【高宮慎一】残されたネットのフロンティアは「ファンビジネス」

2016/12/27
有望な3つのテーマ
ここ数年は、PC、ガラケーからスマホへのデバイスシフトという10年に1度級のゴールドラッシュに沸いていた。
しかも、デバイスが変わっても、ユーザーの根源的なニーズは変わらないので、PCやガラケーでヒットしたサービスをスマホに最適化すれば良いという、わかりやすいテーマだった。しかしながら、もはやゲームやECなどの大きな所はとられてしまった。
2017年は、誰もが殺到するゴールドラッシュはおおむね収束し、代わりに複数テーマが併走すると予想する。本稿では有望な3つのテーマを紹介したい。
ファンビジネス
ネットで完結するモデルで残されたフロンティアは「ファンビジネス」だと考えている。
ユーザーの母数は小さいが、熱狂的なユーザーがいて、ユーザー1人当たりの課金額が大きくなるというモデルだ。
例えば、リアルだと、商業ベースでも成功を収めているサッカーのプレミアリーグがある。プレミアのチームは、まずはファンをロイヤルティの高いコミュニティ化する。
試合の平均観客動員率は驚異の95%を誇る。そのファンコミュニティをプラットフォームとして、試合の興行収入、放映権、スポンサー収入、物販など複数のマネタイズ手段で収益化している。
2016年にはリーグ全体20チームで売り上げ5181億円に達すると見込まれている(対してJリーグは2015年J1~J3までの52チーム合計で937億円)。ロイヤルティが高いファンベースに、様々なマネタイズモデルを複層的に積み重ね、ファン1人当たりの売り上げを増やしているのだ。
ネットビジネスの定石は、リアルに既にある習慣をネットに置き換えることだ。その点、プレミアのようなファンビジネスのモデルのネットへの置き換えは、ゼロから新しい習慣を作るより難易度も低い。
また、ネットにおける課金手法のイノベーションも著しく、アイテム課金、月額などのサブスクリプション、投げ銭(「おひねり」のような形でユーザーが払いたい分だけお金を払う)など様々な手法が生み出されている。
その中で、注目のネットサービスはShowroomだ。アイドルが動画をライブ配信し、ファンとチャットでコミュニケーションし、一方でファンはギフトアイテムを投げ銭的にアイドルに贈るというアイドルコミュニティサービスだ。
ここで特筆すべきは2つ。1点目はファンのロイヤルティを高め、その結果として課金意欲を上げていく仕組みだ。ファンはアイドルとチャットし、ギフトアイテムを贈ることで直接コミュニケーションが取れ、それに応じてファンランキングが上がっていき、アイドルに覚えてもらえる。 “偶像対個人”でなく“個人対個人”としてコミュニケーションを体験できるようになるのだ。