【山崎亮】“つながり”が価値を生む。強いネットワークの作り方

2017/3/2
規模や業種を問わず、あらゆるビジネスは人間と人間の“つながり”によって生まれ、営まれていく。それは企業や組織の中で働くとしても変わらない本質であり、信頼のおけるパートナーとつながることが、ビジネスの成否を左右する。では、最適なつながりはどうすれば構築できるか。「つながりを生み出すプロ」であるコミュニティデザイナーの山崎亮氏に、その秘訣を聞いた。
人と人のつながりをデザインする
 コミュニティデザイナーとは、一言でいえば「人と人がつながる仕組みをデザインする仕事」です。
 なんらかの課題を抱えている地域の活性化プランを、その町の人々や行政と一緒に考えて、実行する。ただし、そのために建物や公園といった「ハード」を作るのが目的ではなく、地域のなかでハードを使いこなす「ソフト」、すなわちコミュニティをマネジメントすることが主眼です。
 この仕事において、主役はあくまでも町の人々です。「こうすればあなたたちの課題は解決しますよ」と教えるのではなく、どういう話し合いをすればクリエイティブな発想が出てくるかを伝え、地域のために力を発揮できる人同士をつなげる。それがうまくいけば、様々な課題にみずから果敢にチャレンジできる集団が地域に生まれます。
この仕事は、私自身が地域の人々とつながることから始まりますが、最終的には地域の人同士や外部の人をつなぐことで、地域のなかに新しいコミュニティを構築することが目的です。プロジェクトはだいたい3年ぐらいで終わり、私は地域を去ります。
しかし、地域の人たちのつながりは、その後も生き続けるのです。
コミュニティには2つの形
一口に「コミュニティ」といっても、大きく2通りの種類があります。ひとつは企業のように、何らかの目的を達成するために協力しあう「アソシエーション型」。もうひとつは、地域性や基礎的な社会性を共有し、持続性をもつ「ネットワーク型」のつながりです。
課題解決のためにバリバリ働ける人が集まるアソシエーション型のコミュニティは強力ですが、目的を達成してしまうと、燃え尽き症候群のように分解しやすい。そこで、その周囲に彼らを支援する人たち、友人や家族たちを含めて、ある意味で“ゆるい”ネットワーク型のつながりを形成しておくと、コミュニティに持続力が生まれます。
すると、時間が経って地域のなかに新しい課題が立ち上がった場合でも、“ゆるい”ネットワークの中から新たなアソシエーション型組織が生まれたり、課題によってメンバーが自在に入れ替わり、思ってもみなかったような新しい価値が生み出されたりする。
アソシエーション型とネットワーク型、どちらが優れているかではなく、2つのつながりが重なり合うことで、強い地域のコミュニティが形成されるんです。
また、「地域の課題を解決するぞ!」と考えると、どうしても“正しい”ことをやろうとしがちです。しかし、正しさをもとに理性で動ける人よりも、「わかっちゃいるけど」という人のほうが多いのが実情です。だからそこに「楽しい」「気持ちいい」といった感性の要素を加えます。
難しいことはよくわからないけど、参加すると楽しい。これまで縁のなかった面白い人に出会えるのがうれしい。そういった要素にひかれて活動に参加した人たちが、結果的に地域をよりよいものにした。そんな構図を作れるかどうかが、デザイナーとしての腕の見せ所です。
山崎さんがコミュニティ運営支援に携わった「縁活」の様子。市民活動団体やボランティアが中心となり、「あべのハルカス近鉄本店」でさまざまな活動を行っている。
超高齢化社会に向けて、北海道沼田町では安心して生活できる医療福祉の実現を町民参加型で進めている。
徹底的に“話を聞くこと”でつながる
様々な地域の課題解決に対して、定型的に使える手順やノウハウはありません。そこが都会か郊外か、漁村か農村かといった属性によってまったく変わってくるからです。
しかし、突き詰めればどうやって「人」で解くか、しか答えはない。地域の人たちの個性をどう組み合わせれば、それぞれのキャラクターが生きるか、新しいアイデアが生まれるか。それを突き詰めて考えます。
そのためには、まず自分が地域に入っていかなければいけません。
たとえば私たちの場合、地方自治体から依頼を受けると、まずは役所の人に「この地域で面白い活動をしてる人を10人紹介してください」と言ってリストをもらいます。その10人の自宅か職場に伺い、1時間ほど話をします。今、どんな活動をしているのか、その活動で困っていることは何か。1日5件ぐらい、朝から晩まで話を聞きますが、最後の質問はいつも決まっています。
「あなたがこの地域で面白いなと思う人を3人紹介してください」
