「起業家の遺伝子」は学問的に説明できる

2017/5/17
一卵性双生児が同じ人間でない理由
入山 それでは、遺伝工学分野の最先端、エピジェネティクスのメカニズムについて詳しくお聞きします。
前回も話しましたが、私が生物の授業で教わったのは「メンデルの法則」で、人の生まれついての遺伝情報は死ぬまで変わらないということでした。しかしエピジェネティクス研究では、遺伝子の発現は後天的に変化することがわかってきた、と。
ヒトの遺伝子の情報は染色体上にあり、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4文字で書かれている。これがDNAの塩基配列です。
胡桃坂先生のお話によると、このDNA塩基配列は基本的に一生変化しないのだけど、その「読み取られ方」は変わり、したがって「人の設計情報である遺伝子」は後天的に変わる、と。
胡桃坂 はい。大まかにそういう理解で大丈夫です。例えば、ヒトの設計図であるヒトゲノム(全遺伝情報)を解読すれば、ヒトの生体を完全に理解できるだろうということで進められたのが、1990年頃に始まった「ヒトゲノム解析計画」でした。
ところが、2003年頃にほぼ解読されたヒトゲノムから、ヒトのメカニズムのすべてを解明することはできなかった。