複数のメディア情報を統合するアグリゲーションサービスや自社メディアを展開する「じげん」。求人、住まい、自動車などのライフイベント領域に特化したサイトを多数運営するライフメディアプラットフォーム事業で、2013年の上場以来、12四半期連続で前年比増収増益を達成している。その成長を支えているのは、更なる事業拡大を推進する「じげん流M&A」。経営戦略部部長の寺田修輔氏に、じげんだからこそ感じるM&Aの醍醐味を聞いた。
外資金融から事業会社へ
じげんに入社したのは2016年3月。それまでは、外資系投資銀行で企業リサーチを担当していました。公開財務情報の分析や経営陣、専門家との議論から将来の業績や株価を予測し、国内外の機関投資家へ株式売買を提案する仕事です。
資金調達需要が高い不動産業界を担当していたので、ファイナンスやM&Aのアドバイザリー業務にも協力していました。
金融業界を離れ、じげんに転職を決めたのは、事業会社の最終的な意思決定者になりたかったから。そして、自分の専門性の幅を広げたいと思ったからです。
前職では20代のうちから専門性が高く、裁量の大きな仕事を任されることにやりがいがありましたが、企業経営の当事者として仕事をするため、事業会社に身を置きたいと思ったのです。
ではどこに行くかと考えたとき、まず重要なのは、企業として今後の成長が期待されること。そして、自分の専門性を活かす白地が組織内にあることでした。
その点、じげんは特定の領域や単一のプロダクトに過度な依存をせずに事業を運営しています。展開範囲が広いので、特定の業界のセミマクロに左右されずにビジネスを進められる強みがある。
アグリゲーションメディアとして複数業界においてユーザーとのタッチポイントを確保したうえで、サプライチェーンの垂直統合や収益機会の多様化に染み出していく、という明確な自社戦略とその実績にも、さらなる成長のポテンシャルを感じました。
また、経営陣とのフィット感も大きな要素でした。代表の平尾は、他社のビジネスモデルや事業戦略に関して圧倒的なインプットがあり、さらにそれがパターン化され、独自の分析データとして頭のなかに入っています。
単純に、「こんなに頭のいい人と一緒に仕事をしたい」と強く思いましたし、今の経営陣は事業畑の出身者が多いので、コーポレートに関する専門性を持った自分なら介在価値があるだろうと思い、入社を決めました。
経営戦略部部長 寺田修輔
東京大学経済学部卒業後、2009年、シティグループ証券入社。株式調査業務に従事し、2014年より不動産チームヘッド。2016年、経営戦略部部長としてじげん入社。Certified Financial Analyst (CFA協会認定アナリスト)。じげんコーポレートブログも執筆中。
「じげん流M&A」とは
現在は、経営戦略部の部長として、M&A、IRを含む株式・負債の資金調達関連、経営企画業務の3つを任されています。入社して1年ですが、じげんグループとして最大のM&Aを手がけるなど、じげんならではの、全社戦略に基づいたM&Aを進めています。
M&Aの基本的な流れは、ソーシング(案件発掘)、デューデリジェンス(事業財務法務等調査)、条件面のネゴシエーション(交渉)を経た、エグゼキューション(実行)、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション:経営統合)です。
じげん流M&Aの特徴の一つは、ソーシングの数が多いこと。その数は、上場して3年で累計400件超にもおよびます。
アグリゲーションメディアや自社メディアの展開領域が広く、現在の求人、不動産、自動車領域にとどまらず、新規分野での立ち上げも検討しているため、M&Aの仲介プレーヤーの方々が案件を持ち込みやすいのです。
さらに、過去3年で8件のディールを完了させており、統合後に業績アップを実現させているという実績により、成立の蓋然性が高い有望な案件が紹介されやすいという好循環につながっています。
そして最も大きな特徴は、ソーシングからPMIまでの全フェーズを一気通貫で内製化しようとしていること。
「M&A後に事業をどう成長させていくか」を考えるために、デューデリジェンスの段階から事業側の責任者や、統合後に推進者になりうる人材をプロジェクトに呼び込んでいるのです。
