【福井健策】「ネットの時代」の著作権は、今後どうあるべきか

2017/1/5
編集部の大それた宿題は「2017大予測」。たじろいだり歳末の美酒に酔ったりしているうちに気づけばもう2017年だった。
どうせ予測というほどのことは出来ないので、「この流れはしばらく続くんじゃないか?」という2016年の回顧を込めた、極私的予想である。
キュレーションサイト問題
まずは、著作権に問題のあるサイトの閉鎖の波はしばらく続く。2016年の終盤はDeNAに端を発するキュレーションサイトの大量閉鎖が話題を独占した。
既存のブログなどのコピペやパクリによる粗製乱造があまりに多かった点について、筆者は「ネット社会の構造的な問題であり、まとめサイトにはとどまらない」と述べた。
YouTube上の動画数が約20億と推計されるなど、万人が発信者の時代を迎え、今やコンテンツは過剰である。その多くは無料または低廉で提供されており、一方で見るユーザー側の時間は有限なので、市場原理的に低価格化が進む。
見放題・聴き放題サービスの隆盛も、見方を変えればコンテンツの投げ売りともいえ、(狭義の)コンテンツ産業は売り上げ縮小を続けている。同時に、ライブ・シフトなどビジネスモデルの地殻変動も起きている。
低価格化の帰結として、コンテンツあたりにかけられる経費は下がる。問題となったまとめサイトではSEO対策もあり、1文字あたり1円を大幅に下回るような超低額で原稿を大量発注していたとされる。
結果、各所で粗製乱造が増え、技術的に容易になったコピペを駆使して短時間で仕上げる悪循環に陥る。
他方、「コピペチェックツール」なども発達したため、コピペ・リライトの発見は容易であり、しかも発見された「パクリ疑惑」はかっこうの炎上ネタで、拡大する炎上文化との相性が最悪に良い。炎上サイトは商売にもなるので、常習パクリと発見・炎上・閉鎖のフーガが当分は続くだろう。
この間、企業の知財対応による明暗はかなりハッキリ出た。DeNAなどは10サイトを全閉鎖したが、恐らく今後過去記事を復活するのは容易でないはずだ。
どの記事がどの程度コピペだったか今さら検証は困難で、検証コストより新たな執筆コストの方が安そうだからである。
中には法的に問題ない価値ある記事もあったはずだが、書いたライターの苦労と共にお蔵入りする可能性は高い。信頼していた情報ソースが突如消え、困るユーザーもいたことだろう。
グーグルの知財戦略
グーグルなどは同じ冒険的なビジネスでも戦略があった。例えばYouTubeは数年前まで海賊版アップロードの総本山のように言われていたが、グーグルは同社を買収する際200億円の訴訟対策費を積んでいる。
その後果たして巨額の損賠賠償訴訟をハリウッド側から起こされたが、大型裁判を戦い抜いて全面勝訴し、その間に動画投稿サイトとしての覇権を完全に確立した。
今やグーグル(アルファベット)の企業時価総額は50兆円を超え、世界1、2位の水準である。技術もだが、知財戦略でも何枚も上手だった成果だろう。日本企業は永年法務セクションを軽視し続けてきたが、そのツケを各所で払っているように見える。