【青木×横山】ベルトコンベアに乗らず、自分流に生きる方法

2016/10/16
AKB48グループの2代目総監督を務める 横山由依さんがNewsPicksのプロピッカーと対談する連載「教えて!プロピッカー」。政治・経済からカルチャーまで、第一線で活躍しているキーパーソンと対談し、基礎から学んでいく企画だ。
今回のゲストは格闘家の青木真也さん。自らを「運も才能もない凡人」と語りながらも、 総合格闘技の世界チャンピオンとして、第一線で活躍し続けている。早大卒、元公務員。異色の格闘家の哲学と、強さの源泉を聞く。
価値観を合わせるのは無駄
横山 青木さんは、格闘技をしているとき、仕事をしているなっていう感じはありますか。
私は最近まで、自分がアイドルをやっている感覚がなかったんです。自分の人生がAKB48と一緒に進んでいる感じで、仕事をしているという思いがありませんでした。
大人になってきて、「これは、こういう目的の仕事だな」とか、「これはファンの方への有料メールだから、価値を出そう」というのが見えるようになってきました。
でも、「仕事だから」という考え方もいいのか悪いのか……。
横山由依(よこやま・ゆい) 
1992年12月生まれ。京都府木津川市出身。2009年9月、AKB48第9期研究生として加入。2010年10月に正規メンバーとなり、2015年12月、AKB48グループ2代目総監督に
青木 僕は「格闘技は仕事だ」という意識を強く持っています。「仕事だから」という言い方をみんなネガティブにとらえるけど、「これは俺の仕事だから」と思うことで、できることもあるんです。
例えば、格闘技は直接殴り合ったりするから、友達と戦うのを避けたがる人のほうが多いけど、僕は仕事だからこそできます。
それに、生きていればどうしても、多かれ少なかれ自分の信念に反することも出てきます。でも、自分にとってプラスとマイナスの仕事をこなすことを、世の中がうまく回るための良いシステムと考えるならば、悪いことじゃないと思います。
僕がプラスの仕事をしているとき、どこかでマイナスの仕事をしている人もいるはずですから。
横山 そう考えると、ポジティブに思えてきました。青木さんはプライベートではどんな方とお付き合いするんですか。格闘家の方が多いんでしょうか。
青木 僕は仕事関係の人とは絶対遊びません。格闘技をする人は、格闘技の時間だけの人。
格闘技のことを語る仲の人はいますけれど。
あと、僕は基本的に、あまり人を信用しないので。
横山 ええっ。
青木 友達という概念自体がそれほどなくて、1人でいるのが好きなんです。人と食事に行くこともあまりないです。
嫁と子どもがいるんですけど、家族や、本当に仲の良い海外の選手が何人かいる程度。半径数メートル範囲の信頼関係をちゃんとしたいんです。
横山 「深く、狭く」なんですね。そういうところも、きっと青木さんの格闘技のスタイルにもつながっているんですよね。
青木 そうかもしれません。相手に同調したりされたりするのが嫌なんです。
だから、一つの話題の中で、誰かが「俺は赤がいい」といった時に、「私は白」、「僕は緑だと思う」といえる関係が良い。はたからはケンカしているように見えるかもしれないけど。
横山 ひゃー。そこは私、ちょっと違うかな……。
青木 例えば一緒に話していて、相手が「赤」だと言ったときに、「赤だ」と言わせるような圧力を感じたら、僕は「この人と関わることは、やめよう」って思いますね。
僕は「縁切り」をするんですよ。感覚がちょっと違うなと思ったら、縁を切る。
横山 ええっ。怖っ。
青木 同じコミュニティで生きていて、合わないなと思ったとする。そうしたら、「お前はこっちの道を行け。俺はあっちに行くから。でも、仕事があったら、また握手しよう。じゃあな」みたいな感じです。
青木真也(あおき・しんや) 
1983年生まれ。静岡県出身。小学生の頃から柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜される。早稲田大学在学中に、総合格闘技に転身。「修斗」ミドル級世界王座を獲得。大学卒業後に静岡県警に就職するが、二カ月で退職して再び総合格闘家へ。「DREAM」「ONE FC」の2団体で世界ライト級王者に輝く
横山 合わせようとは思わないんですか。
青木 仕事なら当然合わせます。でもそれ以外の付き合いでは、価値観が違うのに合わせるのは無駄です。合わない人、ダメな人とは関わらないのが良い。
よくみんな、人と出会えば出会うほどいいって言うじゃないですか。人脈を広げるとか。でも100人と出会ったら、その中に危ない人がいる確率も上がるんです。
関わらないと言うと聞こえが悪いですけど、そういう人とは違う道を生きればいいんです。
横山 人として合わないなと思っても、「この人のここはすごいな」って感じる場合もあるじゃないですか。そういうときはどうしていますか。
青木 それはよくあります。合う部分だけで付き合えばいいんです。あの人は、人としては最悪だけど、格闘技が好きなところは合うし、練習相手としてはオッケー。でも、ご飯には行かない。そういう感じです。
横山 すごくわかりやすいですね。でも好きなことが1つは合っているわけなので、他にも共通点があるかもしれないですよね。自分が知らないことを相手に教えてもらったりすることはないんですか。
青木 僕はそういうことはないですね。相当心を許した人とでないと、食事にも行かないですから。どんどんシンプルに生きていくと、楽ですよ。
