。
2016年4月、トランスコスモスは過去の組織再編では見られない大規模で大胆な変革に打って出た。「デジタルマーケティング」「EC」そして「カスタマーサポート」に関する事業部門・人員を一つの傘に収めたのだ。
企業のさまざまな顧客接点を連携して支援し、顧客対応の質の向上と迅速な対応によってビジネスの成功に貢献するためだという。巨大な組織は、シナジーが期待できる一方混乱や停滞が生まれるリスクもある。
そんな中で誕生したDECの陣頭指揮を任されたのが専務執行役員を務める松原健志氏。セールスフォース・ドットコム社長ほか、数々の IT、デジタルビジネスを成功に導き、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の「チーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサー」を務めるなど活動範囲を広げている宇陀栄次氏との対談で語る「DEC」誕生に込めた思いと狙いとはーー。
デジタル×アナログでつくる「ナレッジ」
宇陀:DECができた背景にはどんな狙いがあったのか。まずはそこから教えてください。
松原:DECとは「Digital Marketing」と「E-Commerce」、「Contact Center」の頭文字を組み合わせたもので、マーケティングからEC、そしてカスタマーサポートという顧客接点を一気通貫で支援するというミッションを表しています。
それぞれのサービスはかなり以前からたくさんのお客様にご利用いただいているのですが、どちらかというと単独で提供するケースがほとんどでした。
今の消費者は、スマホを中心に行動するケースが増えていて、スマホ化が進むにつれて企業側における「マーケティング」「販売」「カスタマーサポート」といった3つのプロセスの境がだんだんなくなってきています。スマホで広告を見て、スマホで買って、スマホで問い合わせる人も増えているわけです。
企業側は、購買スタイルの多様化の流れにきちんと対応していかなければなりません。そこで、私たちも3つのサービスをバラバラに提供するのではなく、さまざまな消費者の行動に柔軟に対応できるハイブリッドなサービスをお客様に提供していくべきだと考えました。
宇陀:それにしても、2万人もの組織で、社員のモラルや人材育成、サービス品質の向上を図るのは大変なことですが、実現できたらとても大きな企業価値になります。
松原: 確かに社員数だけみると大規模組織だと思いますが、実はコンタクトセンターだけでも10年以上前から全国にいる1万人を超える社員に対して人材育成や品質管理、品質向上の取り組みを継続して行ってきた実績があります。
これまでの制度や仕組みをベースに、DEC組織全体にアレンジしながら組織運営を行っていますが、この統合した巨大チームが構想通りに動いていけば、他社にはない企業価値を発揮できると考えています。
宇陀:トランスコスモス、DECの面白さは、コンタクトセンターという非常にアナログ的な顧客対応と、マーケティングやECなどのデジタルな顧客接点を連携させて、さまざまな顧客接点のサービスをご提供できることです。
AIなどのテクノロジーが進化しても、デジタルが万能なわけではないです。人間の知恵や優しさの大切さは絶対残り続けます。コンタクトセンターサービスでリーディング企業であることは、デジタルが進化していけばいくほど、なおさら、重要な価値になると思います。
松原:私たちはアナログとデジタルをハイブリッドに結び、お客様の商品やサービスを消費者に「伝え・販売し・アフターサポートする」業務をワンストップで提供することにこだわっています。
ネット広告やソーシャルメディアを使ったマーケティング活動を支援し、Webサイトやアプリの構築・運用を通じてコンテンツを充実させ、ECの窓口を提供し、実際の販売も行う。コンタクトセンターでの問い合わせや注文を電話だけでなくLINEやチャットでも受け付ける。
DECではこれらをすべて提供することができますが、仕組みだけでなくサービスを運用する人が重要だと思っています。たとえば、より高度な接客対応やコンシェルジュサービスはやはり人でなければ難しいでしょう。デジタル化が進めば進むほど、サービスを提供する人材の育成や品質向上が大切になってくるのは間違いありません。
「顧客接点」のパートナーへ
宇陀:従来、BPO(Business Process Outsourcing)は、労働集約型の作業を外部委託するもので、その労働時間管理やコストやモラル管理を各社が自前でやるのは非常に難しい。企業にとってますますリスクになっていきますから、需要は拡大すると思います。
今後は、AIなども上手に取り入れて、簡単な内容や頻度の多い問い合せは効率的に自動化していき、その分、人間による対応が必要なケースのお客様を、長い時間お待たせしないで対応できれば、お客様は快適になり、オペレーターのモラルも仕事の質も向上する。 結果として、サービスを利用する企業に喜んでいただけます。
現場のオペレーターの人たちへの教育や人材育成なども非常に大切だと思います。DECという形が進化するうえで、改善できる部分がたくさんあると思いますが、さまざまな技術や施策を組み合わせて、実現すれば、非常に価値がありますね。いずれは、そのような技術やオペレーションを見学してもらえるようにしたら良いと思います。
