いまの就活生は、ベンチャーと大企業のどちらを選べばよいのか

2017/4/20
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)を、4月3日からスタートしました。
同番組のコーナーPICK ONEでは、月曜日から木曜日まで、それぞれ「テクノロジー・サイエンス」「ビジネス」「政治・経済」「キャリア」と、日替わりで4つのテーマを扱い、各分野のプロピッカーらが気になるニュースやトピックスを未来へつながる視点で読み解きます。
ナビゲーターはサッシャさん、アシスタントはsugar meの寺岡歩美さんが務めます。
20日は、人材研究所代表の曽和利光さんが出演。「新卒においてベンチャーと大企業のどちらがよいか」について解説しました。

学生から一番聞かれる質問

サッシャ 今日は「ベンチャーvs.大企業 新卒で成長できるのはどっち」というトピックにフォーカスします。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の曽和利光さんです。曽和さんは人材研究所の代表として企業の人事部への採用コンサルティングなどで活躍中です。おはようございます。
曽和 おはようございます。よろしくお願いします。
サッシャ 曽和さんは、なぜこのニュースに注目したんですか。
曽和 いま、世の中は新卒採用のピークで、会社説明会などが行われていますが、学生さんから一番多く聞かれるのがこの質問なんです。
就職活動の時期が少しずれたこともあって、大企業の採用は少し遅めなんですね。なので、いまベンチャーに引っ張られていて、「どちらがいいでしょうか」と質問されるんです。

震災以降続く“保守化”

サッシャ なるほど。先にベンチャーに入るチャンスはあるんだけど、「大企業の就活まで待つべきかどうか」ということですね。
はじめに、その答えを聞く前に聞きたいことがあります。たとえば、不景気になると時代の影響を受けない企業に入りたがる「安定志向」が進むイメージがあります。現状の傾向はどういうものでしょう?
曽和 現状は、震災以降ずっと「保守化」が続いている傾向で、人気企業ランキングも少し変わっています。それ以前はベンチャーもあったんですけれど、いまは完全に大手志向ですね。
サッシャ これは震災のような影響を受けにくい会社に入りたいということですか?
曽和 そういう心理的なところもあると思います。
また、受けた教育もあると思うのですが、これだけグローバルだと言われている中で、海外で働きたくない人って7割くらいいるんです。出張は好きらしいのですけど、住みたくはない。地元志向もすごく高まっています。
寺岡 「現地法人はちょっと……」という感じなんですね。
サッシャ アメリカ支社で働くのは嫌だと。
曽和 嫌みたいなんです。あらゆる意味で保守化が進んでいるのが現状です。
寺岡 それでは、ベンチャーを志す学生は減っているということなんでしょうか。
曽和 全体では、ベンチャーの採用は本当に厳しいですね。見るところによって違うところはありますが。
サッシャ 人が来ないということですか? ベンチャーは人材に困っていると。
曽和 来ないですね。企業としては採用する気があるんですけれど、採れないんです。
サッシャ 「見るところによって」とおっしゃいましたが、違うケースもあるんですか?

ベンチャー志向は一部の“上位校”

曽和 たとえば、東大などのいわゆる「上位校」と呼ばれる学生の一部では、ベンチャー志向が増えています。
サッシャ 一般的に偏差値が高いと言われる大学ですね。
曽和 はい。大手企業の“神話”が崩壊していると分かっているからだと思うんですけれど、東大生を見ていると「業界1位の企業、もしくはベンチャー」という感じで就職先を志望する方が珍しくなくなっています。
サッシャ アメリカでハーバード大学を出た人は、どちらかというと一番が起業する、二番はそれをコンサルティングする、最後の三番目に会社に入るようなスタンスですよね。そして新興企業に入る方も多い。
曽和 おっしゃったことに、近づいてきていると思います。ただ、それは本当に一部ですね。
サッシャ 一般の学生は、やっぱり「リスク負いたくない症候群」ですか?
曽和 そうでしょうね。色々な要因があると思いますが、先ほども申し上げましたが、受けてきた教育や世の中の不安定さなどを反映したものかもしれません。
サッシャ 日本社会にとって、この傾向はどうなんですか?
曽和 少子化でマーケットがシュリンクしていく中で、成長企業は宝ですよね。そこに人が行かないのは問題だと思います。
大手企業というのは、結局“大きくなっちゃった企業”で、成長感で言うと停滞しているとも言えるわけですよね。そこに優秀な人ばかりが吸い込まれてしまったら、成長企業が伸びなくなることにも、つながりかねません。

