【解説②】債務超過に、また会長退任…。誰が東芝を“殺した”のか
2017/2/15
悪夢のバレンタイン
諦めたような笑いが印象的だった。
昨日2017年2月14日、東芝が開いた記者会見。壇上に立った社長の綱川智は、報道陣からの緊迫した質問攻勢が終盤を迎えると、なぜか不思議な笑顔を浮かべたのだ。
バレンタインデーとしては、最悪な1日だった。
この日は、2016年4〜12月の連結決算の発表が計画されていたが、予定時間の正午の時点で突如、「本日12時時点では開示できておりませんことを、お知らせします」とのメールを報道機関に一斉送付。
午後3時になると、決算報告書の提出を1カ月ほど延長申請したことを明らかにし、その理由として、原発子会社のウェスチングハウスの買収事案をめぐって、「内部統制の不備を示唆する内部通報事案があった」と衝撃の新事実を挙げた。
当初午後4時に予定されていた記者会見の時間は延ばされ、その間に、会長の志賀重範が退任することや、原発事業の減損額が7125億円でこのままでは年度末に債務超過に陥ることが発表された。
極めつきは、会見で、これまで20%以下にこだわっていた“虎の子“の半導体メモリ事業への外部資本注入について、綱川が「過半の譲渡もあり得る」とサラッと明らかにしたのだ。
完全売却についても、「あらゆる可能性があります」とも言い切った綱川。解体へとひた走る自社の有り様を悟り、ようやく腹を括ったのかもしれない。
「買収は正しかったとはいえない」
「まさに九回の裏だな」。日本を代表する創業140年の伝統企業とは思えないドタバタのガバナンス欠如ぶりに、会見を見ていた記者はつぶやいた。
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この連載について
東芝が、さらなる絶体絶命の危機に陥っている。原発事業で約7000億円の減損を迫られる予定で、年度末の債務超過がギリギリの状態だ。15年に発覚した会計不祥事を契機に、次々と、経営難に陥っていく東芝。だが、日々の報道が喧しい一方で、一体、東芝で何が起きているのか、経営問題の全体像は極めてわかりにくくなっている。特集では、東芝問題を5つの論点に分け、完全解説する。
インフラサービス領域(発電システム、公共インフラや産業向けソリューション等)とデバイス領域(パワー半導体、高容量HDD等)で事業展開。医用画像情報システム、偏光板保護フィルムなどで世界シェアが高い。