事業は人なり。この金言は、いつの世もビジネスの本質を表している。人材戦略は、企業が成長し続けるために必要不可欠だ。そして、その戦略を高い水準で実現するためにサポートしてくれるのが、人材・組織を専門領域とするコンサルティング企業である。
コーン・フェリー・ヘイグループは、1943 年に設立され、49ヵ国に 86箇所のオフィスを構える人材・組織コンサルティングファームの世界的パイオニアだ。同社が長年にわたり蓄積してきた科学的な知見は、圧倒的な存在感を放っている。
今回は、シニア・クライアント・パートナーを務める滝波純一氏に、同社の強みや、その仕事の醍醐味について話を聞いた。

人材評価が、極めて難しい時代

──様々な企業のコンサルティングをする中で、「最近特に、こういった課題を抱える企業が多くなってきた」と感じる傾向はありますか?
滝波 多くの企業が人や組織に関する問題意識を持ち、さまざまな取り組みをされていますが、最近特に多くなったと感じるテーマは、人材のアセスメント(能力やポテンシャル、リーダーシップの可視化)です。
──その理由は、なぜでしょうか?
滝波 事業環境の変化や新たな事業の拡大、グローバル化といったテーマが、多くの企業で経営課題となっていることが背景にあると思います。
かつては、上司は部下の仕事ぶりを長年にわたり見ていることが多く、また自社においてどのような人材が活躍するかも経験則からわかっていたため、人材の能力やポテンシャルをある程度見極められました。
ところが、事業環境の変化に伴い人材に求められる要件が変わると、そうはいきません。またグローバル化やM&Aにより、観察する機会が限られた人材の能力やポテンシャルを評価する必要性もでてきます。
滝波純一 シニア・クライアント・パートナー
東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年ヘイ コンサルティング グループ(現、コーン・フェリー・ヘイグループ)にプリンシパルとして入社。2010年より同社コンサルティング部門責任者。2011年よりBusiness Solution / Client Relationship Development / Building Effective OrganizationプラクティスのNorth East Asiaヘッド。2016年よりKorn Ferry Hay Group APACのLife Sciences market leader を担う。
たとえば、デジタル化の流れを取り込んだ新規事業の推進には、誰がふさわしいのか。M&Aで会社の一員になった社員の中で、誰がキータレントなのか。各国の部長クラスの中で、誰がコーポレートの役員になれるポテンシャルがあるのか。このような問いに答えるには、経験則に基づく社内の評価だけでは、限界があります。
しかし、弊社ならばその経営課題を解決できます。なぜなら、独自に構築してきたアセスメント手法のノウハウと、蓄積してきた約300万人分ものアセスメントデータを持っているため、他社よりも遥かに高い精度で人材の評価を実現できるからです。

IBMを2年で再生させた、科学的なアプローチ

──「人のスキルを定量評価する」というのは、相当に難易度の高い業務領域かと思います。御社がそれを実現できる理由は?
滝波 弊社が用いているアセスメントの手法が、科学的な実証研究をベースにしているため、有効性や再現性が極めて高いことがその理由です。
──人のスキルを、科学的に分析する?
滝波 はい。この手法は、コーン・フェリー・ヘイグループ創業初期の頃のキーメンバーであるデイビッド・マクレランドという人物が、ベースとなる仕組みを作り上げました。元ハーバード大学の心理学者であり、コンピテンシー(職務や役割において、優れた行動や結果に結びつく個人の特性)という概念を初めて提唱した人物です。
マクレランドは、何かの分野において成功している人と、平均的な人や苦戦している人は何が違うのかを学術的に研究し、それを体系化しました。その研究内容をベースとして、コーン・フェリー・ヘイグループのアセスメント制度は構築されています。
──その手法によって、具体的にはどのような経営課題を解決してきましたか?
滝波 過去の事例をお話しすると、IBMが業績悪化から1990年代に倒産しかけたことがあり、事業を立て直すためナビスコからルイス・ガースナーという方がCEOとして就任しました。
それ以前のIBMは、メインフレームという大きなコンピューターを売ることが事業の主軸でしたが、ガースナーは「コンピューターではなく、ソリューションを売っていく」と大きく方向転換しました。
しかし、この改革は、簡単ではありませんでした。新しい戦略がいくら明確であっても、人は簡単に変われるわけではありません。過去に大きな成功を収めたIBMのような企業ではなおさらです。その課題を解決するために弊社が組織改革のお手伝いをさせていただきました。
具体的には、上手くいっているリーダーと平均的なリーダーあるいは苦戦しているリーダーでは、何が違うのかを分析していきました。そしてソリューションビジネスで成果を挙げるリーダーの特徴をモデル化し、一定以上の役職の方に、その求められる要件と現実のギャップを埋めるためのトレーニングを受けてもらったのです。
科学のメスを入れて必要なスキルを可視化することで、スピーディーに人材を再育成することができ、結果として、施策スタートの2年目くらいには業績をV字回復させました。

体系化された知識をベースに、高水準のサービスを提供する

──コンサルタント個々人のスキルに依存するのではなく、コンサルティング業務に必要なものを会社全体で“システム化”できている。それは相当に大きなアドバンテージですね。
滝波 そう思いますね。体系化された知識をベースとすることで、コンサルティング業務が属人化せず、クライアント企業に対して常に高い水準のサービスを提供することが可能になります。
私は元々、他社から転職してきたのですが、こうした方法論に初めて触れたとき素直に「すごいな、これは」と感じました。
例えば現在、世界で9000社以上の企業に、弊社が提供するアセスメントの仕組みをご利用いただいております。長年にわたり蓄積してきたナレッジやデータがベースとなり、それらを用いて質の高いサービスを提供できているからこそ、この結果が実現できているのだと思います。
──これから、御社でともに働くメンバーには、どのようなことを期待していますか?
滝波 まずは、弊社が構築してきた方法論を学び、コンサルタントとしてのスキルを磨いていってほしいです。長い歳月をかけて蓄積してきたノウハウを吸収することで、比較的短い期間でコンサルタントとしてのスキルを向上させられることは間違いありません。
加えて、クライアント企業の経営課題と向き合う中で、既存の方法論だけでは解決できない事象に直面することもあるでしょう。その際は、クライアントと一緒に解決策を考える過程で、新たな方法論を生み出してほしいとも思います。それが新たなスタンダードとなり、さらに多くのクライアントの課題を解決できるようになっていく。
そんな未来が実現することを、私自身すごく心待ちにしています。

コーン・フェリー・ヘイグループでは、組織と人材に関する以下のような包括的なサービスを提供しています。