SPEEDA総研では、SPEEDAアナリストが独自の分析を行っている。今回はエコリフォーム補助金制度に沸くリフォーム業界から水周りを中心とした動向をみる。
国内の新設住宅着工戸数が伸び悩む中、住宅設備メーカーは、既存住宅のリフォーム需要をいかに取り込んでいくかが課題となっている。折しも、「住宅のエコリフォーム補助金制度」がスタート、ショールームも賑わいをみせている。

住設に影響大きい新設住宅着工は縮小

まず住宅設備市場の概要をみてみよう。最大の需要先は、現在もなお、新設住宅である。
近年の新設住宅着工戸数は、政府の金利優遇策や住宅版エコポイント制度、賃貸では相続税法改正などが奏功し、年間90万戸を維持している。2017年暦年での着工数も2016年の97万戸には及ばないが、住設関連企業では92万~93万戸が見込まれている。
システムキッチンや温水洗浄便座などの住宅設備の普及率は、現在70~80%に達しており、新設住宅にはほぼ100%導入されていると考えてよいだろう。
しかし、新設住宅着工数は、民間推計によれば、2020年には82.5万戸、2030年には70.5万戸まで減少すると予測されており、業績への影響は不可避である。また住宅ストック数は、総世帯数に対し、2008年時点で、約15%多く、量的には既に充足しており、2030年には約2割が過剰となる見込みである。

期待はリフォーム市場に

そこで、今後期待されるのがリフォーム市場である。現在住宅ストック約6,000万戸のうち、バリアフリー及び省エネ基準を満たさない住宅が約2,200万戸存在する。
それ以外の老朽化によるリフォームを加えれば、新設住宅の減少を補うだけの需要は見込める。

リフォーム市場は倍増の12兆円を計画

国の住宅政策の方向性を示す「住生活基本計画」が5年ぶりに見直され、2016年3月18日に閣議決定された。想定に反し、住宅ストック分野ではリフォームと既存住宅流通の市場規模の成長が鈍いことを課題としており、2025年には二つの市場をほぼ倍増させることを計画に入れた。
リフォーム市場については2013年の7兆円から25年に12兆円に、既存住宅流通市場の規模も2025年には倍増の8兆円にする方針である。

「エコリフォーム補助金制度」開始

2016年11月に国土交通省による「住宅ストック循環支援事業」の一環として「住宅のエコリフォーム補助金制度」がスタートしている。
エコリフォームを実施し、リフォーム工事後に耐震性が確保されていることが要件となる。「ポイント」ではなく補助金として現金で還元される。エコリフォーム費用として30万円/戸、耐震改修を行う場合は45万円/戸が補助限度額となる。なお、エコ住宅設備としては、太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽、高効率給湯機、節湯水栓が対象となる。
では住設関連リフォーム市場の内訳をみてみよう。

リフォームでは水周り需要が多い

国土交通省が2008年から始めた「建築物リフォーム・リニューアル調査」によると、住宅におけるリフォーム・リニューアル工事の受注件数の割合では、「給水給湯排水衛生機器設備」が7割近くを占め圧倒的に高い。水廻りについては、リフォームの中でも必要性が高いことから上位に挙がっている。

バスユニット出荷は新設件数を超える

バスユニット(ユニットバス)は、東京オリンピック開業をめざしたホテルニューオータニで、初めての本格的なシステムバスが採用されたのが起源とされる。その後、1960年代に始まった賃貸住宅やホテルなどを主力需要分野として成長し、品質の向上により戸建住宅分野でも急速に採用率を高めた。単体浴槽が長期凋落傾向にあるのとは好対照の状況にある。
現在、新設住宅におけるバスユニットの普及率は集合住宅でほぼ100%、戸建住宅でも60%以上と言われる。さらに日本人のお風呂好き、こだわりは大浴槽、気泡バス、バリアフリー対応等、商品開発面での底上げをももたらし、高級化、高機能化がバスユニットのイメージ自体を一新したともいえよう。
システムバスの出荷台数は、2000年代半ばから新設住宅着工件数を上回る1,200~1,300万台で推移しており、リフォームなどの需要が市場を下支えしていることがわかる。また2009年度までの減少傾向も持ち直してきている。

