MITの開発者「85%正確なシステム」

社会不安症の人を支援する新しいツールがまもなく利用できるようになるかもしれない。スマートウォッチだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者は、 人々が社会的なやり取りをよりよく理解するのを助ける人工知能(AI)システムを開発した。同システムはスマートウォッチを使い、話し手と聞き手の感情についてのデータを収集し、スマートウォッチを装着している人のためにそのデータを分析する。
MITニュースによると、AIシステムはある人のスピーチ──使われた単語や話し手の口調、速度、エネルギーレベル──を検知するほか、スマートウォッチを装着している人の心拍数、血圧、皮膚の温度などバイタルサイン(生命の兆候)を収集する。
システムはこれらの情報を組み合わせて、 ウォッチを装着している人が会話のどの時点で特定の感情を抱いたかを明らかにする。
研究者は、システムは83%正確だと語る。今のところ「楽しさ」「悲しさ」「どちらでもない」感情を特定できるが、時間が経つにつれてより高度になり、もっと複雑な感情が理解できるようになるという。

口調や身振り手振りも判断材料に

研究チームは、人々にスマートウォッチを装着したうえで、楽しい話や悲しい話をしてもらうことによってAIシステムを開発し、2つのアルゴリズムを訓練した。
ひとつは全体の口調をみるもので、もうひとつは5秒ごとの間隔を置いて話の内容を調べ、それが楽しいものか、悲しいものか、どちらでもないかを判断するものだ。
システムは、長い小休止や単調な口調、エネルギッシュに手を振り回したり、あごに手をおくなどの身振りや手振りも考慮する。ディープラーニングを使ったこのAIシステムは、時間の経過とともにより正確にさまざまな感情を特定できるようになるはずだ。
自分や聞き手がショックを受けたり、怒りを感じたり、退屈したりする瞬間をはっきりと特定できることを想像していただきたい。
AIシステムがさらに高度なものになれば、社会不安を抱える人に有効かもしれない。会話のどの時点で最も神経質になったり、最も興奮するかが正確に把握できるからだ。

自閉症やアスペルガー症候群にも効果

研究者は、このシステムは一般に他者の感情を理解するのに他の人よりも苦労する自閉症やアスペルガー症候群の人に効果があるかもしれないと指摘する。
AIシステムが実用化された場合、最大の効果を引き出すために、あるいはプライバシーの問題から前もって計画されたソーシャルコーチとの面談に最も向いているかもしれない。
研究者は、この手法を一般向けに使うためには、会話に関与する人から同意を得るための手順を確立することが必要だと認める(ぎこちない会話になりそうだ)。
それでも、技術によって障害を排除できれば、大観衆の前でも一対一の会話でも公の場で話をすることに自信のない人に役に立つかもしれない。
現在、同技術が使えるのは研究者向けに開発されたサムスンのリストバンド型端末「シムバンド」だけだ。しかしMITのチームは、いずれアップルウォッチのようなウェアラブル端末でも使えるようになると言う。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Kevin J. Ryan/Staff writer, Inc、翻訳:飯田雅美、写真:RyanJLane/iStock)
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This article was produced in conjuction with IBM.