【田辺理】「人の伴走」は学びの効率をどこまで高めるか

2017/4/17
スタディサプリは、個々の志望大学に合わせたサプリ講師陣監修による学習プランと、現役大学生によるコーチングがセットになった「スタディサプリ 合格特訓プラン」(月額9800円)を3月1日からスタートした。「オンライン」だからこそできる学習実態の可視化と、「人の伴走」によるメンタル面でのサポートおよび学習面でのモニタリングというハイブリッド型サービスは、いかにして生まれたのか。事業開発責任者の田辺理氏に聞いた。
ビジネス発想でゴールから逆算する受験
──2020年の教育改革に向け、大学受験は大きく変わります。これからの学びはどのように変化していくとお考えですか?
 田辺:20世紀と21世紀では、学ぶ内容、つまりコンテンツ自体は変わって当然です。たとえばこれまでの受験勉強は、「知識」を学校なり予備校なりがインプットして、「知識の定着量」をアウトプットとしてテストで確認するというスタイルでした。
これからは「問題発見能力・解決能力」をインプットすることになり、どうアウトプットとして評価していくかがより重要な時代になるでしょう。
とはいえ、ビジネスに置き換えて考えると、勉強も受験も同じプロジェクト・プランニング。型は同じで、流し込む液が違うだけなんです。受験もある種のマネジメントだと捉えれば、ビジネスと同じようにうまくPDCAをまわしていけばいいのです。
「納期=受験」というゴールから逆算して、「タスク=学習内容」を棚卸しする感覚です。学ぶ内容が変わったとしても、学習で成果をあげる型は変わらないのではと思っています。
──そういった状況のなか、3月から新たにスタートしたのが、「スタディサプリ 合格特訓プラン」です。これまでのスタディサプリとの違いはどんな部分ですか?
大きく分けて2つのポイントがあります。ひとつはスタディサプリの講師が監修した「年間学習プラン」。
受験生はいつ、どんな勉強をすべきかがわからないことを不安に思っています。「いつまでにこの勉強を終わらせていたら、自分はオントラックなのか」がわからない。受験のプロである講師が、受験までの最短ルートを提示し、今、自分がどこにいるのかを明確にすることで合格までの地図を描きやすくしました。
もうひとつが現役一流大学生による専属オンラインコーチです。
本人の学習状況に応じて、毎週サプリが用意する1万本の授業のなかから必要なものを組み合わせて提案するなど、学習面でのサポートを行います。また、受験にまつわるさまざまな悩みや相談にも、マンツーマンで応対します。
通常のスタディサプリは月額980円ですが、この合格特訓プランは、年間学習プランと専属コーチがついて月額9800円です。
生徒にはこのような形で学習プランが提示される
──新たにこのようなプランを打ち出した背景について教えてください。
スタディサプリではさまざまなレベルの学生に合わせて1万本もの質の高い講義を用意しています。ですが、「自分ひとりでは思うように続けられない」「今の自分の受講の仕方が合っているのかわからない」という声もありました。
その不安を取り除くために、いつ何をすべきか計画を立ててあげること、さらに今の状況に応じてフレキシブルにやるべきことを提案し、個々の具体的な相談に応じる伴走者、つまり専属のオンラインコーチを用意したのです。
コーチは東大、一橋大、東工大、早慶の難関大学の現役大学生。自らの受験経験を生かせること、コミュニケーション能力が高いことに加えて、教育や受験生をサポートすることへの意欲の高さを基準に厳選しています。コーチに名乗りを上げてくれる学生は多いので、今後も質を維持しながらサービスを拡大していけると自信を持っています。
LINEネイティブに刺さるチャット伴走
──昨年夏から、受講者限定で合格プランの体験版を実施しています。その成果はいかがでしたか?
