M&A、事業再生・再編、インフラ関連の高い専門性を持ち、変化する企業の成長戦略の実現を支援するPwCアドバイザリー。その最大の特徴は、PwCグローバルネットワークとの連携にある。

数多くの会計士が活躍している同社の事業再生も、このネットワークをフルに活用しているのが最大の特徴とも言えよう。今回は会計士でもあり、ビジネスリカバリーサービス(BRS)部門に所属する木村 元紀氏と木下 智幸氏にPwCが持つネットワーク、そしてBRSの魅力について伺った。
野球選手からの転身
──まずはお二人のご経歴を教えてください。
木下 私はもともと野球選手なのです。米国の大学を卒業後に、日本で実業団野球チームに所属して何シーズンかをプレーし、引退後に監査法人に入所しました。
木下 智幸 ディールアドバイザリー部門 ディレクター
2000年5月、中央青山監査法人入所後 株式公開部にて、上場支援および監査業務を経験。2007年7月よりPwCアドバイザリー株式会社(現 合同会社PwCアドバイザリー合同会社)ディールアドバイザリー部門にて、M&A業務(主に国内外案件のリードアドバイザー、財務デューデリジェンス等)に従事。また、ディールアドバイザリー部門の韓国デスクのメンバーとして日韓M&A案件でのアドバイザーやセミナー講師等を担当。
──野球選手から監査法人ですか! 面白い転身ですが、なぜ全く違う分野に行かれたのでしょうか。
木下 実家が会社を経営しているので、自分も経営者としての目線、会社の仕組み、財務・税務面での知識や会社が成長するための方法の一つであるM&Aとは何かなどを知っておくべきだと思ったのです。そのためには数字に強くなる必要があり、また多くの事業を経験し知る必要があり、さらに人脈構築の重要性を感じ、資格を生かし監査法人で業務経験を積むことにいたしました。ちょうど、株式公開(IPO)の件数が伸びてきた2000年頃です。
監査法人では、監査法人の視点で株式公開準備会社への事前調査を通じ、当該会社のビジネスを理解し、株式公開のための課題を把握し、その課題を解決し、監査を受けることができる体制を構築し、監査業務のみでなく、株式公開につなげるために必要なさまざまな業務も提供しておりました。2007年には現PwCアドバイザリー合同会社に転籍。それからは、投資銀行機能と会計ファーム両方の強みを持ち合わせるような、会計と税務に強いM&Aのリードアドバイザーを目指しキャリアを積んできました。
木村 面白いエピソードですよね。私は学生時代、今後どういう業界に進むとしても会計リテラシーは必要だと思い、大学を卒業するタイミングで資格試験の勉強を始めました。商学部に在籍していたこともあり簿記や会計士の資格は身近なものだったのです。
試験合格後は監査法人に入り、会計監査と株式公開支援の両方の業務に携わりました。特に株式公開支援の仕事にやりがいを感じ、それをメイン業務にしたいと思っていたとき、知り合いのベンチャー企業の社長から「監査法人としてではなく、当社の中で株式公開準備業務をやってくれないか」と誘われたのです。このオファーを受ける形でそのベンチャー企業に移り、経営企画室で株式公開準備業務を担当することになりました。
ただ、タイミングが悪かった。ライブドアショックなどもあり新規の株式公開に逆風が吹き始めた時期だったので、その企業も上場準備を一旦白紙に戻すことにしたのです。
このタイミングで独立することも考えましたが、その前にもっと自分のできる業務の幅を広げたいと考え、2008年にPwCの門を叩きました。入社当初は、コーポレートファイナンスという部署で、M&AのソーシングやFA業務、財務DDなどに携わっていたのですが、2011年に事業再生部門に転籍しその後はずっと事業再生業務に携わっています。
木村 元紀 ディールアドバイザリー部門 シニアマネジャー
2004年12月に監査法人トーマツ入所後、監査業務およびIPO支援業務に従事。その後ベンチャー企業でのIPO準備業務を経て、2008年12月にPwCアドバイザリー株式会社(現 PwCアドバイザリー合同会社)に参画。M&Aのリードアドバイザリー、財務デューデリジェンス業務を経験した後、2011年より事業再生支援業務に従事。現在は、ディールアドバイザリー部門大阪支部(Deals West)リーダーとして、関西地区におけるディールアドバイザリー部門の立ち上げを担当。
期待されているのは会計・税務の強いアドバイザーとポストディールとしてのPMI業務
──お二人がPwCで働く理由、その魅力を教えてください。
木村 私がPwCアドバイザリーで働く理由は、クライアントと同じベクトルで一緒に頑張れるから。そこが一番のやりがいですね。
木下 そうですね。クライアントから期待されているのは、M&A中では会計・税務を中心としたアドバイザリー業務、ポストディールとしてはPMI(ポストマージャーインテグレーション)業務や連結対応支援です。M&Aの中で検出された課題や問題点を理解し買収交渉をまとめた後、それらをどのように解決していくのかがPMI業務です。クライアントの立場で一緒に考えて、同じ方向を向き同じ目的で進んでいく。時にはクライアントのために検討している案件にストップをかけるようなことを行うこともあります。PwCは、あくまでもクライアントの立場にたってというところを強く意識しています。
木村 それに、PwCは国内外に豊富なネットワークがあるので、財務・税務に限らず、例えば事業戦略やオペレーション、システム、人事や法務に至るまで、さまざまな経営課題に対応できます。
会計系ファームと表現されることが多いですが、財務・税務に限らずあらゆる経営課題に応えることができるこの豊富なネットワークこそ、PwCの最大の強みだと思います。
木下 事業再生とM&Aのどちらにも共通して求められるのは会計・税務やビジネスへの理解です。ただ、財務・税務の視点で分析をするだけではなく、それらをよりビジネスと絡ませて分析をしていくということがポイントとなります。会社に関わる数字はビジネスと密接に連携していますからね。
