【馬場渉】日本企業よ、大企業イノベーションは岡田武史に学べ

2017/1/6

FC今治のビジョン

2016年Jリーグは世界の主要リーグとして初めて、リーグ戦の放映をインターネット主軸とする方針を打ち出した。動画のライツも歴史上初めてJリーグが保有し、デジタル時代の経営の自由度は飛躍的に高まる。
この出来事を日本経済新聞は朝刊1面トップで取り上げ、海外ではニューヨーク・タイムズ紙などが報じた。
アメリカではついには野球チームの共同出資で設立されたテレビ界の素人(MLB傘下のネット企業BAMテック)が、ESPN・ABCを持つ従来型テレビの巨人ディズニーの本業刷新のため、将来の過半買収も視野に入れたディズニーによる1000億円という巨額出資を成立させた。
Jリーグでは新年から公式映像の製作とライブ配信を行う株式会社Jリーグデジタルが設立され、日本を代表するプロスポーツビジネスの第2の創業が幕を開ける。
また、同じくサッカー界ではレアル・マドリードとクラブ世界一を争った鹿島アントラーズの世界市場での躍進は記憶に新しいが、クラブ単位でも大きな改革が地方から着実に動き始めている。
今年度からJFLへの昇格を果たし、2017年Jリーグ昇格をかけて戦うことになった愛媛のFC今治だ。
クラブオーナーである岡田武史さんはなぜ今治に情熱を注ぐのか? なぜ今治を選んだのか?
FC今治のビジョンはこうだ。
クラブリスタートから10年後となる2025年にはACL優勝を目指す。その時J1で常時優勝争いをするクラブとなる。その2025年には日本代表に5人以上輩出し代表チームの基礎を形成するクラブとなる。
「代表チームは失敗できない」「J1クラブは大きすぎて既存のモデルを壊すだけで一苦労」。大組織を変えるのではなくその外側に新しいモデルを作って、それを成長させ新たなスタンダードにする取り組みだ。
広く長く見方を変えれば、岡田さんは今も日本代表監督だ。
FC今治がACLを優勝しクラブワールドカップを戦い、FC今治の選手が半分近くを占める代表チームがワールドカップを争うという、信じがたい日がたったあと8年でやってくる。