【上山信一×おときた駿】小池都政に「80点」を付ける理由

2017/1/6
2016年、東京都政は小池百合子都知事の誕生により大きく動き始めた。築地、東京五輪という2つの問題で組織委員会や都議会とバトルを繰り広げた小池都政。2017年は何が争点となるのか。7月の都議会選挙のポイントは何か。東京都顧問の上山信一氏と、都議会議員のおときた駿氏が2017年の展望を語る。

小池都政は80点

──これまでの小池都政の評価を聞かせてください。
おときた 最も評価できるのは、情報公開が進んだことです。
これまでは都政についてわからなかったことがたくさんありました。それも都民が知らなかっただけではなく、都議会議員ですらわからなかったことがたくさんあったわけです。
特に、オリンピック、パラリンピックの予算に関しては、2兆円だとか、3兆円だとか、森(喜朗)さんも舛添(要一)さんも勝手なことを言っていました。
都議の我々が「積算根拠を出してください」と言ってもまったく出てこず、「(五輪組織委員会は)民間組織なので、要請に応じる必要がない」などありえないことを言ったのです。
しかし、調査チームが「3兆円」という数字を積み上げて出したことで、都政にプレッシャーがかかり、情報公開が進みました。
そしてIOCと直接パイプができたという点でも、非常に大きな進展があったと考えています。
今後の道筋もある程度見えてきていると思うので、あとは、それを粛々と進めていけるかどうかだと思います。
おときた駿(おときた・しゅん)
東京都議会議員(北区選出・無所属)
1983年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで勤務。現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行うブロガー議員としても活躍している。
──100点満点で言うと何点ですか。
おときた 僕は80点以上つけてもいいと思っています。ただ豊洲市場の問題など、まだ未解決の課題もあります。
やはり100人を満足させることはできないので、今後の期待を込めての「80点」ですが、好スタートだと思います。
──上山さんはどうですか。
上山 私もキーワードは「情報公開」だと思います。
さらに都政改革をやってみてわかったことは「豊洲問題」と「オリンピック問題」の2つは同根で、かつ深刻だということです。
知事が変わって自治体が改革でやることといえば、普通は「行政改革」や「ビジョンの策定」などです。
しかし、今の都庁では、豊洲とオリンピックという、2つの大きな問題が最初にドカンと来て、それに忙殺された。しかも、どちらも小池知事は時間のない中で決断を迫られ、かつ問題は石原時代に作られていた。
この2つの問題についていろいろ調べていくうちに、東京都の異常さが具体的にわかってきます。
だいたい金額が異常ですよね。豊洲についても5884億円という数字が半端ないです。文字通りの桁違いです。
オリンピックの2兆、3兆も大きいですが、個別施設についても「海の森」が最初は69億円と言っていたのが一時は1,000億円以上に膨れ上がり、それから491億円になっていました。それが2016年9月。
事務方は「もうこれ以上は絶対に下がらない」と言っていたのですが、調査チームがIOCの専門家を呼んできてゴリゴリやったらまだまだ過剰設備だとわかり、最後は299億円にまで下がりました。
「都庁はいったい何を根拠に税金を使っているんだろう」と疑問が湧きます。チェックが入らないとどんどん盛られる。ところがちょっとチェックしたらどんどん減る。声の大きい人に合わせて数字を動かしているんじゃないかとか数字の増減が激しすぎて何も信用できない。
おときた そうですね。それにいまだにその数字の内訳を出さないわけですからね。

