ANAの逆張りで成功した「空飛ぶ電車」

2017/4/9
本連載では、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠木建教授が、「戦略ストーリーの達人」たる経営者との対話を通じて「稼ぐ力」の中身を解明する。
今回、登場するのは日本初の格安航空会社(LCC)、Peach Aviation代表取締役CEOの井上慎一氏。誰もが失敗すると思っていたLCC参入だったが、予想をくつがえし業績を伸ばし続けている。航空業界の常識を破る独自戦略を採用する井上CEOだが、実は、楠木氏の著書からも影響を受けていた。

失敗するなら、ためになる失敗を

楠木 Peach Aviationは、ANAホールディングスを筆頭株主に持ち、関西国際空港を拠点とするLCCです。数あるLCCの中でも独自の戦略がキラリと光る面白い企業です。どういう経緯で設立されたか、まずは成り立ちを教えてください。
井上 実は自分の意思ではなく、全日空の社内ベンチャーとして始まりました。当時の山元(峯生)社長が「インバウンド需要をとらえなければ、全日空グループの未来はない」とはっきり言われていて。
実際に日本の生産年齢人口は下がっていて、なおかつ全日空は日本市場に根ざしたビジネスなので、先細りは間違いない。