いまの時代、ローリスクはない

サッシャ ただ、学生の立場からすると、ある程度の初任給やボーナスが約束されていて、「今後は伸びないかもしれないけれど、スタートは結構いい大企業」と、「今の給料は安いし会社が潰れたらおしまいだけど、もしかしたら給料が5倍になるかもしれないベンチャー」では、後者を選びにくい感覚は分かるんですけれど。
曽和 その通りだと思いますね。実際、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという話をすれば、そう考えるのが普通だと思います。
ただ、いまの世の中は東芝の話を見ていても、「ローリスクがない」と思うんですよね。
サッシャ 大企業に入ってもリスクはあると。
曽和 大企業が生き延びるという意味では、色んな手段で生き残ると思うんですけれど、そこにいる社員が生き延びられるかは分からないですよね。
たとえば、企業はリストラして生き延び、自分はリストラされてしまうといったリスクを考えると、あまり変わらないんじゃないかと思います。

ベンチャーに向いているタイプ

サッシャ そのなかで、今日のトピックである「ベンチャーvs.大企業」の質問について、学生にはどう答えていますか。
曽和 一番簡単な言い方として、「生き急いでいる人はベンチャーに行ったらどうか」という話をしています。
少なくとも人手不足ということは、チャンスがいっぱいあるわけですね。なので、自分にある程度の自信があって自律的にやれる人は、いいと思います。ただ、環境は整っていないですし、ぐちゃぐちゃですよ。
サッシャ 仕事を与えられるタイプだと厳しいかもしれないと。
曽和 会社に「成長させてもらう」と考えている人は難しいでしょうね。
サッシャ 即戦力として期待されているケースが多いんですか。
曽和 即戦力とは言わないまでも、色んな「落ちている武器」を自分で拾って使えるような人は向いています。
ベンチャーは昔と違ってお金もいっぱい入っていますし、大企業出身者もすごく多いですしね。元ソニーとか元リクルートとか。
寺岡 ベンチャーに転職されているんですか。
曽和 そういうことです。ですから、そういう人の下で学べば、大企業で働くことと同じですよね。それを自律的にできるかどうかです。
サッシャ これから、学生の企業選びはどうしたらいいでしょうかね。
曽和 大企業の採用活動は6月からと遅いので、まずはいま採用を行っているベンチャーに一度話を聞いたり、受けたりしてみましょう、と伝えたいですね。だいぶイメージと違うと思います。
いまは景気がいいので売り手市場で、学生の2倍くらいの求人数があります。
サッシャ 入りたい企業に入りやすい状況にあるんですね。
曽和 ただ、大企業に入れるのは約50万人の就活生のうち10万人くらいです。8~9割は中小企業やベンチャーに行くことになるわけです。
サッシャ 日本の9割くらいが中小企業ですからね。
曽和 そうです。ですけれど、みんな「大企業に受かる」と思っていて6月まで過ごすんです.。
僕は、これを「ドリーム・クラッシュ」と呼んでいるのですけど、大企業に内定をもらえる夢がクラッシュされるまでは、他の選択肢について考えません。
7月くらいになってようやく中小企業やベンチャーを考え始めるのですけど、いいベンチャーは、すでに他の人が見つけてしまっています。
だから、いまの段階からベンチャー企業を見ておくのがおすすめです。
サッシャ なるほど。曽和さん、ありがとうございました。
曽和 ありがとうございました。

※本記事は、放送の内容を再構成しています。
曽和さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週24日は東京大学教授の土屋武司さんが出演予定です。こちらも合わせてお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください
(構成:菅原聖司)