【神田昌典】次の時代を作るのは、30代と40代

2017/1/2
大企業、スタートアップ、政府、地方自治体、NPOなど、日本の至るところで、変革が求められている。そんな時代に、変革リーダーとなるのはどんな人か。神田昌典氏は「年齢としては35歳から48歳。そして後ろ盾になる年配者がいるはず」と答える。では今、この世代の人たちは、リーダーとしてどう変革を巻き起こしていくべきなのか。日本のトップマーケターである神田昌典氏によるメッセージをお届けする。
*本記事は、NewsPicksイベント「30代のためのイノベーション講座(神田昌典)」の内容を再構成したものです。
70年周期の根拠
今日は「30代のためのイノベーション講座」というタイトルのついたセミナーですので、歴史のサイクルを踏まえながらイノベーションの起こし方について説明をしていければと思います。
私は、これまでずっと経営コンサルタント、マーケターとしてキャリアを歩んできましたが、本当に数多くの経営者の方と話をしてきました。
1998年から2004年にかけては「とにかく経営者の仕事は会社の時価総額と利益を上げることだ」と、MBAで教えてもらったことをそのままコンサルティングの現場で言っていました。
ただ、2004年辺りから、「これはおかしい」と考え始めました。
2004年に何が起こったか、皆さん覚えていますか?
2004年というと、ちょうど堀江貴文さんが球団の買収を仕掛けていた頃です。あの時堀江さんは「拝金主義」と揶揄されていました。
また、当時ファンドマネージャーの大竹愼一先生という方が「私は投資を70年周期で見ている」とおっしゃっていました。
私は「なんで70年なのかな?」と思いましたが、それには根拠がありました。
実際に『ジェネレーションズ』というアメリカで刊行された本はアメリカのピューリタンの16世代を全部分析しており「4世代ごとに、アメリカの歴史は見事に繰り返している」と記載しているのです。
この本はとても分厚いのですが、アル・ゴア副大統領がその内容に感動して、議会のみんなに配ったという逸話もあります。
私はマーケターですので、時代予測をするためにも「日本でもこのように70年周期で時代を分析したらどうなるだろうか?」と考えてみました。
そうしたら何がわかったでしょうか。日本でも同様に時代の移り変わりが非常に予測しやすいという事実に気がつきました。
新時代のヒーロー
最初の節目は1945年です。
お分かりのように当時の日本は敗戦に打ちひしがれていました。日本全体、1千万人が飢えると言われていた時代です。
この1945年が歴史サイクルの始まりと考えれば、70年後の2015年が新しい時代の始まりであることが予測できました。
この歴史サイクルは非常に面白いですが、時代が変わる時にはどうなるかというと、一番トップにいた人が引き摺り下ろされます。
例えば戦前は子どもの憧れが陸軍大将のような軍のトップだったわけですが、戦後は「戦犯だ!」と言われてしまうわけです。
私はこれに気がついた時、正直背筋が凍る思いがしました。なぜなら、2004年当時言われていた「拝金主義」とは時代の転換点において、一番の戦犯にされかねないと思ったからです。
ですので、私は考えを改め「これからは利益追求だけではなく、より社会性のあるマーケティングが主流になる」と発信のスタンスを変えました。
また、この70年間のサイクルについてもう少し掘り下げてみましょう。1945年、日本は焼け野原になりましたが、そこを立て直したのは30代から40代の人たちです。
こうした人たちは、ある程度仕事で経験を積んでいます。「これから社会で頑張るぞ。活躍するぞ」という意欲もあり、経験もあります。
もちろん、ほとんどの人は今日を生きるために精いっぱいだった人です。ただ、ほんの一部のビジョナリーな人たちが夢を抱き始めて、行動に移していました。
その人たちが新たに時代を作ることでヒーローになっていったわけです。
「創造者」と「実務者」と「管理者」
もう少し掘り下げてみましょう。
1945年の時には、井植歳男さん、井深大さん、本田宗一郎さん、こういう方々が30代の半ばから40代で、文字通り日本が世界に誇るような企業を起こしました。私は「創造者」と呼んでいます。
次に70年周期の70年を4分割してみます。だいたい17~18年になりますよね。
1945年に17、18を足すと1963~1964年になります。1964年は東京オリンピックの年です。
この時、井深さん世代の人たちは、50代半ばから60代になります。
このようなイノベーターは「よし、俺の時代だ」と言って、権力にしがみつくのではなく、次の世代にバトンタッチをしようとします。
バトンタッチされた人は、その時の30代半ばから40代になります。
具体的には盛田昭夫さん、中内功さん、伊藤雅俊さん、和田一夫さんといった方ですが、こうした流通業に携わる人たちがヒーローになりました。私は「実務者」と呼んでいます。
「実務者」世代の代表格が、ソニー創業者のひとりである盛田昭夫と言える(写真:Fujifotos/アフロ)
なぜかというと、モノはすでに作られています。次に必要なのは、広げることだからです。
よって当時は流通業がものすごく広まり、この流通業に携わった人たちが時代のヒーローになるということになります。
それから、さらに17年から18年が経つと今度は1980年代に突入します。
