【プロピッカー・保田隆明】地方の課題を解決し、日本に貢献する

2016/12/30
保田隆明(ほうだ・たかあき)
1974年生まれ。早稲田大学商学部卒業。リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券でM&A、資金調達アドバイザリーに従事。その後、起業しSNSサイト「トモモト」の運営、ネットエイジキャピタル執行役員などを歴任。小樽商科大学大学院准教授、昭和女子大学准教授を経て現職。著書に、『 実況LIVE 企業ファイナンス入門講座』など多数。
11月からプロピッカーとしてコメントしている保田隆明と申します。現在は神戸大学大学院経営学研究科の准教授を務めており、それまでは証券会社で勤務したほか、ビジネスパーソン向けSNSサイト「トモモト」を設立して起業、テレビやラジオなどで経済や金融分野の解説なども行ってきました。
今回、改めて私のこれまでのキャリアと、今後どのようなコメントをしていきたいのかなどについてお伝えできればと思います。
学生時代からの問題関心
私は団塊ジュニア世代で、80年代~90年代半ばを学生として過ごしました。バブルの影響で景気が良い時代と、そこから経済が悪化していく時代を経験していたことから、自然と「誰が何をすれば、日本の良い時代を取り戻せるのだろうか」という思いを抱くようになりました。
そんな中で、大学は商学部に進学。ビジネスに興味を持っていたことから、卒論では「どうすれば日本経済が復活するのか」「日本企業は何ができるのだろうか」という関心のもと、「終身雇用と年功序列」をテーマに卒論を書きました。もちろん、学部生でしたので、たいしたものではありません。ただ、この問題意識は今も変わらず持ち続けています。
そこでは、「終身雇用も年功序列も維持すべきではない。なぜなら、日本の60~70年代におけるレガシーでしかなく、そこに固執すべきではないからだ」と結論付けました。
こうした考え方は、周囲と比べると少し早かったように思います。就職活動になると、まだ多くの学生が終身雇用で大企業を良しとする時代でした。
私自身は、大企業への就職はリスクが高いと感じていました。「日本の大企業では、何歳くらいになったら面白い仕事ができるのだろうか」と考えると、40歳くらいまで待たなければいけなかったからです。新卒入社してから約20年ですよね。「さすがにそれは長すぎる」と思い、外資系企業であるリーマン・ブラザーズを選びました。
その当時、起業は考えていませんでした。仕事で知り合う周囲のベンチャー起業家は、「子供の頃から起業を考えていた」という人ばかりだったからです。そういう方々とはタイプが違うので、ずっとサラリーマンかなと思っていたくらいです。
その後、UBS証券に転職してからも、将来は日本企業の財務戦略を担う仕事に取り組みたいと思っていました。どこかの企業でCFOをやるイメージです。そこで「日本経済復活の手助けができればいいな」と考えていたのです。
日本で3番目のSNSを立ち上げる
ただ、2000年以降に大企業の方々と仕事をするなかで、「大企業は思考停止に陥っているな」と感じるようになりました。「リストラをしたいけれどどうすれば良いか分からない。新規事業を立ち上げたいけれどよくわからない」、そんなことばかりを話していたからです。その中で、この状況を打破するためには「ベンチャーしかないのではないか」と思うようになったのです。
また個人としては、日々働く中で、自分の会社の仕事や業界しか知らないため、「世界が狭いな」と感じるようになっていました。それは非常にもったいないことで、変化の激しい時代においては危険なことです。
今のようにSNSが発達していなかったので、それぞれの専門性を共有する場もありませんでした。そこで、「場所があれば、何か創発につながるのに」という問題意識が生まれたのです。
そう思っていたころ、ちょうどアメリカでSNSサービスが生まれ始めました。そこで、「これだ。私も日本でやってみよう」と思い立ち、9か月間の事業構想を経て、起業することになったのです。
思いがけず起業することになったわけですが、迷いはありませんでした。今の立場を失うだけで1億円の借金を抱えるわけでもない。失敗したら、また元の仕事をすればいい。それに、ずっと「社会のために何か役立つことをした方が、自分もハッピーになる」という思いがあったからです。
そこで2004年、29歳の時に立ち上げたのが、ビジネスパーソン向けSNSサイト「トモモト」です。これは、様々な職種の人がネット上で知見を共有するコミュニティ。ここから、日本の閉塞した状況を打破したいなという思いで始め、リアルの交流イベントも実施しました。
ユーザーの年齢は25~39歳が8割で、男女比は2対1ほど。NewsPicksをみていると、トモモトとの近さを感じることもあります。同年に生まれたmixi、GREEに次ぐ、日本で3番目のSNSサイトでした。