M&Aで会社を買収する場合、会社や事業がいくらの価値があるのかを見積る場合に参考とする資料の一つが事業計画です。売り手側から提出された事業計画につき、過去との連続性、売上や利益計画がどのような前提で作成されているのか、対象事業のマーケットをどのように予想し、自社をどのように成長させていくのかを紐解き、クライアントケースを作成し、対象会社・事業の価値を考え、最終的にはどのように交渉するのかを、今までの経験等をふまえ考えるのは面白いですね。
強力なネットワークを活用
──これまでに携わったプロジェクトの具体的な事例を教えてください。
木下 日本企業のA社が東南アジアにあるB社に出資したいという話がありました。そこでPwCが任された支援はバイサイドのFA(リードアドバイザリー業務)、財務・税務・ビジネス・人事・ITデューデリジェンス、事業計画策定およびバリュエーション業務です。
私が全ての窓口となり、日々クライアントから、「先方提案のストラクチャーはどうなのか?事業計画の根拠は?買収後の連結はどのように考えるのか?会計処理は?税制が変わりそうだけど大丈夫なのか、このビジネスは大きく成長し財務面でも安定すると言っているがどうなのか?等の質問がありました。勿論、クライアントが気にするであろう点を事前に確認しお伝えします。各チームが入手した情報等はFAチームとして収集し、それに対しFAとして各チームに確認した後、取りまとめ、FAとしての分析やコメントをまとめたディスカッションペーパーを作成し、クライアントに説明をする。日々連携をとり課題・問題点をつぶしていくことで、最終交渉での交渉点を限りなく少なくし、スムーズに交渉がまとまるようにプロジェクトをマネージしていきました。結果、最終交渉は数十分でまとまり、案件が成立しました。
──それを一挙に引き受けられるところが魅力ですね。
木下 これをやるためには、M&Aの業務であるFA、財務・税務・ビジネスデューデリジェンス、事業計画策定、バリュエーション、交渉支援、M&A関連文書作成等を一通り経験しておく必要があります。また、買収後の連結や監査等についても回答できればなお良いです。それらを経験するには時間がかかりますが、それらを国内・クロスボーダー案件ですべて経験できるのは当社の強みかなと思っています。
木村 私は、大手製造業の事業再生が印象に残っています。事業再生は特定の領域やソリューションのみを取り扱うわけではなく、まさに経営そのものなので、経営に関するありとあらゆるイシューに対して、改善策やソリューションを提供していく必要があります。
現場にどっぷりと入り込む事業再生チームはもちろんですが、TAXチームやM&Aチーム、オペレーション改善チーム、人事コンサルチーム、開発購買を取り扱う技術者チームなど、PwCのさまざまなネットワークを駆使して取り組みました。
このメーカーのときは、期間にして約4年間。世界中に子会社や工場がありましたから、PwCの海外現地法人オフィスとも連携し、延べ200人以上のPwCメンバーが関与したのではないかと思います。もちろん簡単な仕事ではありませんが、クライアントにとって必要なことをワンストップで提供していく、まさにPwCの強みを活かした、PwCならではのプロジェクトでした。
──クライアントの一員のような立場で、本質的な価値を提供されているのですね。
木村 クライアントは迷っていらっしゃるんですよね。経営者は当たり前ですけど経営課題に対していろんなことを考え、「判断」をしなければならないわけですが、本当にこれでいいのかなと迷う。再生局面では多岐にわたる経営課題が山のようにあるわけです。そういうときにPwCが論点を明確に整理し、選択オプションを示し、定量的・定性的な分析をもとに背中をひと押ししてあげられるような情報を提供する。あるいは、背中を押さずに引き止めるような情報を提供する。
それによって、自分の判断は間違っていないんだという「安心感」を提供するのが、すなわち付加価値かなと思います。
木下 案件をドライブするだけではなく、一度立ち止まって考えたり、時には別の方法をアドバイスすることも必要ですので、そういった意味ではクライアントの一員として一緒に考える。例えば、M&Aも会社を成長させる方法の一つですが、必ずしもM&Aだけが解決手段ではない場合もありますので、あくまでもクライアントに対し最適と考えられる方法を提案することですね。
──今後、どんな方と一緒に働きたいですか?
木村 何よりもポジティブであること。転職理由もそうですし、自分自身や周りの環境に対してもそう。再生局面では、やはり失敗できない緊張感がありますから、時としてストレス耐性が求められます。そういうときに、チームに対してもお客さんに対してもポジティブに向き合って、「大丈夫。きっとうまくいく。」という安心感を与えてあげられる、そんなマインドを持っている方といっしょに働きたいですね。
木下 確かに、打たれ強さとか、前向きでポジティブな姿勢や考え方は必要だと思います。勿論、知識や経験も大切ではありますが、それ以外にも、表情、話し方や立ち振る舞いでアドバイスにより一層説得力を与えることもできますし、聞く能力も必要です。スピード感も大切ですね。
木村 プロジェクトでは、クライアントの一員になるくらい深く会社に入り込みますので、長いもので10年近く続いているプロジェクトもあります。表面的でその場凌ぎ的なアドバイスではなく、本当にクライアントと一緒になって頑張りたい、大きな価値を提供したいと思う方に、ぜひお会いしたいと思っています。
※PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに223,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.comをご覧ください。