2017年度入試に向けて限定的に実施したところ、3カ月で偏差値を13.6もアップさせた学生がいました。多くの受講生は当初「年間学習プラン」に引かれて申し込んできましたが、実際稼働してみると、「専属オンラインコーチによるサポートが非常に役立った」「心強かった」という声が目立ちましたね。
受験生にもっとも評価されたのも、コーチとのチャットによるやり取りでした。今の高校生はLINEネイティブなので、対面よりもチャットのほうが素直に自分の気持ちを伝えられるようです。
受験の技術的な相談だけでなく、志望校選びや受験にまつわる悩みなどのメンタル面でも助けられたという声が多かった。第三者として自分に真摯に寄り添ってくれる「コーチ」という存在が、とても大きかったようです。
受験の悩みは、親にも、ライバルになりうる友だちにもしにくいもの。年齢が近く、苦しい受験を乗り越えた「憧れの存在」である現役大学生は、コーチとしてまさにピッタリの存在なのです。
──チャットというツールで、具体的にどのようなサポートを行うのでしょうか?
チャットは朝9時〜夜10時まで、48時間以内に返信するのがコーチ側のルールです。
コーチには、どこの大学で何を学んでいるか、普段の自分の「素」の部分をどんどん出して、生徒とコミュニケーションをとるようにお願いしています。
もちろん、すべてのやりとりを我々がモニタリングしているので、適正なアドバイスができているか、どんな会話をしているのかなど、あらゆる面で安心していただけるシステムです。コーチと生徒が実際に会うことも、システム上できない仕組みになっています。
チャットでのやりとりの一例。学習面でのアドバイスを受けられるのはもちろん、受験に対する不安を吐露する場にもなっている
リクルート流「ナレッジ共有」でコーチ強化
──コーチからのアドバイスなどは、「人」による差が出ることもありそうですね。トレーニングや組織づくりはどのように行っているのですか?
もちろん相性はあると思いますが、サービスのクオリティを保つという点では、さまざまな工夫をしています。
たとえばコーチは、過去事例を参考にしてその生徒にもっとも適した対応ができるようになっています。AIやBOTでは機械的になるところですが、そこはテクノロジーを利用しながらも、ヒューマンタッチな対応を心がけています。
逆にいうと、AIが介在することにより、コーチの意思決定を信頼感の高いアドバイスに進化させることもできると思っています。誰がコーチであろうと、いつでもベストな価値あるサポートを実現できる。ここは継続的に改善していきたいところですね。
3月1日のサービス開始から約1カ月半、実働しながらより生徒に寄り添ったサービスを目指し日々改善しています。コーチを集めた研修も毎月実施しています。
数人のコーチがチームを組み、ナレッジやベストプラクティスを共有。それをさらにコーチ全体でも共有し、進化の速度を上げて優秀なコーチの裾野を広げていくのです。コーチだけで対応が難しい問題は、サプリの講師やスタッフが対応するという組織づくり。このようなナレッジ共有は、リクルートが得意とする手法です。
普段は自宅で作業するオンラインコーチたちも、毎月一度は全員集まり、対面でのトレーニングを行う
──多くの予備校や塾でも、受験生向けのチューター制度を導入していますが、どのように差別化をはかりますか?
スタディサプリ合格特訓プランの最大の特徴は「場がない」ということ。アクセスする時間も労力も不要で、どこからでもアクセスできる。そのぶん、コーチも時間や場所を選ばず対応できますし、料金設定も安く抑えられる。対面式ではないからこそきめ細やかで頻繁な対応ができていると思っています。
通常の980円コースでは「自分からアクセスする」という仕組みゆえに強制力が弱いのも事実で、実際、「登録しただけ」になってしまうケースもあります。
ここに課題を感じ、より多くの生徒にスタディサプリを最大限活用してもらいたい、学習習慣を身につけてもらいたい、という思いから、コーチが徹底的に伴走する合格特訓プランが生まれました。最適なやり方で受講を続ければ成績も上がり、合格への近道を歩めると思います。
結局のところ、「どこで何を学ぶか」よりも、「どう学ぶか」というノウハウなんです。伸びるべき人に、適切なタイミングでそれを伝えていく。そういう頼れるサービスに進化させていきます。
(編集:大高志帆 構成:工藤千秋 撮影:加藤ゆき)
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