百戦錬磨の事業責任者と、M&Aやファイナンスの専門家がセットで動くから、M&A直後からやるべきことが決まっている状態を作ることができ、スピーディーなPMIを実現できています。
また、実行のフェーズでは、物理的にお金が必要になりますが、じげんでは、経営戦略部にM&Aとファイナンスの機能が備わっています。
根本にある全社戦略を遂行するための手段としてM&Aがあり、そのM&Aを遂行する手段としてファイナンスがある。その考え方が明確なので、それぞれの戦略や戦術が連続性を保ったまま実行まで進められるのです。
よくあるM&Aの失敗例に、「専門部隊が勝手に案件を進めてしまう」「M&Aしたあとに、事業部との連携がうまくいかない」といったケースがあります。
じげんは「事業家集団」というビジョンに基づき、事業部サイドから「こんな事業があればもっと業績を伸ばせる」「こういう強みを持った会社と一緒にやりたい」といった提案がくるなど、事業部と経営戦略部をはじめとするコーポレート部門との連携がうまくいっていると思います。
M&A後の事業成長から考える
入社後に手がけたM&A案件の一つは、折り込みチラシを中心とした求人媒体を運営する会社でした。その会社は、地域に根ざして事業成長を続けており、多くの企業を顧客として抱えていました。
インターネットだけではリーチできない顧客やユーザーにも幅を広げたいと考えていたじげんにとって、とても魅力的な会社だったのです。
我々は、M&A後にどう事業を伸ばしていくか、PMIのプランを対象企業の社長に丁寧に説明しました。
提案したのは、紙媒体と親和性の高いユーザーや地域における圧倒的な事業基盤を大事にしながらも、ネットメディアも並行することで、これまでターゲットから外れていた層にもリーチすること。
過去のM&Aでご一緒した企業がいかに伸びているかについても、データをもとに説明した結果、複数社の競合がいた中で「ぜひ、貴社に事業拡大を手がけてほしい」というお言葉をいただくに至りました。
現在は、デューデリジェンスから入っていた事業部のメンバーが常駐し、組織改革にも力を入れています。まさに、デューデリジェンスの段階から成長戦略を考えていたおかげで成就した案件だったと思っています。
第三者から当事者へ。専門性は大きく広がる
じげんには、“上場を果たし、戦略オプションが豊富な中規模ベンチャー企業”に在籍しながらも、スタートアップ時期の経営層のような仕事を手がけるチャンスがあります。
事業領域が広く、今後M&Aによって生まれるポストにも、あらゆる可能性があるでしょう。
じげんに来てまだ1年ですが、意思決定に関与するかしないかで、キャリアパスが大きく変わることを実感しています。
サプライチェーンの一部で第三者として助言をする立場から、一気通貫でプロジェクトを推進する当事者として調査、実行、経営統合に関与する立場になり、全社戦略から、最終ゴールである目的をともに考えることで、日々気づきをもらっています。
現在の私の目標は、じげんを真のメガベンチャーにしていくこと。時価総額10兆円を超えるフェイスブックやグーグルのような会社はほとんどがアメリカ発となっており、日本のインターネット企業は時価総額数千億円規模ですら数社にとどまっています。
もちろん、時価総額や事業規模が大きければ良いという単純な話ではありませんが、じげんが社会に対して意義あるインパクトを持つためには、もっとステージを上げていく必要があると考えています。
外資系投資銀行のようなプロフェッショナルファームでは所属する組織や業界に対して冷めた見方をする方が多く、私もその1人でしたが、今では「この会社を大きく成長させたい」という当事者意識がすっかり根付いています。
金融やコンサル、事業会社のコーポレート部門でキャリアを積む中で、「事業会社で意思決定に関与したい」「全社戦略を一気通貫で推進したい」と思う方は多いと思います。
じげんなら、これまでの経験を最大限にいかしながら、よりダイナミックにキャリアの幅を広げていけます。「事業家」「経営者」としての筋肉を付けたいと考える層にとって、非常に働き甲斐のある環境ではないでしょうか。
(取材:田村朋美、文:田中瑠子、写真:隼田大輔)