【波頭亮】21世紀の「人類の叡智」こそがベーシックインカムだ

2017/1/15
NewsPicksで爆発的な反響を呼んだベーシックインカムについての論考を2016年に執筆した経営コンサルタントの波頭亮氏に、2016年の政治・経済状況と、近頃のBIをめぐるムーブメントを考察してもらった。

フィンランドでの導入の背景

──2016年、ベーシックインカムの連載をしていただき、かなりの大きな反響をいただきました。2017年はフィンランドの実証実験も進みますが、一番注目されているのはどういう点でしょうか?
ベーシックインカムをめぐる制度的な論点は2016年の連載で書いた通りで変わりはないのですが、AI(人工知能)やロボットが仕事を奪うという見方と相まって、より大きな注目を集めていますね。
フィンランドの実証実験は、社会保障の改革としてだけでなく、ポスト資本主義だったり、ポストネオリベラリズム(新自由主義)の社会のしくみを探る意味でも注目しています。
2000年代に入ってからリーマンショックまでの世界各国の「GDP成長率」と「国民負担率」を見てください。
一見して明らかなのは、北欧各国はどの国も他の世界の国々と比べても、成長率が高い点です(もう一つ目を引くのは、日本が世界の中でたった一国だけまったく成長していないことなのですが、今回は置いておきましょう)。
そしてこの時の北欧諸国の国民負担率は65%~75%と、こちらも世界で最も高くなっています。 ところが、2000年、2008年、2015年と北欧諸国の国民負担率は少しずつ下がってきています。
──それは、社会保障を縮小しているということですか?
そうではなく、国民所得や1人当たりGDPの伸びによってもたらされていたということですね。それはリーマンショックまでのGDPの伸びを見れば明らかです。
つまり、国民負担率を高くして、再分配や社会保障に当てたことが、最大の景気対策になっていたということです。