【直撃】大和ハウス会長・樋口武男のイノベーター思考に迫る

2017/3/5

即断即決の思考プロセスは?

──樋口武男会長は、投資など経営判断を即断されることで有名です。たとえば2008年、介護事業やリハビリなどに活用できるロボットを開発しているベンチャー「サイバーダイン」に出資して、大成功を収めています。
金策に奔走していた山海嘉之(さんかい・よしゆき)社長と面談し、出資を即決したとのことですが、このような決断はどのような思考プロセスを経て下しているのか。
本日は、樋口会長の頭の中に迫りたいと思います。
樋口武男(ひぐち・たけお)/大和ハウス工業 会長兼CEO
1938年生まれ。関西学院大学卒業。63年、大和ハウス工業入社。93年、大和団地社長。2001年、大和ハウス工業社長。04年より現職。
人間って、正直にできているんでね。
──と、おっしゃいますと?
顔に出るんよ。山海社長に会ってすぐ、この人は嘘をつかんと分かった。
──その人の顔で分かるのですか。
顔というよりは、その人全体が醸す雰囲気やね。僕は山海さんが一生懸命話すのをじっと見ながら、聞いていただけや。
投資をする上で一番大切なのは誠実な人であるかどうか、事業に真剣かどうかや。相手の話を聞く時は、それを基軸にして聞いているわけ。
それで、サイバーダインの時は、山海先生が話し終えた時に、「分かりました、支援します」と言った。
──あまりの即断です。
山海先生は、サイバーダインのロボットスーツを着けた大学院生を、別の応接室に待たしとった。僕が納得しなかった場合、それを見せて、もういっぺん説明しようと思っていたらしい。
だけど、僕はもう結論を出しとったんよ。うちが出資しますと。
でも、せっかくロボットスーツを着込んだ大学院生もおるなら、ただ帰すのも悪い。ほんで「見せてもらえるか?」と頼んだ。そうしたら、ロボットスーツを着た大学院生が5kgの米俵を持つわけよ。
でも、僕でもそれぐらい持てるがな(笑)。だから僕も持った。そうしたら、(大学院生に)米俵をもう1袋載せられたんや。これは重いよ。
ところが、学生は涼しい顔をしとるやないか。ほんで「あんた、力強いな」言うたら、「力を入れてません」と言うやないか。ロボットが支えています、と。