豊洲市場と五輪問題

──豊洲市場と五輪問題。それぞれの評価はどうですか。例えば橋下徹さんは五輪のほうは大成功、豊洲のほうは大失敗と言っています。
おときた 僕もオリンピックに関しては大成功だと思います。
豊洲市場も別に失敗ではないですよね。すべてが小池さんのせいでもないですし、むしろこれまでの都政の尻拭いをしている部分が多いわけです。
僕も豊洲市場は安全だと思いますが、だからといって一足飛びに安全宣言を出せるかと言ったら、それはやはり出せません。
今豊洲市場についていろんな負担が発生しているのは、そこで起きたエラーを処理しているだけです。それは致し方ないことだと思いますし、及第点を十分あげられると思っています。
上山 私は、どちらについても小池さんは難しい問題をたいへんうまくハンドリングされたと思います。そもそも豊洲市場は前知事の時に移転を決め、実際に建ててしまっていたわけです。
それにもかかわらず小池さんは選挙の最中に「とにかく立ち止まって考えよう」と言い出した。
そして実際に知事になって考え抜いて、「やっぱり豊洲への移転はいったん止めよう」と決めた。結果的には地下水の問題などが次々とわかって、あそこで止めたのは極めて正しい判断だった。
上山信一(うえやま・しんいち)
慶応義塾大学総合政策学部教授、東京都顧問
1957年大阪市生まれ。京都大学法学部、プリンストン大学大学院(公共経営学修士)。運輸省、マッキンゼー(共同経営者)、米ジョージタウン大学研究教授等を経て現職。2008年に橋下徹氏が府知事に就任すると、特別顧問として招へい。当時、赤字財政だった府政の再建に尽力し、大阪市との二重行政を解消するとして掲げた「大阪都構想」の政策立案にも大きく貢献した。
さらにその後はご承知の通り、安全問題が噴出して、想定外の連続です。そもそもなぜあんな難しい土地を買ったのか、なぜあんな構造の建物にしたのかという疑惑も出てきた。
ところが都庁の意思決定の過程がわからない。過去をどんどん掘っていっても、なかなか事情がわからない。よくあの状態で建物の完成までもっていけたなとすら思います。普通はどこかで何か問題が明るみになるはずでしょう。
歴代知事は全員ノーチェックだったのではないでしょうか。
そして、ついに小池さんの時代になって「やっぱり怪しい」と思って真剣に調べたら、まったくの砂上の楼閣だとわかった。原発問題とそっくり、怖い話です。

コストは3割下がる

上山 もちろん、都民や築地の業者の人たちが行政庁としての東京都庁に対して、「今さら何だよ」「約束と違う」と憤りをお感じになるのは当然のことです。小池さんも都庁を代表する現職知事としてお詫び申し上げるとおっしゃっている。
しかし一方では、小池さんは問題の深刻化を防いだ最大の功労者です。あそこで止めずに引っ越してしまっていたら、今頃どうなっていたでしょうか。
そういう意味で私は橋下氏の見方には同意しません。
豊洲問題はどうしたってすっきりしない。だが過去の間違いが今噴出しているわけです。だから仕方がない。そのなかで小池さんのこれまでのハンドリングはたいへん良かったと思います。
一方、オリンピックは2020年に最後に締めてみたときに総コストがいくらになるかがなかなか見えなかった。この不安が最大のイシューです。森さんが言われた2兆円、舛添さんが言われた3兆円もかかるなら都民は困る。
ところがこの総コストについて、2016年9月までは組織委員会もIOCものんびり構えていた。というか大会の実行主体ですから「必要なものには金は使う、とにかく成功させることが第一」という発想になる。
ちなみに組織委員会の収入はわずか5000億円です。赤字が出たらどうするかというと全部都庁にツケが回せる仕組みなのです。
それで都庁が組織委員会の予算をコントロールできるかというと別法人名なので権限がない。お願いベースで頼むしかない変な構造です。それで調査チームは9月末に「このままいくと3兆円かかってしまうかもしれない」という調査結果を内外に発信しました。
「30ビリオン」という数字が世界中に飛び交ったらすかさずIOCも入ってきて、今の計画とコストの中身を精査をしようとなったのです。それで2016年11月に国も交えた4者協議でコストは厳しくチェックすることになった。
こうして9月から3ヶ月経って組織委員会にも都庁にもコスト意識がかなり出てきた。IOCも2024年以降の誘致に響きかねないので必死で総コストの抑え込みに協力してくれた。
こうして2016年最後の3ヶ月で東京都として総コストを抑えるための最初のくさびが打ち込めたと思います。まあ、本来、権限がなく予算だけ負担させられる構造がおかしいわけですが、今さらそれを言ってもしょうがない。その中でのベストエフォートです。
都の3施設(オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナ、海の森水上競技場)の会場見直しについては、都庁が主体的に見直せるので、ギリギリのタイミングだけどやってみることにしました。
有明アリーナの2015年7月時点の完成イメージ(提供:東京都)
これらはもしも横浜アリーナや長沼など既存施設の活用に切り変えられたら、コストは大幅に減らせたでしょう。
しかし、今回は今の場所のままでのコストダウンとなった。それでもトータルで26パーセント、約410億円のコストが下がった。今後はどの施設についても今のプランの3割くらいはコストが下がるのではないでしょうか。
問題の本質は、大会運営費の大半は組織委員会が使途を決める。それで赤字が出ても、都庁はチェックできないという歪んだガバナンス構造にあります。
そういう意味では今回は東京都の“主権回復”というと少し過激に過ぎますが、コスト管理についてのホストシティとしての管理権限が再確認できたと思います。
目的はとにかく総コストの抑制とコントロールです。ですから今後の計画の見直しや入札、調達改革への波及効果も入れると、うまくすれば今回の効果は最終的には数千億円に及ぶと思います。

