世界のベンチャーと日本の大手。“融合舞台”の一部始終

2017/3/30
今日、日本に限らず世界中で、テクノロジーとアイデアを武器に、既存環境にイノベーションを起こそうとするスタートアップが後を絶たない。NTTデータはこうした背景を踏まえ、世界9カ国10都市でオープンイノベーションコンテストをほぼ同時開催した。イベントから見えてきた世界のスタートアップ事情とそのアイデアとはーー。
世界10都市で同時展開
NTTデータが主催した「グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト」は、約1カ月の間に、世界9カ国10都市でスタートアップを対象にしたビジネスコンテストを開催。各都市の優勝企業を東京に招き、NTTデータとの協業実現にもっとも近い企業を「世界No.1」として表彰する。
大企業とスタートアップがコラボレーションして新たな価値創造を目指すイベントは、業種・業界を問わず大手企業が頻繁に開催しているが、世界を舞台にここまで大々的に行ったケースは皆無だろう。
2月2日にブラジル・サンパウロから始まった各都市での大会は、4大陸をめぐり、3月2日の東京大会で終了。そして3月15日、NTTデータが東京・豊洲に構える本社ビルで決勝大会「グランドフィナーレ」が行われ、各都市の大会で勝ち上がってきた10社が各国から集結した。
会場は、ファイナリスト以外に外部審査員とNTTデータの顧客、スタートアップやVCなど合計330人ほどが集まり、すし詰め状態。中でもNTTデータの事業部門の幹部やメンバーの姿が目立った。
3月15日の「グランドフィナーレ」会場には約330人が詰めかけた。スタッフやファイナリストはオリジナルのハッピ姿で参加。
各都市で開かれたイベント会場。各地に合わせた設営や演出を行った(左上がテルアビブ、右上がマドリッド、左下がトロント、右下が北京)。
グランドフィナーレの最優秀企業には3カ月の間、NTTデータとの協業実現に向けた様々な支援が約束されている。NTTデータのテクノロジーや人、チャネルといったビジネスリソースを有効活用し協業を模索していくが、それ以外の魅力的な提案を行った企業とも各事業部門が直接交渉し、協業を進めることができるようになっている。
各事業部門の幹部やメンバーが会場に顔をそろえているのはそのためで、「イベントがゴールではなく、協業のスタートとしてコラボレーションの機会を多くつくっていく」(残間光太朗室長)という狙いがある。コンテストとして「No.1」を選出してはいるものの、実際には10社すべてに対して、各事業部門が協業検討の意思を表明しており、翌日以降、具体的なビジネスミーティングが多数組まれた。
各社のプレゼンが終了した後、NTTデータの事業部門の幹部のプラカードが上がれば、具体的な協業内容を詰めていく仕組みだ。
優勝企業は「社会貢献」に着眼したスペイン企業
当日は各社が7分間でプレゼンを行い、質疑応答することで、それぞれのビジネスアイデアやテクノロジー、そしてNTTデータとの協業提案を披露した。
その中でも最優秀企業に輝いたのはスペイン・バルセロナ大会で優勝したSocial Coin(ソーシャルコイン)だった。
Social Coinはカリフォルニア大学バークレー校やMIT等と連携しながら「社会貢献ソリューション」を提案。社会に潜む問題をAIを活用して分析し、国や自治体に向けて報告。その問題の解決策をアプリで広く提示し、協力した市民が国や自治体から報酬を受けられる。ブロックチェーン等最新技術を活用しながら、「他者から受けた親切をさらに他者につなげていく」というペイフォワードの仕組みを実現している。
イバン・カバネロCEOは、「世の中の約半数の人は社会貢献に関心をもっているが、大半は具体的にどんなアクションを起こせばいいかわからず、何もできていない。その眠っているニーズをテクノロジーの力で掘り起こしたかった」と話している。
最優秀賞を獲得したソーシャルコイン(写真中央がイバン・カバネロCEO)。
「決済」サービスは世界的に注目分野
Social Coin以外にも、来場者の投票によって選ばれる「オーディエンス賞」はカナダ・トロントのSoundpays(サウンドペイ)、そして審査員特別賞はイスラエル・テルアビブのPayKey(ペイキイ)、イギリス・ロンドンのEverledger(エバーレッジャー)が受賞した。
