200兆円の巨大な住宅ローン市場に破竹の勢いで切り込み、注目を集めるフィンテックベンチャーのMFS。住宅ローンを必要とするすべての人が最も有利な条件で借り入れと借り換えができる世界を実現する。このミッションを掲げる同社がもたらすインパクトはとてつもなく大きい。

借り換えをサポートするコンサルティングサービスでは早くも200件、40億円の契約の獲得に成功。今回は同社に出資をしているVCのグロービス・キャピタル・パートナーズの湯浅氏を交え、今後の事業戦略について伺った。

金融機関からの利益誘導を受けないサービスをつくる

-- 住宅ローンは現在、知識のない消費者が損をするようになっていますよね。なぜこのような状態が続いているのでしょうか?
中山田審査基準がブラックボックスになっていて、金融機関とお客様の情報格差がものすごく大きいためです。自分がどこの銀行であれば融資が受けられるのか判断できる情報がないんですね。
住宅ローンは人生最大の契約。しかし、十分な情報がない中、結果として割高な住宅ローンを借りているお客様が多くいます。なぜかと言うと、住宅ローンには金利以外にも様々な手数料があり、比較が難しいからです。
また、住宅ローンの申し込みは揃えなくてはいけない書類も多く面倒で、高い金利で住宅ローンを借りたまま放置しているお客様も沢山います。
株式会社MFS 代表取締役CEO 中山田 明。1999年日本初の住宅ローン証券化を担当。2000年〜新生銀行にて総額5,000億円超えの住宅ローン証券化を主導。2014年10月よりMFS代表
これらの問題を解決するため弊社は2つのサービスを提供しています。1つは「モゲチェック」という住宅ローンの借り換えを手軽にシミュレーションできる無料のアプリです。このアプリでは全国の金融機関の1,000以上の住宅ローンの中から最適なものが瞬時に確認できるようになっています。
そしてもう1つが「モゲチェック・プラザ」という対面で借り換えをサポートするコンサルティングサービスで、銀座と新宿に2店舗あります。借り換えに成功したお客様から手数料をいただくので、金融機関からの利益誘導を受けずに真にお客様の立場に立ったコンサルティングができます。
2016年の4月にスタートしてすでに200件、40億円の契約をいただいております。来客されたお客様の約半数にご契約いただき、平均で400万円ほどお支払額が下がっております。多くのお客様にご利用いただけるサービスに発展すると手応えを感じています。

「ドリームチーム」グロービスが投資を決めた理由

-- 次は出資をしているグロービス・キャピタル・パートナーズの湯浅さんに伺います。フィンテック領域で様々なベンチャー企業があるなかでMFSに投資を決めた理由を教えていただけますでしょうか?
湯浅:毎年100万件、20兆円の住宅ローンの実行がありますが、これほど低金利にもかかわらず借り換えの割合が少ないんです。何かがおかしいと、ずっと住宅ローン市場に興味を持っていました。そういったタイミングでMFSさんをご紹介いただき、出資を決めました。
実は、この市場の特徴を深く理解しているプロフェッショナルなプレイヤーはすごく少ないんです。
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル 湯浅 エムレ 秀和。主にフィンテック、人工知能、ドローン、インターネットメディアへの投資を担当。ハーバードビジネススクール卒
中山田:お客様のニーズは単純な金利比較やウェブでの申し込みではなく、個人の信用力(※)分析やそれに基づくコンサルティングサービス。なので個人データ、信用力分析ノウハウ及び対面コンサルティングのオペレーションをあわせ持っていないとビジネス立ち上げは難しい。
※収入、家計支出及び延滞履歴等を踏まえた住宅ローンの返済能力のこと
湯浅:まさに今おっしゃっていた点が投資判断において大きなポイントになりました。私たちはテクノロジーの力を使って業界の革新を起こそうとする事業に投資しています。しかし金融、特に住宅ローンに関してはテクノロジーだけだとうまくいかない。
MFSはその点を深く理解していました。データの蓄積が参入障壁となるビジネスモデルですが、店舗を持つことでユーザーとの接点が濃密になりデータ蓄積が加速され、大きな先行優位が得られます。
Webサービスに加えてリアル店舗を展開するという経営判断を行い、ファイナンスのバックグラウンドがある経営陣はまさにドリームチームだと判断したのです。

本質はデータビジネス

-- 御社のビジネスの成長性はどのようなところにありますか?
中山田:借り換えの分野でユーザーのデータと審査結果が蓄積されており、これらを分析することで金融機関が個人の信用力をどう見るのかというノウハウが溜まりつつあります。冒頭の「ブラックボックス」による情報格差を埋める橋渡し役としての地位を確立しつつあります。
今後注力するのは新しく家を買う人の借り入れへの対応でして、上記ノウハウを踏まえた新しいサービスを予定しています。多くのユーザーは不動産業者と提携している銀行が提供する提携ローンを、疑問を抱くことなく利用していますが、このサービスによってより最適な住宅ローンを選べるようになると確信しています。
また、住宅ローンほど個人情報が収集できる金融商品は他にありません。収集した膨大な個人データを基に、保険や資産運用などへの進出も予定しています。
-- 今回の募集は経営企画というポジションです。どういった人が向いていますか?
中山田:コンサルティングファームにいる人や銀行の企画部などの企画経験のある方でしょうか。論理的な思考ができて数字でちゃんと議論ができる人。
将来銀行を担おうと思って入ったけれども、フィンテックの動きを見ながら、このまま銀行にいてはダメだという意識を持っている人がいいですね。
株式会社MFS 取締役COO 塩澤 崇。モルガン・スタンレー証券にて住宅ローン証券化ビジネスに携わり、ボストン・コンサルティング・グループを経てMFSに参画。戦略立案・オペレーション構築を担当する
-- 塩澤さんはいかがでしょうか?
塩澤: 今後は不動産テックとの連携が大きなテーマの1つです。どう連携してどのような新しいサービスを組み立てられるのかを考えられる、イマジネーションのある方と一緒に仕事がしたいですね。