ワークス牧野正幸、世界基準の「スピード成長」を求める男

2017/2/4

ワークスを倒す会社が生まれる?

私が引退した後、会社がどうなるか、ということにはまったく興味がありません。
ワークスを倒すような会社が生まれる。
それが今、思い描けるベストなシナリオです──。

「努力」の幻想

誰もが「本田圭佑」になれるわけじゃない。
ビジネスだって同じです。
それなのに、努力すれば誰もが一流になれる、偉くなれるという幻想を振りまくのは欺瞞でしかない──。

そんなものは単なる思いつき

私はよくビジネスプランコンテストの審査員もしていましたが、その時に「そこは独自のノウハウなんで詳しく言えません」という応募者がいると、必ずこう言っています。
「悪いけど、パクられたら困るようなアイデアだったら、始めた瞬間にパクられて終わりだ。そんなものは単なる思いつきであって、君がやらなくても、誰かがやるだろう」──。

一生やらない仕事をアルバイトで

アルバイトをたくさんしました。アルバイト先の選び方も、ふつうの子とはちょっと違っていました。
一生やらないであろう仕事を、あえてやってみようと考えた。
漬物の訪問販売、夜間のファストフード店の清掃、工場でひたすら洗濯機を回すゴムベルトのバリ取り──。

20万円のオーダースーツ

就職してすぐに、20万円のオーダースーツを買いました。
これは藤本義一(作家、脚本家)の影響です。
彼が書いたエッセイの中に、男というのは月収の3倍くらいの服を着ると、その収入に見合うだけのレベルになれるという話があったのを読んだんです──。

石の上にも3年?

1年も経たないうちに辞める決心をしましたが、最大の難関は親父をどう説得するか。
案の定、「辞めたい」と言ったら激怒ですよ。いわゆる「石の上にも3年」というやつ。
自分の一生がかかっていますから、私も後ろには引けない。
「あんなところで3年働いても時間の無駄だ!」──。

「ああはなりたくない」と後輩

IBMの契約コンサルタントになってから、猛烈に働きました。
1年365日、休みなし。毎日、17、8時間は働いていたでしょう。
「牧野さんって、仕事に関してはすごいと思うけど、ああはなりたくないよね。もっと人間的な生活がしたい」
後輩にこう言われてショックを受けました。誰もついては来ませんし、リーダーシップも発揮できない。
そこで生活を切り替えました。仕事も人一倍やるけれど、遊びも人一倍やってやるぞ──。

日米キャリア観の違い

「君たちはどうしてそんな潰れそうな会社に行きたいんだ?」
1990年頃のアップルは決して業績は良くなく、むしろ、潰れかかっているというくらいの認識をされていた企業だったと思います。
学生たちはこう答えました。
「だって、アップルに行けばめちゃくちゃ優秀なやつらが揃っているし、世界を変えられるかもしれない。たとえ会社が潰れても、そこに最後の4年間いたというキャリアが残れば、こんなにいいことはない」
当時の日本では、そんな考え方をする若者はほとんどいませんでした──。

共同経営者を選ぶ

起業すると決めてから、私はそれまでに会った人物の中で優秀だと思う人間をリストアップし、「こいつはダメ」「これもダメ」と一人ひとり頭の中で消去していきながら、共同経営者を選びました。
最終的に残ったのが、石川と阿部です。
この二人とならば、どこにも穴のない経営ができる。
なおかつ、二人が失敗したとしても、自分がやるよりはマシだったと思える相手を選びました──。

ワークス本格始動

仮に日本のソフトウェア開発市場を8.5兆円と見積もり、本格的なERPパッケージが日本においてアメリカ並みに導入が進んだ場合、企業全体としては、年間で5兆円もの利益増につながる可能性がある。
これは思った以上に大きな仕事になるかもしれない。
1997年7月、ようやく3人の共同経営者が揃い、日本初の本格的ERPパッケージソフトを手がけるワークスアプリケーションズが本格始動しました──。

自信過剰、生意気な学生、求む

私たちが喉から手が出るほど欲しかったのは、「自分は一流企業に間違いなく入社できる」と思っているような、自信過剰な学生たちです。
成績優秀だけれどワークスに入ることなど興味がない。でもお金ももらえるし、優秀なやつらが集まるんだったらインターンシップに参加してそいつらと仲良くなれればいいや、と思うような生意気な学生こそ欲しい。
頭の回転が速く、しかも柔軟な思考力のある人材。それを見極めるために、参加した学生たちにはとびきり難しい課題を与えました──。

海外の優秀な人材は自己主張する

海外の優秀人材は自己主張も激しいし、「ハッタリじゃないか?」と思うようなことも平気で言ってきます。
昇級の要求もガンガン来ます。それも大幅に昇給しろ、と要求してくる。
それだけの能力を持っているなら、まずはそれを認めて受け止めないと。
日本人でも優秀な人間は同じようなことを思ってはいるけれど、言うべきじゃないという心理的なタガがはめられているから、言わないだけ──。

上場のメリットとデメリット

MBOに踏み切ったのには、理由があります。
上場にはメリットもありますが、デメリットもある。
デメリットの最たるものは経営者の「短期利益病」です。
日本企業の成長スピードが遅いのも、突き詰めればこの短期利益病のせいだと思っています──。

ワークスミルククラブ

「戻りたいのに戻れない」理由はなんなのか。
女性たちの話を聞いてみると、要するに自分は職場復帰したいのに夫があまりいい顔をしないとか、姑に子育て放棄しているみたいに言われちゃうとか、周りの反応を気にしている。
だったら、その反応を覆すだけのポジティブな理由を与えてあげればいいんじゃないかと思い、彼女たちにこう提案しました。
「産休から戻った社員に復帰ボーナスを支給するってのはどうだ?」──。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:曲沼美恵、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:今村 徹)
リーダーは「ポジティブシンカー」であれ
牧野正幸(ワークスアプリケーションズ代表)
  1. ワークス牧野正幸、世界基準の「スピード成長」を求める男
  2. やられたらやり返す
  3. 強くてタフで頭もいい、フィリップ・マーロウに憧れ
  4. 一生しない仕事、嫌いな仕事を選んでアルバイト
  5. 石の上にも3年? 実力で評価されないなら時間の無駄
  6. 365日1日18時間働き、後輩「ああはなりたくない」
  7. 会社が潰れても自分が成長してキャリアが残ればいい
  8. 世のため人のため。誰もやらないなら俺がやってやる
  9. このままでは日本のIT業界は全滅してしまう
  10. こいつでダメなら死んでもいいと思える人と仕事する
  11. 気が合うだけの友人を集めてもビジネスは成功しない
  12. 「寝ぼけるな」創業半年、資金繰りの危機を救った人
  13. 日本のベンチャーはトップは優秀だが社員が凡庸
  14. ベンチャーが組織化すると、一気にダメになる
  15. 勉強ができた人を、仕事ができる人に育てます
  16. 「努力すれば誰もが一流になれる」は幻想だ
  17. 「1日1時間勤務」で今の仕事をこなせるか?
  18. 優秀な人材を集めれば少人数で最大限の成果を出せる
  19. 年齢・経験は関係ない。新人でも社長に勝てる
  20. 「社内スパイ」に収集させている情報は…
  21. 日本は「短期利益病」に侵されている
  22. 日本企業は「無駄な仕事ばかりさせられる」
  23. 出戻り大歓迎。産休復帰ボーナス、社内託児所
  24. 知識がいらなくなる分、「人間の知恵」が求められる
  25. リーダーは「ポジティブシンカー」であれ