世界唯一の「人財開発企業の挑戦」

2017/1/18

事業戦略から人財開発まで

ある売上高1兆円超のメーカーA社は、売り上げの半分以上が海外事業だ。その海外事業が成長しておらず、抜本的にてこ入れしたいという相談が、エッグフォワードの徳谷智史に持ち込まれた。
徳谷は工場や営業などA社の各国の現場を徹底して回り、現地人スタッフへのヒアリングを重ねた。そこには、事業戦略のみならず、各国の組織体制や人材にも極めて大きな課題があった。組織はバラバラ、キーマンは不在。
そこで、国別の状況に応じて、組織を設計し直し、国別の育成体系整備と、現地語での継続トレーニングまでを一気通貫で手がけた。結果、業績が劇的に改善。翌年には、売り上げが150%以上増加した地域もあった。離職が当たり前だった各国の組織の雰囲気は激変した。
「すべてが私たちの人財開発の効果というわけではないと思いますが、数字だけではなく、現地スタッフの表情の変化を見ていると、確実に手ごたえはありました」と徳谷は言う。
A社の場合、「海外事業のてこ入れ」をするための事業戦略を見据えたうえで、必要な組織戦略を考える。そして、その組織戦略を実現するためには、人員の配置はどうすべきか、評価制度をどうすべきかといった人財戦略を考える。
エッグフォワードは戦略を提案するだけでは終わらない。最終的には、現場での研修やOJTなどのリアルな人財開発までも行う。戦略立案から実践するための組織創り、それを担う人財の開発まですべてを、一気通貫でできるのがエッグフォワードの強みだ。「これができるのは、エッグフォワードだけだと自負しています」(徳谷)
この価値を感じているクライアントの中には、人財のプロ、リクルートグループも含まれている。
「エッグフォワードは、リクルート特有の文化を誰よりも深く理解したうえで、どうすれば、人や組織が違う次元に進化できるかを考えてくれる。社内の管理職の顔と名前が一致するほど、深く知ったうえで、ゼロから作りあげたソリューションを提供してくれる。外部の人というより、徳谷さんはパートナー的な存在です」と、リクルート住まいカンパニー人事部マネジャーの大庭千佳氏は言う。
支援のテーマは、組織全体から、中途採用者の活躍、新卒の活躍、働き方改革、女性活躍、戦略策定力支援、店舗現場スタッフ育成など多岐にわたる。研修に至っては、ミドル以上を中心にのべ1000人近くが受講している。エッグフォワードとの数年来のつきあいを経て、同社は、近年、離職減少、従業員満足度の向上、アワードなども受賞し、日本を代表する「社員が活躍する会社」になった。
徳谷智史(とくや・さとし)エッグフォワード株式会社 代表取締役社長 
京都大学経済学部卒。新卒で戦略コンサルCDIに入社、同社の東南アジアオフィスを立ち上げ、代表を務めた後、エッグフォワードを設立。人財・組織開発のプロフェッショナルとして活動。業界トップ企業数百社向けに事業戦略から、人財・組織開発のワンストップコンサルティング・研修までを幅広く手がける

