ゲノム編集、iPS…遺伝子工学と医療の深い関係

2017/5/18

封印された遺伝子の情報

入山 胡桃坂さんのお話をうかがっていると、遺伝子工学は一般の人たちが知っている領域よりも、はるかに先のステージで研究が重ねられていることが伝わってきます。
胡桃坂 ヒトゲノム解読とエピジェネティクス研究によって、色々なことがわかってきましたから。たとえば、ヒトの遺伝子の数は10万~20万というのが定説でしたけれども、実際には2万を超えるくらいしかなかった。
30億文字の塩基対であるヒトゲノムのうち、ヒトが生きていくために必要な情報は1~3%程度です。じゃあ、9割以上の不要なDNAは何かといったら、ほとんどはウイルスの残骸みたいなものです。
病気のウイルスは、抗体を持たないヒトに感染すると、ヒトを殺してしまうことすらあります。ところが、ヒトに感染して何もしないウイルスも多くあるのです。そのDNAがヒトゲノムのあちこちに入り込んでいる。
入り込んだウイルスのDNAが、なぜ何も悪さをしないのかといえば、前回お話ししたDNAを細胞核に収納する構造体の「クロマチン」が何もさせないからなんです。
入山 そうか、クロマチンはギューッと閉じているか、ユルユルと開いているかだから、この場合はギューッと閉じてウイルスのDNAを読めなくしているんですね。