メディアに対する不満

──ボート・カヌー施設の宮城県・長沼への移転が実現しなかったことに対して批判があります。
上山 海の森はもう着工していました。
そんな中であえて可能性を探った。仕事でリスクをとるのは当たり前です。私はジャーナリストではない。都庁のために仕事をしている実務プロですので、そのような批判はまったく気になりません。
おときた 確かに有権者目線から見れば、がっかりした面はあるかと思います。それは政治家としては受け止めないといけないですし、「残念です」と言われたら申し訳ないと思います。
その一方で、上山さんがおっしゃったように「移転はできなかったけれどコストカットが成功し、成果もあった」というように総合的にジャッジをしていただくしかありません。
総合的に見れば僕は十分に合格点をあげていいと思います。長沼はボートキャンプ地という成果を勝ち取ったわけですから。
森さんが結局握りきれなかったものを小池さんはちゃんと確約までとって握ったわけですよね。それは小池さんにしかできないことですし、評価されるべきだと思います。
──100点満点ではないことを批判してもしょうがないということですか。
おときた 仕方のない面はあると思います
上山 豊洲も五輪ももともとが失敗しているプロジェクトです。その立て直しとなるとリスクを伴って当然です。つまり小池さんは、これまでの行政の前提となってきた完全主義、絶対間違わないという無謬主義を正面から否定した。
その前提の中でわれわれ調査チームはベストエフォートをしたわけです。100点満点なんか誰にも約束した覚えはないし、あれだけ筋の悪いものの見直しで完璧を要求するほうがおかしいと思っています。
小池さんが登場された2016年8月は東京オリンピックの4年前、ギリギリのタイミングです。施設の設計も終わっていた。
一般の方はともかくメディアの方々は、そういう現実を理解した上で評価をしてほしいと思います。海の森なんかもう着工し、途中でくい打ちの準備を止めてまで見直しをしていたわけですから。
日本の公共事業の歴史で、工事中のものを止めた例はほとんどありません。補償金も発生するとわかっていてその中を突き進んだ。小池さんはものすごい勇気と胆力を発揮され、そのうえで冷徹な現実判断をされたわけです。
そもそも、調査チームも知事も最初から「最大の目的は移転」なんて一言も言っていません。マスコミが勝手にそう言いだした。私たちは「総コスト」をコントロールしようとしただけです。
「3兆円リスク」をコントロールする手段の手始めが都が自らの権限内でできる3施設の見直しでした。そしてそのコストの抑制の手段の一つとして移転もありと言っただけです。
なぜ移転するかしないかだけを切り取って、責任を問われないといけないかまったく理解ができません。勝手にメディアが争点をずらして盛り上がっているだけです。
──メディアに対して不満に思っているのはどういった点ですか。
上山 都庁報道については過熱しているせいかメディアは憶測記事を書きすぎます。もしかしたら過去に2人知事を辞めさせたという、ある種の自負があるのかもしれないとすら思う。 
ややもすれば「僕らの力で今回もあいつらをやっちまえ」という感じがある。相手が知事でも議員でも何でもいいから血祭りにあげたい。深く考える前に、何でもいいから、「やっちまえ」と。盛り上げるときも「やっちまえ」だし、下ろすときも「やっちまえ」といった無責任さです。
今回は新聞に一番失望しました。ワイドショーが週刊誌を見て憶測報道をするのはまだしも新聞が会場変更について噂レベルのガセネタや質の悪いリークをそのままバンバン書いた。
新聞社自体の危機管理ができていないのを見て唖然です。某通信社もひどかった。私のインタビュー記事を上の方が捻じ曲げ、大幅に文調を変えて配信しようとした。
おときた 小池塾についても、「小池塾幹部によると……」といったように自分の発言が捏造(ねつぞう)されたまま書かれたこともありました。
とにかく正確な報道をしないので、豊洲市場問題も「知事が共産党と結託して風評をあおっている」ような書かれ方をしたこともあります。
小池知事はそんなことは一言も言っておらず、「科学的知見に基づいて安全性を確認したのちに判断する」としか言っていませんでした。
豊洲市場について危険なイメージをどんどん膨らませていっているのはメディアだと思いますし、オリンピックについても面白おかしく報道していますよね。
小池さんを劇場型と評していますが、何よりあおっているのは、あなた方メディアでもありますよねと言いたいです。

