ビジネスの信頼を左右する「非言語コミュニケーション」とは

2016/11/1
「人は見た目が9割」などと言われるが、ビジネスの最前線で活躍するビジネスパーソンは、必ずしも美男美女ではない。ビジネスにおける、信頼を得る「見た目」とは具体的に何なのか。

大統領選で注目したポイント

──テレビ討論会が話題を集めた米大統領選ですが、鶴野さんは、どのような点に注目してご覧になりましたか。
今回の大統領選、終盤はおかしな展開になりましたね(笑)。両者がスキャンダルの突き合いで非難合戦になり、本来の国の未来像を語るようなメッセージがなかなか出てこなくなりました。
ただ、大統領選は、各候補者にスタイリスト、スピーチライター、世論分析の専門家などさまざまなプロが付き、服装やスピーチの内容、伝え方などをアドバイスしています。それをふまえて、注目するのは、トランプ氏のネクタイの色です。
(iStock/Bastiaan Slabbers)
大統領選のような、一度に大勢の人にメッセージを伝える際、はっきりした色のネクタイを選びます。
俗にパワータイと呼ばれるメッセージ性の強い色で、具体的には“エネルギッシュ”で“強さ”を印象付ける赤か、“フレンドリー”さを伝える黄色、そして冷静で知的な印象を与える青のネクタイです。
トランプ氏は、大統領候補として現実的な選択肢に近づいていく中で、青を選ぶ機会を増やしました。これは過激な発言で注目されてきた同氏が、それに嫌悪感を示す層に向けて、拒絶感を軽減し、これまでのイメージを払拭(ふっしょく)する狙いがあったと考えられます。第1回のテレビ討論会でも青いネクタイを着用していました。
しかし第2回・第3回のテレビ討論会で、トランプ氏はネクタイを赤に変えました。女性蔑視発言で非難され、逆風にさらされても、「私はリーダーとして困難を乗り越えてみせる」という強いメッセージ、そして対決意思が感じられましたね。
また、候補者たちは、反響や選挙の情勢、その時の相手候補の出方をもふまえて、話し方や内容を変えていくのですが、ネクタイや見た目に合わせたメッセージを発信すべく、短いキーフレーズを意識して繰り返します。
これはサウンドバイトといって、特定のフレーズやキーワードを印象付けたり、記憶に残りやすくしたりする効果があります。最近では安倍首相も「平和」「未来」など鍵カッコつきの言葉をスピーチによく取り入れていますよ。
──ビジネスシーンでも、プレゼンや商談など、情報を発信する機会はたくさんあります。相手にうまく伝わらない場合、その原因は何でしょうか?
コミュニケーションには「言語」と「非言語」によるものがあり、後者を「ノンバーバル・コミュニケーション」と呼びます。表情や視線、身ぶり手ぶりなどのしぐさ、歩き方、声の質や話し方、服装、身だしなみなどが該当します。
今回はそのノンバーバル・コミュニケーションがテーマですから、その観点で考えてみましょう。
非言語、つまり見た目の情報が相手に与える印象の大きさ、そして情報量の多さについて多くの研究がされていますが、その重要性は日常生活でも認識していると思います。
たとえば普段はラフな服ばかり着ている人も、冠婚葬祭などの場ではきちんとした服を着るものです。記者会見などを見ていても、謝罪会見では反省の気持ちを伝えるために頭を丸める人もいます。
もちろん、経緯や事情があるかもしれませんが、最終的には本人の意思でそんな選択をしている。少なくともどう見られるかを意識した結果の選択であると言えるでしょう。
そして見た目はコミュニケーションの一部です。話を聞いている時でも、相手の表情やしぐさ、服装など見た目にどうしても目が行くものです。つまり、コミュニケーションを成功させるには、内容だけでなく見た目も意識する必要があるのです。
心理学で、「認知的不協和」という概念があります。これは、発言内容と見た目がちぐはぐだと、相手に不安あるいは不信感を与えてしまうというものです。
例えば高級品を販売しようとしているのに、販売スタッフの服装があまりにもラフだと、信用できませんよね。自由な風土のアメリカでも、金融業界ではコンサバなスーツやネクタイをビシッと着こなしています。
最近では、台風10号の被害を受けた岩手県岩泉町に、革靴で被害調査に行った政務官がいました。水たまりを渡るときにおんぶをされ、批判を浴びていましたが、それも当然で、TPOに合わせたいでたちというものが必ずあります。
時代の変化や多様化によって、「これが正解」と言い切るのは難しいですが、コミュニケーションを成立させるには、相手と気持ちよくキャッチボールできる状態を作ること。そのためにどうすべきかを気遣う感覚が、ビジネスでは特に必要ですね。
──たとえば、ものすごく優秀なのに、見た目があまりにもラフなビジネスパーソンは、不利になるということでしょうか。
これは実際にあった例なのですが、ある数学者が長髪、短パン、ビーチサンダル姿で某国を訪れました。入国審査で「学会出席」と書いたところ、身分を偽っていないか怪しまれ、別室で中学生程度の数学問題を解かされたというエピソードがあります。
人は見た目の印象が判断に大きな影響を与えるため、格好によってはその数学者のように、第一印象で不信感を与えてしまう可能性があります。
そのことを認識し、印象を覆すだけの実力と自信を持った上で、あえてそのような格好をしているのであれば、意図的なギャップであり、効果的かもしれません。
「初対面の相手への印象を決めるのは表情。口角が上がっていると好印象で、逆に下がっていると不機嫌に見られてしまいます。また、笑顔は万国共通のコミュニケーション特効薬。ビジネスシーンでは『微笑』が信頼や安心を与えます。口角が上がっていても不自然な場合は、その原因は『目』にあります。目の周りや顔全体の筋肉の緊張をほぐし、目でも笑うことを意識しましょう。」

