この連載について
プロピッカーとNewsPicks編集部のメンバーを中心に、NewsPicksに集ったプロフェッショナルが日々ウオッチしている専門分野の「2017年」を大胆に予測。ビジネス、テクノロジー、政治経済、世界情勢、そしてイノベーションなど、各カテゴリで2017年のトレンドになりそうなムーブメントや知っておきたいビジネスのヒントを指し示す。
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ユーロという単一通貨を維持するためには少なくともギリシャをはじめとした最適通貨圏を形成するにあたって阻害要因の大きい国は切り離す必要があるでしょうし、またこれが仮にできたとしても現状で緊縮財政や金融引き締めをドイツが指向する限り加盟国の不満は募る方向に行かざるを得ないでしょう。
今年は欧州政治にとっては選挙年でそのすべてではないにせよEU、ユーロを維持するにあたって不都合な結果となる可能性が大いにあると思います。今年ですべてが決定づけられるというものではないでしょうが、体制の縮小か瓦解かに遅かれ早かれ向かわざるを得ないでしょう。
しかし物価もインフレ率もバラバラな国々が集まったEUでは欧州中央銀行がその辺りの役割を担いますが、当然声の大きい国の金融政策が採用されることになり、各国の経済状況に応じた細かい調整は難しくときに不合理な政策も押し付けられてしまいます。特にドイツの緊縮財政主義の押し付けによりデフレでも低インフレでも財政拡大が許されません。原理的に共通通貨建て国債では財政規律が重要ですからインフレ時の処方箋である緊縮財政をデフレだろうが低インフレだろうが続けなくてはなりません。これは凍える人に氷枕を与えるかような残酷な仕打ちであり、EUの構造上の致命的な欠陥です。
<追記>
わかりにくい文章だったので追記します。EU各国は国債発行権があるので財政拡大できそうですが、各国の中央銀行に通貨発行権がないので、日本のように国債を中央銀行(日銀)に買取らせることができません。このため原則税収から国債の金利を支払い償還しなければならないという意味で財政規律が重要で、同じ理由で財政拡大が困難でありデフレ・低インフレ対策が難しくなります。
この記事とほぼ同じタイミングでジョージア大学のカス・ムッデの「ポピュリズムを台頭させた欧州政治の構造的変化とはー難民危機、経済危機はトリガーにすぎない」(原題は"Europe's Populist Surge")という論文を読んでいて、そこでの「ポピュリズム」の定義が比較的現在の「ポピュリズム」と呼ばれる現象をうまく説明しているので参考までに引用しておく。
「社会を二つの同質的で敵対する集団、つまり、無垢な人々と政治的に腐敗したエリートへ分裂させるイデオロギーで、政治は民衆の意思を代弁するものでなければならないという立場を重視する」。
記事中のアレクサンドラ・ドゥープシェフェールの「国の主権や経済を奪われたように人々は感じている」という指摘は、現在の欧米の政治、経済、社会を考える上では非常に重要である。欧米を中心に現在起きている現象の本質は基本的には「国家主権の回復」であり、そこに「国民国家」的な発想を加味したものであると認識している。「国民国家」的な発想が強調されるからこそ、現在進行している多くの「ポピュリズム」は「右派ポピュリズム」の色彩が強いのではないかと考える。(「左派ポピュリズム」が台頭している例は、ギリシャのチプラス政権であろう)。