都議会と組織委員会

──先ほど、情報公開というキーワードが出ましたが、そこで露わになったものとしては、都議会と組織委員会の問題が大きいですか。
おときた 都議会は政策議論がまったくできていないわけです。一括答弁一括質問みたいなシステムの中で、どう考えても答えられない質問を投げかけてみたりだとか、それは嫌がらせでしかないのです。
都民感覚がまったくないですし、ヤジを飛ばしたりする人も多くひどい状態です。小池知事が昔、冒頭解散と言った時に「都議会が都民と有権者と乖離(かいり)しているのではないか」と言っていましたが、それはまったくその通りです。
彼らは有権者代表であるとか、選良であるという意識がまったくないことが、今回さまざまな行動を通じてようやく皆さんにわかっていただけたのではないかと思います。
──なぜ都議会には代表意識がないのでしょうか。
おときた やはり都議会って注目をされなかったですし、基礎自治体の地方議会でも国政でもない狭間にありました。そこで組織票を固めれば勝てるという選挙をずっとやってきたわけです。
しかも中選挙区制だから枠が決まっています。周囲に自分の支持者を固めておけば、勝てる選挙をずっとやってきた人の集まりが都議会議員なのです。
ですので、都民の期待していることに先回りするといった意識を一人ひとりがまったく持っておらず、支援者の方を向いて、支援者のほうにだけ政治をしていればよかったのです。
ただ、今回小池さんになって、それまでのやり方は通用しなくなってきました。いま、都議会はその変化についていけていない状況だと思います。
──上山さんはリポートでも分析していますが、あらためて組織委員会の問題はどこにあると考えますか。
上山 組織委員会というよりもオリンピック自体について、もともとのビジネスモデルと都市協約自体に根本的な欠陥があると思います。
先進国でオリンピックをやるときは、莫大なお金がかかります。安全や警備は自治体や警察の仕事だし、施設建設も公共の投資。それなのに、オリンピックは建前上、政治的中立を標榜する。
それで民間組織の組織委員会が仕切る。そこがチケット収入と、スポンサー料で開催費用を賄う、つまり民間でやっているという“嘘の建前”をとる。
でも実際のところは、施設建設も警備も輸送も税金をガンガン使うわけです。
そんな中で「主役はあくまで民間団体の組織委員会だ。都は金だけ出せ」と言われても、都民への説明に困ります。「税金を使う以上、あちこちで口を出させてもらう。そもそも無駄使いは困る」ということです。
おまけに政治的中立のはずの組織委員会のトップに元総理という大物政治家が座っているのも変です。おまけに組織委員会とつるんで「ウチは費用は負担しない」と豪語する国(政府)がマリオに扮した総理をリオの閉会式で出してくるのもご都合主義の極みでしょう。

