優れたテクノロジー、潤沢な資金、世界最高レベルの採用基準、そして独特な企業文化を持つグーグル。急激に規模を拡大しながら、同時に優れた人材を引きつけ維持する同社の文化を模倣するスタートアップは数多い。

後編も引き続き、グーグルに10年在籍した後に「PeerStreet」(ピアストリート)を創設し、グーグルの優れた手法を取り入れているブレット・クロスビーに話を聞く。

グーグルの優れた企業文化を自社に取り入れる方法(前編)

目標設定システムを機能させるには

──グーグルは、その巨大な組織を管理するために「OKR(Objective and Key Result:目標と主な結果)」という目標設定システムを取り入れています。このアプローチは、ピアストリートのようなスタートアップではどのように機能していますか?
OKRは、当社ビジネスのまさに中核となっています。これは明らかにグーグルから学んだものです。
正直なところ、グーグルにいた当時はOKRを行うのがあまり好きではありませんでした。しかし自分が経営する立場になってみて、OKRは従業員に各自の目標を設定させ、さらに各自の目標をチーム全体の目標と一致させるのに有効な手段だとわかりました。
2人から始まったピアストリートが60人を超えるチームまで成長するなかで、従業員から、個々の取り組みが全体的な目標にどうつながるのかわからないという声を聞くようになりました。ピアストリートのビジネスは複雑ですから、そうした声はさほど意外ではありませんでした。
ところがOKRを実行してみると、それまでになかったレベルの明確さと焦点がチームにもたらされたのです。OKRは、全社および各チーム、そしてチームの各メンバーの通年および四半期の目標設定について、われわれ全員にじっくり考えさせるシステムでした。
OKRではまず、企業にとっての重要目標を設定します。次に、それら目標の達成につながる主な結果。これは測定可能なものを設定します。
そしてチームの各メンバーは、これらの目標達成に向けて自分がどんなことに責任をもって当たるかを答えられなくてはなりません。自分の仕事がOKRにどのように寄与するかを、全員が知っている必要があるのです。
ピアストリートにOKRを導入してから、従業員は自分の達成すべき主な課題に的を絞って取り組めるようになり、その結果、互いの責任範囲が重複することが大幅に減りました。
そしておそらく最も重要な効果として、自分たちの取り組みが全体の目標にどうつながるのかを理解した従業員は、自らの仕事により大きな意義を見いだすようになったのです。
これは当社がビジネスの焦点を明確にし、成長を遂げるうえで本当に役立ちました。2016年の成長はOKRの効果によるところが大きいです。

データ解析、そして人力のプロセス

──ピアストリートでは、見込みのある不動産ローンの魅力とリスクを評価するために多くのデータを処理しなくてはなりません。こうした判断を下すのに、ビッグデータやデータ解析をどのように利用していますか?
データを使ってより賢明な判断を下すというのも、私がグーグルで経験したことから取り入れた手法です。当社ではすべてのチームにおいて、OKRの追跡を含めたあらゆることにデータを活用しています。
おそらく当社がデータを利用している最も重要な分野は、ローンの引受でしょう。物件の立地を見て、その地域の現在、未来、過去をデータを通じて評価します。
さいわい、米国の住宅市場については豊富なデータが存在します。われわれはそれがどのような住宅市場なのかを、地域市場のレベルでモデル化することができます。それこそ郵便番号より細かい地域に至るまでです。
その市場は今後どうなるのか──住宅価格は上昇するのか? 雇用の増加はどうか? 犯罪の発生率は? 差し押さえの件数は? それらは今後上がるのか下がるのか?
こうした予測を行ったら、次は過去20年間における最悪のシナリオを使って、それが再び起こった場合に個々のローンがどうなるかを分析します。この分析を全国レベルで行っても正しい答えは見えてきませんが、一部の地域市場に当てはめると有効なのです。
たとえば、2000年代初期にドットコムバブルが崩壊した時、米国の一部地域はさほど影響を受けませんでしたが、シリコンバレーとサンフランシスコは米国のどこよりもはるかに大きな影響を受けました。
一方、2008年にはその反対のことが起こりました。テキサス州の一部地域が原油バブルとその崩壊の影響をほかより強く受けたのです。
地域市場レベルの詳細なデータを手に入れることは非常に重要です。ローンを実施するにあたって、貸し手がしっかり評価を行ったかどうかを見極めるのに役立ちます。評価が不十分だったとわかれば、おそらくそのローンは当社が引き受けるべきものではありません。
これらに加えて、われわれは人力でのプロセスも実行します。データが出した答えをそのまま鵜呑みにはしません。たとえローンがわれわれの許容範囲を外れていても、ほかに引き受けるべき特別な理由があるかもしれないのです。
次に、われわれは物件の評価を決定します。基本的には物件の購入希望者および物件の価値に対する評価ですね。これは、他の類似物件のデータと実際の物件を直接見ることで決定されます。これらの段階を経て、われわれはローンを当社プラットフォームの投資家に売り出すのです。
以上が当社の多段階評価プロセスの詳細です。こうしたシステムをとっている理由は、個々の投資の質を維持しながら規模を拡大できる企業を目指しているからです。またそれと同時に、最高レベルの人材を引きつけ続ける企業文化を構築するためです。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Glenn Leibowitz/Contributor, Inc.com、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:palinchakjr/iStock)
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This article was produced in conjuction with IBM.