【石破茂】“シン・ゴジラ騒ぎ”を超え、本質的な議論を目指せ

2017/1/8

国民にかけている共通認識

年末年始にかけて「この1年をどう予測するか」を聞かれることは多いのですが、当たったためしはあまりありません。それでも、2016年を振り返ったうえで、これからについて考えてみたいと思います。
2016年は、「シン・ゴジラ」についてのコメントで、「石破がまた変なことを言っている」とテレビやネット、週刊誌などに大きく取り上げられることとなりました。
私が指摘したのは、「いくらゴジラが圧倒的な破壊力を有していても、あくまで天変地異的な現象であって、『国または国に準ずる組織による我が国に対する急迫不正の武力攻撃』ではないので、害獣駆除として災害派遣で対処するのが法的には妥当なはず」ということでした。
実をいうと、シン・ゴジラに関する取材を受けるごとに、話すのが嫌になってきてしまいました。要は、「ゴジラは国ではありません、以上!」ということなのですから。
しかし、これは日本国民の中に「自衛権とはなんなのか」「国際紛争とはなんなのか」という軍事や安全保障に対する共通認識がほとんどないということを示すものでもあったと思うのです。
その根底には、国民全体として先の大戦に対する総括ができていないということもあるのでしょう。なぜ太平洋戦争に突入し、壊滅的な負け方をしたのかについて、義務教育では教わりません。あまりにもトラウマが大きすぎて、「軍事から目をそらすことが平和なのだ」というマインドが醸成されてしまったのではないかと思います。
そもそも、先の大戦でも、日本は軍事を知らず、語らなかったから負けたとも言えます。朝日新聞をはじめとするマスコミも戦争をあおり、国民も日本の軍隊が世界一だと思ってしまった。日本は昔も今も、軍事に無知であり、空気によって動く国なのです。それがどれだけ危険なことか。反戦教育もいいのでしょうが、現実を直視することが重要です。