ただ、色々なビジネスパーソンどうしをつなぐことができたサービスではありましたが、他のSNSと比較すると、国内で圧倒的にスケールさせることは難しいなと感じました。
そこで、事業を別の会社に譲渡する選択をしました。結果的には、撤退の戦略を取ることになったのですが、起業の経験やそこで生まれた人とのつながりは、今でもとても活きています。
研究と実務の架け橋になる
その後は、ベンチャー投資ファンドの執行役員や財務戦略アドバイザーをしながら、専門を生かす道や新たな起業なども考えていましたが、まずはもう一度学び直そうということで、大学院に入ることにしました。
いざ研究を始めてわかったことがあります。それは、経済学には、アカデミック側が十分に世の中に伝えきれていないだけで、面白い研究がたくさんあるのです。
企業は、日々いろんな経営戦略や財務戦略を立てていますが、それについて何に依拠しているかはよく分かっていないことも多い。それに対して、研究ではそれを考える際に役立ち、使える理論があります。この架け橋になる存在が、実務の側には非常に少なかったんです。
そこで、「これに取り組むことは自分の存在価値になり得るし、世の中のためにもなるな」と思ったことが、大学教員の道を歩む一つのきっかけになりました。
小樽商科大学で教員のキャリアをスタートしたことは、貴重な経験になりました。それまで、私は東京やニューヨークでしか働いたことはありませんでしたが、経済を考える上では地方の問題を考える必要があったからです。
実は、「これからのキャリアを考えたとき、地方に身を置くことは重要だろう」という思いがあり、半ば戦略的に小樽を選んだのです。
いかに「地方」を活性化させるか
小樽に行ったことで、地方への関心が高まるとともに、端的に言えば「地方はもったいない」と感じるようになりました。例えば、現在の小樽市は人口12万人ほどで、年間約800万人の観光客が訪れている地方都市ですが、十分に潜在力を発揮できているわけではありません。
いいモノ、いい場所はある。でも十分に知られていない。経済はヒト・モノ・カネが循環することで回るわけですが、やはり現状は東京一極集中です。そのためには地方に対してアテンションを向けさせる必要がありますが、そのためには地方をもっと楽しくプロデュースしなければいけないのです。
こうした経験もあり、今の私の一番の課題意識は「地方」にあります。特にふるさと納税に関心を持っています。それは地方そのものの魅力に気づいてもらうツールの一つだからです。もちろん、制度として完全ではありませんが、私たちが地方に目を向けるきっかけにはなります。
ふるさと納税の興味深い事例としては軽井沢町などが挙げられます。軽井沢では、ふるさと納税の使い道を奨学金にも充てていて、世界中から優秀な留学生を集めている「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」などの支援ができます。これは教育によって地域を、そしてひいては日本を活性化する取り組みになっていると思います。
こうした取り組みをさらに拡大して、街全体で教育特区のようなモデルを作ることも、地方の一つの可能性かもしれません。
ただ、その一方でやはり地方は難しいと感じることも事実です。地方創生や地域活性化など色んな言い方はありますが、そもそも「これが絶対に効く」という処方箋はありません。また、やはり先ほどのヒト・モノ・カネに加えて情報も東京に一極集中している。
さらに、夕張市のような状況になれば話は別ですが、日本の地方自治体は、状況が悪いながらもそこまで追い込まれているわけでもありません。地方の側にも変化や改革を受け入れる素地が必要です。
そうしたなかで、一つ面白い事例としては、海外の研究であるEntrepreneurship & Regional Developmentが挙げられます。アントレプレナーと地域開発を一つの領域として研究するようになってきており、日本でも同じことが必要だと思っています。
今まで地方創生はどうしても行政主導や、町おこしが得意なカリスマ的な伝道師などに焦点が当てられがちでしたが、やはり経済を回していくことが必要です。地域の問題を、ベンチャー企業の力で解決していく取り組みもあるべきです。こうした問題について、私も模索しているところです。
付加価値のあるコメントをしたい
プロピッカーとしましては、解説型のコメントよりも、付加価値のあるコメントができればいいなと思っています。なかなか難しいのですが、一つのニュースに対して「こうした情報もある」「これを読むと言い」といった形でできるといいですね。
また大学の教員ということもあり、皆さんにもっと教育に関して目を向けてもらえるようなコメントができればと思います。
日本は、小学校から大学まで、あまりにも社会が教育を放置しています。よく企業から「大学で教育をもっとしてくれ」と言われますが、大学からだと遅いんですよね。人材育成が日本の国力につながるはずです。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。