日本企業に魅力を感じない――グーグルを目指す中国エリート学生

2017/5/11
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
11日は、Forbes JAPAN WEB副編集長の谷本有香さんが出演。「中国エリート学生が日本企業に求める条件」(Forbes JAPAN)を題材に、中国エリート学生の現状と、日本企業の採用に関する課題について解説しました。
日本企業は出遅れている
サッシャ 今日は、「中国エリート学生が日本企業に求める条件」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の谷本有香さんです。
谷本さんはForbes JAPAN副編集長兼WEB編集長として活躍されています。おはようございます。
谷本 おはようございます。よろしくお願いします。
サッシャ まずは、今回のニュースをピックした理由を聞かせてください。
谷本 実は、これ私が書いたニュース記事なんですけれども、取材をしてかなり深刻な問題だと思いまして、選ばせていただきました。
中国の北京大学などでコンピュータサイエンスを学ぶ学生が、世界中の企業から取り合いになっているんです。
サッシャ 「中国人が優秀だ」と。
谷本 そうです。でも、そんな話は日本では聞いたことがないと思って、「日本企業は出遅れているのではないか」と取材を続けて書いた記事なんです。
寺岡 中国人のエリート学生は、そんなに優秀なんですか?
谷本 はい。そこには色んな背景があると思います。一つには、中国はものすごい人口ですよね。受験も激しい競争があり、必死に頑張らなくてはいけません。
そのため、不勉強だと「お前たち、その辺の露天商になりたいのか!」などと、よく言われるんです。
もう一つには、教育の水準が非常に高いことが挙げられます。テキストなどに関して、その最先端の国から取り寄せています。
たとえば、コンピュータサイエンス分野では、アメリカの英語のテキストをそのまま使っているんです。
サッシャ えっ、中国語に翻訳していないんですか。
谷本 はい。そうした研究などを学んでいるから優秀になるのだと思います。
これまでは「アメリカの学生が一番だ」と言われていましたけれど、いまは「中国の学生の方が優秀だ」と、色んな企業の方から聞きます。
サッシャ そうした学生が目指しているのは、アメリカ企業なんですか?
谷本 アメリカ企業が多いのではないかと思います。
今回、日本のワークスアプリケーションズという会社のインターンに参加した、コンピュータサイエンスを学ぶ中国人の学生に取材したのですが、同社に行きたいという学生もいましたけれど、全員が「グーグルに入りたい」と答えました。
コンピュータサイエンスの分野で世界をリードしているのはグーグルで、かつものすごく条件がいいことから、入りたいそうです。
サッシャ 収入が高いこともわかっていると。でも、中国ではグーグルが使えないですよね。
谷本 それにもかかわらず「グーグルに入れば自分の能力が活かせて成長できる」と思っているのが、本当に面白いです。
グーグルを最高峰と考え、そこを目指して勉強しているのは、皮肉でもあり興味深いですよね。
日本企業はどう見られているのか
サッシャ そのなかで、なぜ日本企業は採用をしないのですか?
谷本 そもそも、採用できないのだと思います。
たとえば、日本企業に求める条件についても取材したのですが、まずは言語の問題ですよね。「わざわざ日本語を学ばなければいけない環境にはいきません」と。
もう一つは、人事評価システムです。日本企業においては、年功序列が一般的であると知っています。「自分の能力がすぐに活かせないのであれば行かない」という条件面の問題です。
そして、年俸。これは年功序列に関係することですが、年俸が非常に低いため「自分の能力に見合ったお金がもらえないのであれば、ほかに行きます」ということだそうです。
サッシャ そのなかで、日本企業は中国人エリートを必要としているのでしょうか?
谷本 必要としています。実際に採用したいと思っているんですけれど、「言語が分からないからコミュニケーションができない」、さらに「どう評価したらいいか分からない」そうです。
たとえば、コンピュータサイエンスを学んだ学生を評価するためには、コンピュータサイエンスの知識がなければいけないですよね。
ワークスアプリケーションズの社長である牧野(正幸)さんは、「どの学生がどれだけ優秀かを評価する人がいないことが、根本的な理由だ」と話しています。
サッシャ 話が逸れますけれど、このコーナーでは「日本は新卒一括採用だから問題がある」という話が何回も話題になります。要は日本って即戦力で採用するのではなく、「企業が人を育てる」という文化ですよね。だからこそ、年功序列のシステムがある。
その意味で、即戦力で入社してお金を稼ぎたい中国人学生からすると、全く魅力がないということですか。
谷本 本当にその通りです。また、そもそも、いまはAI、IoT、ICTなど新しい技術がありますよね。それにみんなが取り組まなければいけないと沸いています。短期的には、「育成する時間がありますか」ということなんです。
そのなかで「採用しない」と判断をしている日本企業には魅力がないですし、そうした分野で勝てるわけがないんです。
やはりこの問題は、「そもそも日本企業がどういうビジョンを持ち、どんな戦略を持っているのか」に行きつくのではないかという気がしています。
いかに“マインド”を変えるか
サッシャ こういう話をすると、「別に日本はそこを目指さなくていいじゃん」「日本は日本のやり方でやっていけばいいんだ」という意見もあると思うんですけれど、その先にはどんな未来があるんでしょうか。
谷本 もちろん、そうしたやり方もあると思います。ただ、人口が減少し、高齢化が進む日本で、「どうやって食べていくんですか」という話だと思うんです。
もちろん長期的には教育が重要で、人材を育てることにしか日本の未来がありません。そこに考えが及んでいないのであれば、「外国の企業に食べさせてもらう」ことに甘んじるしかありません。
サッシャ 要するに、日本は必然的に先進国からのスリップダウンを望むことになる、と。
谷本 そういうことです。それなのに危機感を持っていないのは、そこに視野が広がっていない、または見ることを怖がっているのではないかと思います。
サッシャ 現状維持のまま、ということですね。それでは最後に、谷本さんが危惧していることを乗り越えるためには、何をするべきですか?
谷本 まずは教育を変えること。それを小学校くらいのレベルから変えることが重要だと思っています。
サッシャ それは言語ですか?
谷本 言語もそうですが、自ら発言する、リスクを取るといったマインドもそうです。
そして、企業においては人事評価システムを変えて行く。優秀な人材を採り、その飛び抜けた人材を叩いて殺すようなことをしないで、どんな変わった人材も育て、多様性を重視していかない限り、なかなか難しいのではないかと思います。
サッシャ 文化論ですね。これは大変ですよ。
谷本 なかなか変わらないんですけれど、やはりマインドの問題です。マインドを変われば、絶対に変われると思います。
サッシャ 日本の経営者の平均年齢を30歳くらい下げますか。
谷本 そうですね。国のトップの平均年齢も変える必要があるかもしれないです。
サッシャ 個人的には、国のリーダーくらいは色んな言葉をしゃべって欲しいんですけどね。谷本さん、どうもありがとうございました。
谷本 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした谷本さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週15日はSPOLABo代表の荒木重雄さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください