【独白1万字】石破茂が語る、日本の「ミサイル防衛」3つの危機

2017/5/15

国家というよりは、王朝

──北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返しています。今の日本を取り巻く、軍事情勢をどう分析していますか。(注:取材は、5月14日の北朝鮮ミサイル発射前に実施)
まず、金正恩という何こそやるか分からん人が指導者である、と。
元々、何をやるか分からん国家であるのに、さらに何をやるか分からん人が指導者になったわけです。「気に入らない奴は即刻処刑だ」「実の兄貴も処刑だ」というか、「殺しちゃえ」というような。
国家ってよりは、体制だよね。王朝。
それが核を持ち、ミサイルを持ち、やがて「世界中どこでも届くぞ、俺の言うこと聞かないとひどい目にあうぞ、この体制を認めよ」、と。
まともな体制なら認めても良いが、「あんな体制認めてどうすんだい」っていうことですよね。私も、間近で北朝鮮を見たことあるんで、これは本当に恐ろしい国だなと。国民全員拉致されてるようなもんだからね。
そういう国であります。
──元々何をしでかすか分からないのが、さらに加速した。
そこへドナルド・トランプという、これまた何こそやるか分かんない人が大統領になってね。
それで、「オバマがやってきたことは、失敗だ」「北朝鮮を、甘やかしてる間にこんなことになってしまった」と。
で、「一番悪いのは中国だ」と圧力をかけているわけです。
一方で、中国は中国の事情があって、北朝鮮に暴発でもされようものならば、中朝同盟っていうのがあるんで、戦争に巻き込まれる危険性も高い。
それは、中国からすると、「まっぴらごめんだな」と。
もし戦争になったらば朝鮮の民族がドドドドドっと中国にやってくる。いわゆる難民ですね。「そんなのはたまらん、まっぴらごめんだよ」と。
いざ戦争になって、やがて朝鮮半島がアメリカの影響下にある統一国家になったときは、それは長大な国境をアメリカの影響下にある国家と接することになるわけですから。
「だったら今のまんまがいいや」と、気にくわないなと思いながら北朝鮮を支えてきたわけですよ。
それでも、アメリカが、「中国がそんなことやっとるからこんなことになったではないか。おまえらの責任だ、なんとかせい。せんのだったらアメリカがやる」と。
それが、本当にやりそうになっているのが、今ですね。

燃料注入が、「攻撃の着手」

──確かに、本当にやってもおかしくありません。
「あらゆる選択肢を放棄しない」と言ってるわけです。
ただ、「いくらなんでもやらんだろとも思うけど、やったらどうすんだよ」ということを考えないと、安全保障にも何にもならんですよね。