【求人掲載】2000万人の非正規を正規へ。志が社会を変える

2016/12/22
日本では労働人口の40%、約2000万人が非正規雇用として働いている。低賃金、不安定などさまざまなデメリットがあり、非正規雇用は社会問題になりつつある。そんな中、UTグループは創業以来一貫して、ほぼ全てのワーカーを正社員として雇用している。5年後には、全社員の給与20%アップを掲げるなど、非正規の概念や地位を変えようとしているのだ。その取り組みが社会に与える影響や価値、UTグループで働く意義について、同社上席執行役員の小野雅人氏と桑原壽己氏に語ってもらった。
──御社は製造アウトソーシング業界で初となる、ワーカーの正社員雇用を行い続けています。その取り組みは、社会にどのような影響を与えていると感じますか。
小野 大手メーカーは、製造ワーカーを正社員として雇うことがほとんどありません。そのため、仕方なく非正規で働いているワーカーがたくさんいます。
また派遣会社も、契約期間が3カ月間であれば、ワーカーを雇用するのは3カ月間だけ。期間が延びれば契約は延長、だけど契約解除になれば派遣会社との契約も終了……となるのが一般的です。
けれど弊社は、派遣期間や契約延長の有無にかかわらず、ほぼ全てのワーカーを正社員として無期雇用しています。
──中長期的に安定して働ける環境を作っているのですね。
桑原 そうです。UTグループが行っているのは、世にいう「働き方革命」です。非正規労働者の地位を上げ、その概念も変えていきます。
弊社がトリガーとなって、多様な働き方を実現していくことで、想像できない方向にキャリアが開くこともあるはず。非正規雇用者は日本に約2000万人いますが、その半分でも変わったらとんでもないことになる。まさに世界が変わるということです。
小野 5年後にUTグループの正社員は約3万人に拡大している予定なのですが(※現在は1万1512名/2016年12月現在)、その全ての給料を20%上げる取り組みを始めています。
不安定な非正規社員の増加が社会問題になっている中、すごく有意義なことだと思いますね。
──執行役員として活躍されている小野さんは、もともと契約社員として工場でオペレーターをしていたそうですね。どのような経緯で現在のポジションに就任したのでしょう。
小野 僕は若いころ、定職に就かず、アルバイトをしてお金をため、冬になると雪山へ行って趣味のスノーボードをする……という生活をしていたんです。22歳のとき、地元の横浜で求人誌を見ていたら、新潟の半導体工場で働くオペレーターをUTグループが募集していて。
月給20万円以上、社宅あり、月の半分が休みという条件を見て、「思う存分スノボーができる!」とその場で応募。2005年8月から働くようになりました。不純な動機なんですよ。
桑原 めちゃくちゃいい条件じゃないですか(笑)。
小野 それで、半年で辞めて帰るつもりだったんですけど、たくさん仲間ができて居心地が良くなり、もうちょっと働きたいと思うようになったんです。
1年後には現場リーダーに任命されて、7~8人の部下が付くように。オペレーターのときは指示されて動いていたのが、「チームとしていかに生産性を上げるか」を考えるようになって、それがやりがいや楽しさになりましたね。
──責任あるポジションを任されるようになって、仕事への意識が変わっていった。
小野 そうですね。僕は高校中退なので、コンプレックスがあったんです。社会的にドロップアウトした状況なのに、採用してもらっただけでなく、リーダーを任されて、部下を持たせてもらえたことがモチベーションにつながりました。
桑原 それから何年か経ち、小野さんが執行役員になったのは、エントリー制度がきっかけですよね?
小野 そうです。役員にエントリーできる「エントリー制度」が始まったんです。僕は当時、FCマネージャーという管理職でした。全国でも1~2番に実績を出していたので、会社は「小野は役員にチャレンジしてくるだろう」と待っていたようですが、僕は2年連続でエントリーしませんでした。
なぜなら、FCマネージャーとしてやり残したことがあったのと、正直この制度がうそくさく感じたから(笑)。
──それは、どの辺りがでしょうか?
