ユニークな思考をどこで習得したのか

イーロン・マスクがユニークな考え方の持ち主であり、それが途方もない成功を導いていることは疑いようがない。そのユニークな思考をマスクはどこで手に入れたのだろうか。
天性のものだとか、単に運良く優れた遺伝子を受け継いだからだとか考える人もいるかもしれない。あるいは、教育の問題であり、並外れた育ち方をしたにちがいないと主張する人もいるだろう。
たしかに、そうした要因はどんな人にも影響を与える。だが、マスク本人や彼に近しい人たちは、それとは違う説明をしている。
「イーロン・マスクはいかにしてイーロン・マスクになったのか」と問うと、彼らはたいてい、同じ答えを返す──「たくさん本を読んでいる」からだ。
たとえば、マスクの母親は『ニューヨーカー』誌でマスクの子ども時代のこととしてこんな逸話を披露している。
「私にデート相手がいないときは、イーロンがディナーパーティーに一緒に来てくれた。おもしろい大人たちに会せようと思って連れて行ったのだけれど、あまりおもしろい人がいなかったときには、イーロンはいつもテーブルの下に本を隠して読んでいた」

「むさぼるように本を読む」習慣

マスクの弟も「兄はいつも、1日に2冊の本を読んでいた」と語っている。
マスク本人も、むさぼるように本を読んでいることをしばしば口にしている。
たとえば、スペースXの創業について、どのようにしてロケットの十分な知識を得たのかと問われたマスクは「本をたくさん読んだ」と簡潔に答えた。
だからといって、マスクと同じ本を読めば、それだけでマスクのようなスーパー起業家かつ大胆な夢想家になれるわけではない。そんなことはありえない。
だが、自分の思考を少しだけマスクに近づけたいのなら、ここで紹介する本を読んでみるのも、手はじめとしては悪くないだろう。
ここで挙げる本はいずれもマスク本人の推薦書として、Q&Aサイト「クオーラ(Quora)」のユーザーがまとめてくれたものだ。

伝記からSF小説、構造設計の入門書

1. 『ゼロ・トゥ・ワン──君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ著(邦訳:NHK出版)
2. 『Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies』(超知性:道のり、危険性、戦略)ニック・ボストロム著
3. 『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス著(邦訳:河出書房新社)
マスクはこの本から「疑問を持つことは、答えることより難しい」と学んだと語っている。
4. 『構造の世界──なぜ物体は崩れ落ちないでいられるか』J・E・ゴードン著(邦訳:丸善)
「構造設計の入門書を求めているなら、これはものすごく良い本だ」と、マスクはあるインタビューで語っている。
5. 『フランクリン自伝』ベンジャミン・フランクリン著(邦訳:岩波書店)
建国の父フランクリンをめぐるインタビューのなかで、マスクは「彼はまちがいなく私のヒーローのひとりだ」と話している。
6. 『アインシュタイン──その生涯と宇宙』ウォルター・アイザックソン著(邦訳:武田ランダムハウスジャパン)
7. 『Howard Hughes: His Life and Madness』(ハワード・ヒューズ、その人生と狂気)ドナルド・L・バーレット、ジェームズ・B・スティール著
マスクはCNNのリチャード・クエストに対して「伝記は全般的に好きだ」と語っている。「学ぶところが多い」
8. 『ファウンデーション3部作』アイザック・アシモフ著(邦訳:早川書房)
マスクは『ガーディアン』紙に対して、このSFの古典から「文明にはサイクルがある」ことを学んだと語っている。
「現在はまちがいなく上向きのサイクルにあって、そのままでいてくれることを願っている。だが、そうはならないかもしれない……45億年の歴史のなかで、人類が地球の外に生活の場を広げることが可能になったのは、いまが初めてだ。それを思えば、窓がいつまでも開いているなんて期待せずに、開いているあいだに行動するのが賢明だと思う」
9. 『Look to Windward』(風上を見よ)イアン・M・バンクス著
10. 『指輪物語』J・R・R・トールキン著(邦訳:評論社)
11. 『蠅の王』ウィリアム・ゴールディング著(邦訳:新潮社)
12. 『世界を騙しつづける科学者たち』エリック・M・コンウェイ、ナオミ・オレスケス著(邦訳:楽工社)
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:BrianAJackson/iStock、urfinguss/iStock)
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This article was produced in conjuction with IBM.