企業を変革することで人が輝く

現在はエッグフォワードで企業の変革を請け負う徳谷だが、起業する前は、戦略コンサルティングファームのコーポレイトディレクション(CDI)でコンサルタントを務めていた。
戦略コンサルは、責任を伴う仕事だ。一生懸命にやっていたら、クライアントの社長から、会社を継がないかと言われたこともある。優秀な先輩からプロフェッショナルの在り方を学び、刺激的でやりがいもあった。CDIの東南アジアの新規オフィス立ち上げも任せてもらえた。
一方で、戦略コンサルでは数カ月のプロジェクト期間が終われば、コンサルタントたちは去る。経営に提言はできるが、自ら事業を創るわけではなく、あくまでも「黒衣(くろご)」の存在だ。
このまま黒衣の存在でいいのか。そう悩む徳谷は、自分の中でひとつの使命を掲げていた。事業を改善・改革することはもちろん大事だが、それと同じくらい、そこにいる「人」を変える、という使命だ。
例えば、今の組織には、あなた自身が存在する必然性があるだろうか。自分が関わることで、他にない価値を社会に提供できているだろうか。この問いに「イエス」と自信を持って答えられる人が増えれば、人はもっと幸せになり、社会はもっと良くなる。
世の中にない価値を創り出し、人の可能性を広げるような「全く新しい機会」を、企業や社会全体に提供したい。戦略を立てるだけではなく、そこにいる人が、自分の新しい可能性を見いだし輝くところまでを見たい。そんな想いから、徳谷はCDIを退職し、エッグフォワードを立ち上げた。
「逆説的ですが、狭い視点で人材のみに注目すると、限られた機会しか提供できない。人財に関与していく以上、組織のあり方のみならず、事業そのものまで、幅広く、深く関わることで、新しい可能性を創り出していく、まさに変革していくのが我々の使命」と徳谷は言う。
エッグフォワードは一般的なコンサルティングのように数カ月だけの関与では終わらず、事業も組織も人財も一気通貫で支援する。エッグフォワード自体が実業として人財変革を一気通貫で手がけるからこそできることだ。
徳谷は企業などで講演する機会も多い Photo by Egg FORWARD

リピート率9割以上の驚異

設立当初は、困難もあった。企業内人財に変革を起こそうと提案に行っても、わかりやすい「モノ」があるわけではない。実績のない徳谷とは、ただの1社も取り合ってくれず、苦い思いをする期間が続いた。
転換点は、やってきた。人から紹介されてボランティア同然で受託した小さな研修。当時は、たった1つの研修でも、参加する人にとって「その後の職業人生が変わるターニングポイントにしたい」。クライアントに寄り添い、受講者特性や組織課題まで見据えた、かつてない人財育成機会を独自に企画・実施した。
結果的に、ある受講者が「これまでの人生で一番良い機会だった」と社内を説得してくれたことから、徐々に広がり始めた。「あまりかっこよいことは言えないのですが、想いをぶれさせずに、一つひとつの仕事を他社では絶対にできない価値で、やり『続ける』ことを肝に銘じています」(徳谷)
少しずつ引き合いは増え、今では大手総合商社、大手メーカー、戦略コンサルや監査法人などのプロフェッショナルファーム、急成長のベンチャーなど先進各社がクライアントに並ぶ。特筆すべきは、継続支援の割合が9割を超えている点だ。いかに、顧客からの満足度が高いかがわかる。
Photo by Daisuke Okamura

一人でも企業や組織は変わる

エッグフォワードに求められるのは、プロフェッショナルとして、企業組織を変革する使命感と実行力だ。「どんな大企業であっても、一人の存在で劇的に変革できることは、私自身が実証してきたこと。それを一緒に成し遂げていく仲間を求めています」(徳谷)
最近では、「世界唯一の人財開発カンパニー」として、より幅広い機会を社会に提供するべく、新事業にも取り組み始めている。AI等を活用した人の状態の可視化や組織の状態把握、科学的な育成機会提供、さらに領域も、BtoBのみならず、高校や、大学向けのプログラム支援などだ。
「一人で大企業を変革できる人であれば、新規事業もきっと立ち上げられるでしょう。エッグフォードとしては質の意味でも、量の意味でも影響範囲を広げていきたい。今が第2創業フェーズというか、まだ創業フェーズといってもいいくらいです」(徳谷)
徳谷のこれらの想いは、エッグフォワードという社名に込められている。エッグ(たまご)は可能性の象徴であり、その可能性を「前進させる(=フォワード)」、という意味だ。
人、組織、企業、そして社会に本当の変革を起こしていきたいという願いを込めて、エッグフォワードは「世界唯一の人財開発カンパニー」として前進し続けている。
(取材、文:久川桃子、工藤千秋 写真:岡村大輔)