小野 会社が社員のモチベーションを上げるために作った制度にしか思えなかったんですよね。僕はそんなのに頼らなくても、結果を出して上に行ってやる、と息巻いていました。
けれどエントリー事務局から連絡があり、なぜ役員エントリーしないのかと聞かれ、正直に「うそくさいから」と言ったら上司に怒られて。
「結果を出した人が上に行けるカルチャーを目指して、本人の成長が会社の成長にもつながるよう、ポリシーを持って始めた制度だ」と説明されて、じゃあ役員エントリーをしてみようと。結果は合格で、執行役員に就任できたんです。
──一方、桑原さんは、中途でUTグループに入社されています。どのような経歴で現在に至るのでしょうか。
桑原 僕が最初に入社したのはコンサルティング会社です。そこで7年ほど働いた後、楽天証券で4年、グリーで4年ほど働いてUTグループに入社しました。
UTグループを選んだきっかけですが、僕は博士課程までいったので、社会人になったのが少し遅いんですね。グリーで働きながら、もうすぐ40歳になるというとき、今までを振り返って「こんな人生を歩んでていいのか」と思ったんです。
小野 僕から見ると、かなり立派な経歴だと思うんですけど。
桑原 コンサルタントを始めとして優秀なビジネスマンが持っているスキルって、資本家の資本をいかに効率的に膨らませるかに過ぎないと感じつつあったんです。それを追い求めながら、上から降ってくるミッションを品質高くこなそうと努力していく人生もむなしい。
自分が生きがいを感じられる、社会的な意義を感じられる取り組みを仕事にしたいと思っていました。そういったときにUTグループに出会ったんです。
──UTグループのどんなところに共感したのでしょうか。
桑原 まずミッションですね。「はたらく力で、イキイキをつくる」は抽象度が高いがゆえに、ほとんどの人にとって人生の中心となる“仕事生活”と“幸せ”を包含している。だから、本質的な仕事ができそうな気がして。
もうひとつはビジネス面。政府が「働き方革命」「ダイバーシティ」を掲げ、非正規労働者の地位を上げるように法律も改正するなど、追い風が吹いている業界です。
そんな中で志を持って、本気で社会を変えようとしている会社は他に無い。ポテンシャルを感じましたし、これから一気に成長していくだろうと思いました。
──お二人が現在されている業務をそれぞれ教えてください。
小野 採用部門の部門長として、グループ5社の新卒・中途採用を行っています。僕が就任したのは3年前、たった5人で立ち上げた部署ですが、現在は64人にまで拡大しています。
──順調に大きくなっていますね。今に至るまで、失敗は無かったのですか?
小野 実は役員就任後2カ月目に大失敗をしまして……。中途採用の責任者を任されたのですが、採用は全く未知の領域。中途採用の場合、1人あたりの採用コストは15万円なのですが、僕は1000万円使って7人しか採用できませんでした。
桑原 1人あたり130万以上! それは高い(笑)。
小野 本当ですよね。でも失敗を許容される文化があるので、何とか頑張れました。翌月は40人、その翌月は150人採用できて、そこからは順調に成果を出せるようになりました。
桑原 僕はキャリア開発部門の部門長をしています。人材の需給が逼迫(ひっぱく)し売り手市場が加速化するなか、ど真ん中の戦略は、いかに従業員を顧客と見て接するか。そのために、今年の4月に立ち上がった部署です。
具体的な業務は、社員のキャリア開発支援が中心。一人ひとりにキャリアコンサルティングをして、動機づけし、キャリアパスを描き、それを実現する教育訓練システムの設計から実施までを仕組み化しています。
地方の工場の非正規労働者は、自分への評価が低く、人生の質を高めていくような触発機会が少ないことが多いんですよね。
けれどきちんと情報を与えて、自己効力感を高めるような働きかけをすると、ゴールを目指す意欲が一気に目覚めると分かってきたんです。4.6%だった離職率も3.8%まで下がりました。
小野 創出したキャッシュに換算すると、かなりすごいことですよね!
──お二人がUTグループで働き続けている、一番の理由を教えてください。
小野 自己表現ができるからでしょうね。エントリー制度もそうだし、自分が望めばエンジニアなど技術系職種に進めるチャンスもある。キャリアが多岐にわたっているので、仕事を通じて本当にいろんな自己表現ができるんです。
僕はUTグループで働いている今、生きがいは何かと聞かれたら、迷わず「仕事」と答えます。ゆくゆくは、日本全国の非正規労働者がUTグループの正規雇用を選び、自己表現できる社会を作りたいです。
桑原 僕はUTグループに入るまでは、誰かに与えられたミッションを論理的に分解した上で、効率的かつ高品質、スピーディにこなすことに全てを費やしていました。
でもここでは、自分の志にフィットしたこと、したいことをベースに動けるんです。そのほうが創造的になれるし、ひらめきも多い。エネルギーも自然に湧いてきて、結果、論理を超えて偶然的によい成果を得られる。もっと早く出会いたかったですね。
何より、自分が作り出した世界で働けるのがいい。よき志が生み出す意義は、パワフルな世界観を創り出し、結果、ビジネスとしては究極のブルーオーシャンになります。競合にはその世界は認識できず、認識ができれば一緒にその世界を実現していくのみ。
志を持って行動をしていたら、不思議なことに物事が動いて出会いを生み、成果も勝手に出るんです。
この仕事は、実行力で世の中を動かしていくことです。理想的でキレイに聞こえるかもしれませんが、実はかなりドロドロした世界。クレーム対応もあるし、日々現場も駆けずり回っています。
だけど、物事の本質的なことに目を向けて、問題解決の方法を考えられる人なら、本当にやりがいのある仕事ができると自信を持って言えますよ。
(編集:田村朋美、文:肥沼和之、写真:岡村大輔)