有力アクセラレーターTechstarsの卒業生であるEverledgerはブロックチェーンを活用した高級品の真贋追跡システムに金融サービスを掛け合わせたユニークな分野に着眼した。一方、Shazamの開発者が立ち上げたSoundpaysは超音波によって即座にEC決済が可能なシステムを提案した。例えばスタジアムの大画面から発せられる音波を拾い即時決済できるという。
さまざまなチャットサービス上で簡単な操作で決済が可能な仕組みを提案するPayKeyは既にいくつかの海外金融機関と実証実験を重ねているという。いずれもUXを追求し、次世代の社会インフラになりうる可能性が高いソリューションとして注目された。
それ以外の企業も、「次世代の社会インフラ」に着眼した提案が多く、公共・金融・法人の全てにわたる社会インフラを支えてきたNTTデータの特徴を意識した印象だ。PayKeyのCEOアリエ・カッツ氏は、「電子決済等を活用した次世代の社会インフラは世界的に注目を集めている分野。自国のイスラエルだけでなく世界でビジネスの可能性が広がっている」と話していた。
イスラエル・テルアビブ大会優勝企業のPayKeyのアリエ・カッツCEO。世界展開を目指すうえで、金融事業に強いNTTデータに関心を示し、今回のイベントに参加した。
世界から見た日本
今回、10都市での大会を通じて参加したスタートアップは、200社を超える。彼らは、なぜ日本の一企業のビジネスコンテストに目を向けたのか。来日した各地の優勝企業10社に聞いてみた。
サンフランシスコ大会の優勝企業ShoCard(ショーカード)は「日本は成熟市場かもしれないが、それでもマーケットは広く、何よりビジネスをする環境が良好だ。代金を回収しそびれるといったリスクが少ない。新興市場では市場成長率は高いかもしれないが、ビジネス環境という面で言えばまだ整備されていない。進出国として(日本は)依然魅力的」という。
このように成熟市場とはいえ、世界第3位のマーケットであることに魅力を感じているほか、品質要求が高い日本での成功を一つの試金石と考え、海外進出の第一歩とする企業も多かった。
世界は最初からグローバルを意識している
世界10都市でほぼ同時開催したビジネスコンテストには、のべ動員規模1000人超と、NTTデータの予想を上回る来場者が集まった。今回のイベントの企画・運営に携わったNTTデータの岡田和也氏は「海外においては、NTTデータはもちろん、NTTすら知名度が低いのが実態。それでも、これだけの人数を集められたのは、市場として見たときの日本と日本企業自身にまだまだ魅力がある証拠」と語っている。
今回のイベントをリードしたイノベーション推進部オープンイノベーション事業創発室の残間光太朗室長は、「世界10都市同時展開という前人未踏ともいえるプロジェクトを断行したのは、数年前から世界各国を巡って、日本はオープンイノベーションの取り組みが世界に比べて圧倒的に遅れていると感じたから。オープンイノベーションは、風土も価値観も違う人や企業が、信頼関係のもとに掛け合わさった時に最も大きなビジネスが創発するはず。日本には、和の文化があり、もともとオープンイノベーションに適している。多少手荒に進めたとしても今の段階で“世界とともに事業創発できる”という姿勢を強烈に示したかった」と話している。
イベントのプロジェクトリーダーであるイノベーション推進部オープンイノベーション事業創発室の残間光太朗室長は、全10都市のイベントに足を運び、すべての司会を自らが担当。日本らしさをアピールするために「東京音頭」を歌って場を和ませた。
今回外部審査員長を務めた多摩大学の本荘修二・客員教授は「多様な国の知識やノウハウを集めること自体に意味がある。ここをスタートとして NTTデータにはどんどんオープンイノベーションのグローバル化をリードしてもらいたい」と高く評価した。
テクノロジーを生かし、国境を超えたビジネス展開が容易になった今、世界のスタートアップたちは積極的に他国に乗りだしている。
NTTデータが今回チャレンジした“常識はずれ”とも思われる本ビジネスコンテストは、日本が海外のスタートアップから見てまだまだ有力な進出先であること、そして、日本企業も成長に向けてグローバルを前提としたビジネスを描き、行動することがますます求められているということを、強く印象付けられるものであった。
(取材/文:木村剛士、写真:森カズシゲ)
*コンテストの詳細はこちらをご覧ください。各地のイベント内容などがご覧いただけます。併せてお読みください。