森さんもつらいはず

上山 IOCは放送権収入に依存しているので、放送局や国際競技団体のわがままを抑える能力がない。各国の組織委員会を出先子会社のように位置付け、大会運営を仕切ろうとする。だったら彼らのわがままを抑えてもらわないと困る。
ところがIOCはそれをやりきれない。結果としてお金ばかりかかる。だから開催都市が減るわけです。こんなもの住民投票にかけたら普通は通らない。
しかし、とにかく東京大会はやると約束してしまった。そうなると内外の弱肉強食の世界の中でいろいろなステークホルダーを抑えこんでいく人がいる。それでIOCはドンとしての森さんの力に期待してしまう。
でも今回は権力はあくまで開催都市の知事にあるという現実を直視することになった。それでIOCと調査チームで連携してコストを下げる工夫が始まったわけです。
森さんの存在の良し悪しというより、オリンピックのビジネスモデル自体が綻んでいる。住民投票にかけたらNOといわれるのでひっきょう、途上国型のドンの調整に依存することになる。そして最近までは森さんが猪瀬さんと舛添さんを抑え込んで都庁にどんどんお金を出させていたわけです。
ところが、小池さんはそうはいかない。都民ファーストですから。しかも知事選挙でオリンピックの総コストの見直しを訴えて当選してきた。公約という重くて明らかな民意がある中で、森さんが抑え込めるものではなくなった。
だからIOCも参加して総コストの抑制をしようということになったわけです。でも先進国ではもうこんな金のかかるオリンピックは成り立たない。東京を最後にビジネスモデル自体を変えないといけません。
本当は都市間協約も結び直して「都知事が組織委員会の理事長も兼ねる」といった仕組みにした方がいい。本当は招致の際に住民投票にかけるべきだった。そして最終的には7000億円強でできるといった当時のリーダーたちやIOCの責任も追及されるべきでしょう。
つまり今の問題は、森さんや組織委員会というよりも時代遅れの五輪のビジネスモデル自体に由来するのです。
小池さんが戦ってきた五輪と豊洲は、今もまだ東京に残る邪悪な20世紀型の政治の枠組みとの闘いなんです。しかも時間がない。目の前には4年後の大会とか市場の引越しとかが迫っていて人質もとられている。
そんな現実の中で小池知事は、矛盾を引きずりながら、都民に説明しながら立て直しをやっていくしかないわけです。これはもう偉業というしかない。
大阪維新、大阪都構想も偉業でしたが、あれは橋下さんの7年目の総決算。そして陽性で明るかった。
ところが東京のこの2つは就任直後に背負った十字架で暗くて重い。それに小池さんはスマイルで必死で取り組んでいるわけです。
私は、小池さんもつらいけれども、森さんもものすごくつらいと思います。
せっかくゴッドファーザー的能力をもって、はまり役としてここまでやってこられた。それなのに、私たちが全然違うビジネスモデルを突きつけて急に「あんたは間違っている」と言いだした。
でも森さんは目の前の課題を新しいやり方で解くしかない。悩ましいでしょう。
──森さんを悪役に仕立てればいいという、そんな単純な問題ではないと。
上山 はい、ところがメディアは面白おかしく「ハブ(森)とマングース(小池)の戦い」みたいに仕立て上げています。
昔はメディアもわかっていて書いていたのですが、最近は大きな構造がわかっていなくて目先のことだけ書いています。勉強も取材も足りていない。
後編へつづく。
(構成:上田裕、バナー写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
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