【フランシス・フクヤマ】日米同盟は実質的に不安定化している
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注目のコメント
フィリピンは過去にも米国の駐留を拒否した経緯がある。それがクラーク(空)とスービック(海)からの撤退につながった(ちなみに、今は経済特区。JICAもインフラや運営整備に支援。スービックには韓国の造船ハンジンが進出)。物理的にも心理的にもアメリカに最も近い東南アジアと言われるフィリピンは、過去にも何度か米国との距離をとるケースがあった。また、前アキノ大統領の時代が、特に親米路線だったと言え、その揺り戻しもドゥテルテ政権発足のタイミングで起こっている。
日本は、アジア大洋州の安全保障において、キーストーンのような地政学的な場所に位置しているけども、自前の軍隊を持たないことや、国内世論で安全保障に対する関心が極端に低い、という特殊な状況にあることは、日本人自ら意識しておいた方が良いと思う。
日本のような場所に位置して、資源が出ず、しかも、隣国には中国という大国があり、かつ、極めて不透明な北朝鮮があるという環境にも関わらず、安全保障問題に鈍感。この特殊な状況は、専門家の視点からも理解しにくいものがある。これまでに東アジアの安全保障を専門とする日本人以外の研究者と話をしても伝わってきたこと。日本人からすると違和感があるけれども、そのように著名な有識者が感じていて、アメリカなどの政策や世論形成に影響を与えるという点が重要なポイント。日本のパブリックディプロマシーが弱いという課題の裏返しでもある。
ロシアについては今度の会談で簡単に領土が戻ってくるとは思わない方が良い。プーチン政権は対外的にタカ派的なスタンスをとっていることが高い支持率の源泉の1つでもあるため。平和条約は結ばれる可能性はあっても、領土返還とセットとは考えがたい(引き続き交渉という文言程度では)。
トランプは選挙中に言っていたことをそのまま政策に移すかどうかは分からない。もともと、安全保障の専門家でもないし、これからスタッフとの議論でいろいろと考えは変わりそうではある。日米安保を専門にしてきて、米国の著名な国際政治学者、安全保障学者で日米同盟の実態を踏まえた議論をした人に出会ったことがない。日本の有識者と同様、一般論で語る傾向は否めない。
たとえば、普天間飛行場の移設問題に関わってきた米国側の有識者たちが、第1海兵航空団の保有機数すら知らずに移設先の面積を議論していたのには呆れてものが言えなかった。
その米国の著名な有識者を有り難がる日本の朝野もおかしいが、川端さんのコメントにあるように、そうした米国側の有識者の発言が米政府や米国世論を動かすこともまた事実で、要注意だ。
日本側としては、私がNewsPicksに寄稿したような事実とデータを米国世論に伝えるべく、米国マスコミと議会に、執拗に肉迫し続けるしかない。「トランプは民主主義を重視していない」と断言するフクヤマ氏。同氏の見立てでは、トランプが最初に首脳会談を行うのは中国で、民主主義という価値観を共有していない国と最初に首脳会談を行うのは、史上初になるとのこと。予告編でも大野氏が触れていましたが、民主主義の価値を重んじる、フクヤマ氏らしい回答だと思います。