「抜け穴」を徹底利用。超高収入のカラクリ

2017/2/9
米国のビジネス界で存在感を高める、プライベートエクイティ(PE)。近年、その投資分野は、企業のみならず、公共インフラ、自治体にまで拡大している。全米を席巻するプライベートエクイティの全貌にニューヨーク・タイムズの取材班が迫る(全8回)。 
予告:年収800億円。プライベートエクイティ幹部の3つの収入源
第1回:現代プライベートエクイティの「冷徹な儲けの原理」
第2回:プライベートエクイティと年金基金の互恵関係
第3回:打ち砕かれた従業員の希望。PE流の「工場改革」

一般的になった配当リキャップ

プライベートエクイティ運用会社のアポロ・グローバル・マネジメントとC・ディーン・メトロポウロス&カンパニーは投資先のホステスの工場から利益を搾り取ってきた。
2015年のその日、ニューヨークの5番街でまとまった合意は、その徹底的な「食べ尽くし」を象徴するものだった。
シラーパーク工場の閉鎖から1年もたたないその日、アポロとメトロポウロスは「セントレジス・ホテル」のベルサイユ・ルームで、ホステスから投資利益を確保するプロセスに着手した。
たいていの投資家の「利益確定」方法は、タイミングを見計らって投資先の会社を売却するか上場させるかだが、プライベートエクイティのやり方は違う。
アポロとメトロポウロスはまず、ホステスがクレディ・スイスから約13億ドルを借り入れるよう手配し、そこから約9億ドルを、自分たちと自社の投資家への支払いに充てた。ホステスは今後、クレディ・スイスに13億ドルの返済を続けていくことになる。
この手法は配当リキャップと呼ばれ、プライベートエクイティにとっては定番の戦略となっている。これによりプライベートエクイティは、投資先企業を売却する前に自らや投資家(年金基金など)の利益を確保することができる。いわばボーナスのようなものだ。