見た目も中身も、細部まで意識する

昔は、見た目と話の中身のどちらが大切かという二項対立の図式で議論されがちでしたが、最近はどちらも大事にすることが当たり前になっています。
講演やプレゼンをしたり、大事なクライアントを訪問したりするとき、身なりがだらしない人は、中身も大したことがないという印象を与えやすいことは容易に想像できるでしょう。
細かなところまで徹底的に気配りし、見た目も中身もきちんとしている方に共通しているのは、「気構え」があること。
実は、社長が後継者を選ぶとき、「一番社長らしいから」という抽象的な理由で決定することが意外とよくあります。その「らしさ」こそが気構えの生み出す雰囲気なのです。
目指すべきゴールへ向かって、与えられた役割に全力で取り組む。そんな気構えがあれば、自然と見た目や行動に表れます。
企業を訪問したとき、あいさつをする前でも、一目でどの方が社長か分かることがありますよね。それも同様で、気構えがあるために、自然とリーダーだと気づかせてくれる見た目や行動が備わっていると考えています。

印象を左右する「清潔感」

わかりやすい見た目でいうと、ネクタイ選びにもコツがあり、色や柄で与える印象が異なります。
無地の場合は、色が持つメッセージをダイレクトに伝えられます。細かな模様が入っていると、安定感や落ち着いた印象を。ストライプは攻め、チェックは気取りのなさ、親しみやすさ。ドット柄は、水玉が小さければエレガントな、大きければポップな印象を与えます。
「スーツはサイズが重要。大きすぎるとくたびれた印象に、小さすぎると窮屈に見えます。痩せている人は3つボタンのジャケットでVゾーンを浅くし、大柄な人は詰まりすぎないVゾーンのシングルジャケットがオススメです。また、パンツの後ろ姿はダボダボでもピチピチでもやぼったく見えるので注意が必要です。」
また、人の印象を決めるのは、清潔感があり、健康的であること。不潔な人を嫌う人はいても、清潔な人を嫌う人はほとんどいないでしょう。ですから、前日に深酒をしても、翌朝それを感じさせないケアが必要です。
ビジネスで「この人なら任せられる」という安心感は、そうした清潔感や健康的な見た目から得られます。特に、化粧をしない男性は女性よりも素肌が目立つので、スキンケアを怠ってしまうと清潔感を損なうリスクがあります。
「唇が荒れている、ニキビができている、目やにがついたまま、肌がカサついているもしくはベタついているなど、素肌の目立つ男性こそスキンケアは重要です。洗顔はゴシゴシ洗うのではなく、しっかりと泡立てた洗顔料で優しく洗ってよくすすぎ、洗顔後はすぐにローションをパッティングしましょう。肉や脂肪の多い食事、運動不足による肥満などは体臭の原因にもなりますので、バランスのとれた食事と運動も重要です。」

癖を克服し、信頼されるビジネスパーソンへ

──鶴野さんはこれまで多くのビジネスリーダーに、コミュニケーションのアドバイスを行ってきた実績をお持ちですが、指導後に見違えるように変化した事例を教えてください。
海外で初めて講演をするという経営者に、プレゼンのトレーニングをしたことがありました。英語で話さなくてはいけないのですが、語学力にも内容にも自信が無い。弱り切って、私に依頼をくださったのです。
そこで3カ月ほどかけて、スピーチ内容から服装、話し方までトレーニングをしました。いざ本番を迎えると、会場からは大絶賛。賞までもらったそうです。
具体的に指導したのは、まず話す内容で、本題と関係のない部分をそぎ落とし、できるだけコンパクトにしました。間の取り方や話し方など、ちょっとしたことでも印象は変わります。そして大事な部分では、ジェスチャーを付けながらゆっくり話すことです。
プレゼンや講演のときは、スクリーンや資料ではなく聴衆を見て、公平にアイコンタクトを取るため、話のワンセンテンスごとに一人を見続ける「ワンセンテンス・ワンパーソン」が基本です。
ただし、動きが妙に左右非対称のポーズが多かったり、体がどちらかに傾いていたりすると、無気力や疲労感、自信の無い印象を与えてしまいます。その方の癖を見つけ、改善していったことで、見違えるようになりました。
新入社員でも経営者でも、歩き方や話し方、身ぶりなどに何かしら癖があるものです。そして、その癖が強いと、見ている人たちは気になりますから、コミュニケーションを邪魔し、不安感や不信感を生む要因になり得ます。
これに自分で気づくのは難しいので、周りの人に素直に聞いてみて自覚すれば、見た目はぐっと良くなるでしょう。
(取材:田村朋美、文:肥沼和之、写真:須田卓馬、イラスト:砂田優花)
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