最初の10人から紹介してもらった30人に、また3人紹介してもらえば、今度は90人。100人ぐらいの話を聞けば、その地域の人脈図が描けるようになります。この人脈図をもとに、ネットワークを俯瞰(ふかん)し、まずはどの人と濃い関係になろう、この人とこの人は別のプロジェクトで動いてもらおう、といったことを考えるんです。
つながりは一度築けばそれで終わりという静的なものではなくて、状況や時間の移り変わりとともに変化する動的なものです。地域のためにバリバリ活動していた人が「子どもができたから」と離れていくこともあります。
「つながりを作るときに失敗したくない」と考える人もいるでしょう。でも、それはとても難しい。つながりを点と点ではなく、ネットワークとして捉えておくことで、何かトラブルがあってもリカバリーが利くのです。
一方で、つながるべき人とつながろうと思ったら、とりあえず誰とでもいいから、いったんつながってみることが大事です。そうでないと、会うべき人にたどり着くまでの道筋すらわかりません。だから、「できるだけ多くの人とつながってネットワークを築くべし」という結論になります。
つながって、一緒に活動していくなかで、時間をかけてやる気のある人なのか、相性の合う人なのかを見ればいい。「この人はちょっと違うな」と感じたら、ネットワーク内の別の人に当たる。これはどんな仕事においても、個人においても可能な方法ではないでしょうか。
SNSの“薄いつながり”は有効か
個人と個人のつながりの形は、SNSの登場でずいぶん変わりました。見ず知らずの人の意見にふれたり、予期せぬ出会いを得たりする機会も増えたはずです。とはいえ、SNSで出会った人と現実世界で一緒に何かやろうというところまで話が進むことはまれでしょう。これは、実際に会ったことがない場合、より顕著だと思います。
だからといって、SNS上での“薄い”関係を役に立たないものだとは思いません。
たとえ“薄い”ものであってもネットワークを持っていなければ、どんな人たちと“濃い”関係を築くかを選択できません。「名刺交換なんてやるだけ無駄」という意見もありますが、そこで名刺を交換していたことが、ビジネスを含めた新しい活動のベースになることがある。
薄い関係の中で、あるとき「この人たちと濃い関係になりたい」と思ったら、一歩踏み込む。実際に会ってみて、違うなと思えば、もう一度薄い関係に戻す。つながり全部を濃くする必要はないのです。これが現代におけるネットワークの活用方法ではないでしょうか。
薄いネットワークを張り巡らせておくことには、さまざまなメリットがあります。
夫婦関係の悩みは親戚に相談しにくいだろうし、重要な役職に就かないかとか言われたとき、社内の人には相談しにくいかもしれない。そんなときには、ずっと関係が続くかわからないぐらいの人に相談したほうが気楽です。これがアメリカの社会学者であるマーク・グラノヴェッターが言うところの「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」というものです。
ネットワークを広げるために
ビジネスにおいて人脈を作るというと、有力者や権力者などの「キーマン」を探そうとする人がいます。しかし、自分のコミュニティを作る上で重要なのは、「ハブ(HUB)」という考え方でしょう。HUBとは、人と人のつながりの軸になっている人物や、つながりを仲介できる人物のことです。
信頼できるHUBの人とつながっておくと、たとえば新しいビジネスを計画する上で、ある領域に詳しい人とつながりたいとか、パートナーになれる人を探したいというときに、すごく助けてもらえることがあります。
ただし、どんなつながりが重要か、どんな人との関係が役立つかということは、興味をもっていることやライフステージによって常に変化します。あらゆる局面におけるHUBやキーマンというのは存在しないわけです。
だからこそ、できるだけ多くの人と“薄くつながる”ことが有効です。
少しずつでもいいから、自分が今、何を考えているのか、何に興味を持っているのか、どんな人と一緒にプロジェクトをやっているのかを発信しておくことで、思わぬ人物との出会いがあるかもしれない。または、意外な人物が新しいつながりのHUBになってくれるかもしれない。
できるだけ広い“薄いつながり”と、できるだけ深い“濃いつながり”を行き来することで、信頼できる仲間のコミュニティを持続的に構築していく。それが現代において、価値あるつながりの形ではないでしょうか。
(編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 写真:岡村大輔)