LIXIL、TOTO、パナソニックの3強

システムバス及び洗面化粧台市場は、大手企業の占有率が比較的高く、上位2社で約5割、上位5社で約7割を占める。
浴室、洗面台両方を扱う総合プレイヤーはLIXIL(LIXILグループ子会社)、TOTO、パナソニック、タカラスタンダード、積水ホームテクノなどが有力である。

国内企業統合とM&Aにより急成長

LIXILグループは、サッシ、エクステリアなど開口部、外構を中心に展開していたが、1985年に住設機器事業に参入、2001年にINAXのグループ入り、2011には国内5社統合した。
一方では、2009年からは海外のM&Aにより、同年度3%だった海外売上比率は、2015年度には30%まで上昇、グローバル基盤の確立し、現在はシナジーの最大化、持続的成長のために組織のスリム化を図っている。年商も、1986年度の約300億円から2015年度の1兆8,900億円まで拡大、30年間の成長率は6.5%と堅調な推移となっている。
国内市場においては、水周り商品では、いずれもトップクラスの位置にあり、衛生陶器の40%をはじめ、バスルームで30%、システムキッチンでも28%のシェアを有する。

高齢世帯狙う「1FLOOR 新築二世」

このような状況下、LIXILグループは、2016年10月からスタートした「簡単・早い・明朗」で解決し、新しいリフォーム需要を創造していくリフォームサービス「リクシルPATTOリフォーム」の対象商品を全11商品に拡充した。1日で施工でき、商品代金と工事費用を含んだ“総額”を参考価格として事前に明示し、安心のLIXIL認定サービスショップでリフォームできる。全国約500店の登録サービスショップでスタートしたが、現在では全国約3,000店まで拡大している。
また、「1FLOOR 新築二世」を2017年2月1日より販売開始した。1階部分に日常の生活機能を集中させ、さらに断熱性や、生活導線、最新の設備などを導入することで、1棟全体のリフォームに比べて工事費、工事期間を抑えつつ、より快適な暮らしを実現させる新しい発想のリノベーションプランとなっている。

パナソニックは新ブランド立ち上げ

パナソニックは、リフォーム事業を本格的に取り組んでいる。2016年にパナホームの共同出資により、パナソニックリフォームを設立、リフォーム事業のブランドを「Panasonicリフォーム」に一本化した。パナホームが得意とする住宅設計や建築技術、部材・施工品質マネジメント力と、パナソニックの住宅設備事業との相乗効果を図る。コマーシャルでは「住空間」リフォームを訴求、大型改修の需要を喚起し、既存顧客の掘り起こしに注力する。

タカラスタンダードもリフォーム好調

タカラスタンダードは、「少しでも広いお風呂に入りたい」というニーズに、浴室の広さに合わせて自由自在にサイズを指定できる独自製品「ぴったりサイズシステム」を開発し、1999年から発売を開始している。専用の製造システムを国内に構築、最大で1,300通りのサイズ展開が可能となった。
2016年12月時点で累計販売台数が17万台突破、リフォーム需要を獲得してることがわかる。

まとめ

老朽化した設備の更新に加えて、資金力のある高齢世帯では中高級グレードの商品も需要が見込める。
浴槽の周囲を断熱材で覆い保温効果の優れる「高断熱浴槽」、湯水に空気を含ませ湯水の1粒1粒を大型化した「気泡混入シャワー」、すぐ乾き冷たさを感じない床など、最新機能を完備したバスルームは「癒し・リラクゼーション」の空間として、コト消費の時代に入っている。
こうしたリフォーム市場については、全体規模が大きいとされるだけに、期待度も高いものがある。補助金制度を追い風に需要を取り込んでいく方向性は、各社の相次ぐ施策が物語っている。
しかし、分散市場であり、スケールメリットを享受するのは難しい面もある。ここは、長期的な視点で、信頼を獲得していくことが、勝ち組に残ることになるであろう。