松原:私たちはデジタルマーケティングのサービスを提供する顔と合わせて、コンタクトセンターで消費者と1対1で接する顔ももっています。
消費者一人ひとりに最適な対応を行うために、新しい技術を活用しながら運用を磨いていくことが私たちの強みです。今も一部のセンターでは行っていますが、DECの取り組みはお客様にとっても参考になると思うので、今後もオペレーションをご覧いただけるような機会をつくっていきたいです。
宇陀:1995年にWindows、2000年にはYahoo! 、そして2005年にGoogle、2010年にApple、 2015年にAmazonと、この20年の間、一般消費者向けのサービスが急速に進化し、社会基盤になった時代だったと思います。
企業が必要としているのは、普通の業務処理のための情報ではなく、お客様や現場の生の声や、知恵や創意工夫といったナレッジの時代。それをどう活用するかが、企業の競争力を左右すると思います。
DECが提供するあらゆるチャネルで消費者との接点を持ち、その結果を分析して新たな施策を提案すれば、非常に価値があると思います。
松原: 以前よりコンタクトセンターではお客様の声を収集し、それを分析して新たな提案に生かすということを業務の中で実践しています。
消費者の“生の声”を毎日何万件も聞いている中で培ってきたナレッジ活用や顧客の声を生かすノウハウは、一般的なデジタルマーケティングの会社には簡単にまねできないと思っています。
さらに、消費者の行動プロセスや購入履歴、コンタクトセンターに寄せられたリクエストなどを、アナログ、デジタルを問わずあらゆるチャネルから収集して一つのデータベースに蓄積し、分析したうえで次のアクションにつなげるためのオリジナルDMPサービスである「DECode(デコード)」によって、取り扱うデータと活用の範囲を広げています。
宇陀:DECにはテクノロジー面でどのような強みがあるのですか。
松原:DECが誕生して生まれた一つの商品に「DECAds(デックアズ)」があります。独自開発の消費者とのコミュニケーションを軸とした次世代型統合プロダクトで、広告からチャットへ誘導し、より適切な情報提供やコミュニケーションを行うことで、ユーザーとのエンゲージメントを活性化し、次のアクションに結びつける確度を高めるというものです。
チャットの対話にはbotによる無人対応に加えて、オペレーターによる有人対応が選択できるようにしました。
DECの総合力が生かされているだけでなく、これまでのコンタクトセンターの実績やノウハウ、人材が揃っているからこそできたサービスだと思っていますし、こうしたサービスをDEC発でどんどん生み出していきます。
宇陀:トランスコスモスには、50年の歴史と大手企業を中心に3000社の顧客基盤がある。そしてコンタクトセンターという業界No.1のサービスを持っている。一つの分野で圧倒的に強い地位を確立したうえで、それと連携させながら、事業を横に伸ばしていく動きは、会社の戦略として非常に正しいと思います。
B to Bにも「ファン・エンゲージメント」を
宇陀:私は、東京オリンピック・パラリンピックのお手伝いをしていて、新鮮なことがたくさんあるのですが、スポーツやエンターテインメントの世界の方々は、ファンとのつながり「ファン・エンゲージメント」をものすごく大切にしていることです。
いかに多くの人にファンになってもらい、継続的に応援してもらえるようにと、ものすごい努力をしています。
ビジネス界の各社は、もちろんお客様を大切にしているでしょうが、ファンを広げるということにもっと努力が必要だと思います。
ファンがいずれはお客様になる。ファンを作り、ファンとのつながりをいかに効率的に実現するか、その部分は、デジタルマーケティングやE-Commerceで得た関係を、CRMやAnalyticsなどで、さらに強い関係にする。
お客様になっていただいた後は、サポートセンターなどで、継続的に良好な関係を維持する。トランスコスモスがお客様のパートナーと思ってもらえるような存在、ファンだと言ってもらえるような会社になってほしいと思います。
松原: お客様から「新しい技術を導入したものの結局社内で使いこなせないまま」という話を耳にすることがあります。私たちはお客様のニーズや世の中の変化に対してベストな技術をその都度吟味し、人と技術を融合したソリューションとして提供することで課題を解決しています。決してツールだけを売っているわけではありません。
また、長年いろいろな業界、業種の実務を通じて得た成功事例や失敗事例などの経験やノウハウがあります。これらを生かしてDECサービスとして提供することで、お客様自ら行う場合の手間や工数を省くことができます。特にデジタル化への対応については新しい技術や変化のスピードが速いので、DECを活用いただくことのメリットがさらに高まるでしょう。
DECを通じて、「トランスコスモスに相談してみよう」と1社でも多く言っていただけるような、お客様に安心して任せてもらえるパートナーになっていきたいと思います。
(構成:加藤学宏、写真:森カズシゲ、編集:木村剛士)
*各記事のタイトルは変更する可能性があります。