その時は、モノはあるし、広がってもいますよね。次に何をすればいいかというと、モノをよくするしかないわけです。つまり付加価値を付けるところですね。
そこで、どういう人たちが活躍するかというと、大前研一さんや、堀紘一さんのような経営コンサルタント、そしてよりいい生活、よりおいしい生活を作り出した糸井重里さんのような方々が活躍することになります。私は「管理者と呼んでいます。
このように、時代がバトンタッチされていきました。1980年代は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代です。
孫正義という「収穫者」
それから、さらに17年、18年経つと、1998年になります。そうすると、次はどういう人たちが活躍するでしょうか。すでにモノは作られています、広がっています、よくなっています。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われて、そして、「日本、向かう所敵なし」と思われた時に、一体誰にバトンを渡すのか。当時、30代半ばから40代の方になります。
しかし、彼らはやることがない。やることといえば、壊すしかないんです。なぜ壊すのか。既得権益層が壁厚く、上部に居座っているからです。
つまり、高度成長期を牽引してきた価値観を壊していかないと次には向かえないということです。
高度成長期、素晴らしいです。でも、100パーセント素晴らしいでしょうか。違いますよね。
考えてみれば、やっぱり「拝金主義」はまずかったでしょう。
また、「サスティナブルな経済を作らないで、拡張、拡張、拡張でいいんだろうか?」といった反省もあります。
その中で起こってきたのが、当時普及してきたインターネットビジネスです。
ヒエラルキーを破壊することによって、次の新しい時代の価値観を作り始めた人たちがいます。
私は「収穫者」と呼んでいますが、具体的には孫正義さん、三木谷浩史さん、熊谷正寿さんなどです。
1983年当時の若き日の孫正義。「収穫者」の代表例と言える(写真:Fujifotos/アフロ)
このように時代のサイクルが、作るところから、広げ、そして、良くして、壊すといった形で回っていきました。
そして、今度は堀江貴文さん、藤田晋さんに代表されるように、新しい時代の価値観を作り込むというサイクルで巡っていきます。
あたかも、これはまるで四季のように回っているというのが私の考え方です。
主役は団塊ジュニア
実は、私は2004年の段階から「2015年以降に憲法改正がある」と言っていました。
なぜかというと「それだけの大きな政体変更がない限りにおいては、次の時代は作れないだろう」と考えていたからです。
もう一つは「2015年ごろから次から次へと新しいテクノロジーが出てくる。我々が想像だにしないようなテクノロジーで世の中は繁栄する」とも考えていました。
実際に2016年から、もうグーグルの翻訳はユーロネットワークに繋がれ、皆さんもご存じのように素晴らしいクオリティになりました。
人工知能の盛り上がりもすごいですよね。今年の1月は人工知能について話題にする人なんてほんの一部しかいませんでしたが、たった半年も経たないうちに人工知能が我々の主要な関心事項になりました。
このように、様々な技術開発が信じられないスピードで進むのが、これからの5年間になります。
ではそうなると、今度は次の時代を作るのは、一体誰かというと、30代から40代の団塊ジュニアと言われている人たちなわけです。
ですので、このところIPOが非常に多く、それも30代から40代の経営者によって成し遂げられているのは、それを意味します。
今後はもっとそういった技術を中核としたベンチャー企業が必要になってくると思います。
逆に言うと、技術を中核にしないようなベンチャーは、本当に今後残っていけるかどうかは疑問になります。
このように、大きな時代サイクルで考えると、「次の時代がどんなことをやれば、ヒーローになっていくか?」ということがよく分かるんですね。
ですので、30代半ばから40代の人たちに、私が期待をするのはそういうことなんです。
そして、そういう人たちが能力を発揮できていない状況があるとすれば、私はその道を開いていきたいというのが願いです。
世代を軸とした時代潮流の見方は、実を言うとその前の70年周期を見ても同じです。
西南戦争が終わった時をみても、明治維新の最終着地点から新しい時代が始まりました。
これも同じように、作る人、広げる人、そして、より良くする人、そして最後に新しい時代を作る人というふうに循環していきました。
ですので、30代から40代の人は覚悟してください。やるべきことがいっぱいあるのですから。
(構成:上田裕、撮影:遠藤素子)
神田昌典(かんだ・まさのり)
日本最大級の読書会「リード・フォー・アクション」代表理事
株式会社アルマリエイションズ代表取締役
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。外務省経済局、米国ワールプール社の日本代表を歴任後、コンサルティング会社を設立。『GQ JAPAN』(2007年11月号)では、「日本のトップマーケター」に選出。
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