横山 私は、自分が悩んだとき、たくさんの人に相談して「どう思いますか」と意見を聞いて解決するんですけど、青木さんはそういうことはありませんか。
青木 面白い話が出ましたね。人に相談する時点で、もう答えは出ているじゃないですか。
横山 それは、どういうことですか。
青木 自分の中でどうしたいか決まっていて、行動に移すためのきっかけがほしい。つまり相談相手は、背中押し係なんです。
それをわかっているので、僕には「背中押し係」が何人かいます。だから「ごめん、ちょっと背中を押してほしいんだ」という前提で話をもちかけますね。最初から「行けと言ってくれ」って(笑)。
横山 私は、選択肢を増やしたり、意見ももらったりしたいかな。
青木 僕は「青木さん、どう思いますか」と相談されても、「俺がこうだって言ったらお前はそっちにするのか? やるのはお前なんだから自分に責任持て」と思います。自分に置き換えてもそうです。失敗したとき、「あの人のアドバイス、聞かなきゃよかった」と後悔したくないんです。
横山 なるほど。自分ですべて背負うということですね。私は、誰かのアドバイスを聞いてやったことが失敗しても、別にその人を責めることはないんですけれど。
青木 それは、横山さんがタフだからです。僕は責めてしまう。自分の器がどれぐらいかわかっているからこそ、なんです。
個を確立し、個性を作る重要性
横山 すごくご自身について理解して、個を確立されているんですね。
青木 これからの世の中で重要なことは、個を確立し、そのうえで個性を作ることだと思います。人は自分にないものがほしい。どんなに良いものでも、いっぱいあったら安くなってしまいます。希少性が大切なんです。
横山 個性を作るには、どうしたらいいんですか。
青木 何をしたいのか、どうやって上に行きたいのかを自分の頭で考えることです。
例えば、右向け右のシステムがあるとする。スポーツでいえば、身体能力が高くてアスリートとしての素材が良ければ、そのシステムに乗ればオリンピックぐらいまでは行けると思うんです。
でも、僕だったらその途中で、「ベルトコンベアに乗っているだけで楽しくない」と思ってしまうでしょう。それに、その先で結局自分の道を見つけなければならない。
やっぱり、試行錯誤をする中で、「これが好きなんだ」と思えたら、自立して、個も確立するんです。何をしたいのか、どうしたらよいかを自分で考えられるようになると、システムから放り出されたときにも強さを発揮します。
反対に、考えられないとそのシステムに依存してしまうんです。
横山 そのお話は、すごくわかります。ちょうど昨日、AKB48のメンバーやスタッフと話したのですが、卒業した先輩たちの頃は、「自分たちがこうなりたい」「こんな衣装を着てこんな歌を歌いたい」とみんな思っていて、その集合体がAKB48だったんです。
でも今は、AKB48に入ることが目的になっている子が多いので。何か意見を言えるチャンスがあっても、なかなかアイデアが出なくて困ることがあるんです。まさにベルトコンベアに乗っている状態ですよね。
青木 僕は総合格闘技の「PRIDE」と「DREAM」という団体に所属していました。大晦日で特番が組まれるほど人気だったのに、両方とも消滅してしまいました。僕が参加した当時は格闘技バブルの末期だったのですが、どんどんファイトマネーも減り、それが振り込まれないことさえありました。
そのせいで、必然的に強くなったところはあります。仕事もお金もない中で、何とか生きて行く能力は大事だと思いましたね。僕であれば、とにかく誰かと試合をすることで生きることはできます。
日本の格闘技界が不況になって、多くの選手がアメリカ進出を目指したときも、僕はアジアに進出しました。
横山 それはどうしてですか。
青木 欧米人が、欧米とアジアの選手を比較したら、やっぱり欧米の選手を評価するだろうと思いました。アジアならちゃんと実力で評価される。だったらまずアジアで確固たるポジションを作ろうと。
横山 状況を見極めて、段階を踏んでいるんですね。
引退発表後に復帰してもい
青木 プロ野球やサッカーの世界と違って、格闘技はちゃんと業界として整備されていないので、自分で自分をプロデュースしなければいけません。
今も、僕一人で試合やファイトマネーの交渉も行っています。誰とどこで戦うか、などもすべてやる。大変に見えるかもしれないですが、自分で自分のキャリアを作れるんですから、最高に楽しいですよ。
横山さんは今後のキャリアについてどう考えていますか。
横山 やっぱり、私は考えなしですね(笑)。ただ、本当に今、頑張れないと先はないと思っています。明日は公演をやる、あさっては握手会をやる、その積み重ねです。
目標や夢はありますが、そこに絶対にたどり着かないとダメだというよりは、今歩いている中で生まれた道――例えば、本当に例えばですけど結婚とか(笑)、があれば、ポンとそっちに行っちゃうかもしれないです。思い描いた道を絶対に歩まないといけないとは思っていません。
青木 悔いのないように生きるために、今あるすべてのことに手を抜かないのが横山さんのスタイルなんでしょうね。
横山 はい、そうです。将来的に歌える女優になりたいと思っていますが、それが26歳なのか、30歳なのか、40歳なのかは全くわかりません。人生はどう転がるかわからないので、この年齢までにこうしようとは思っていません。
青木 結婚・出産してカムバックするのもありだと思います。スポーツ選手もよくあるんですよ。引退発表してから復帰すると、周りは「引退式をやったくせに」とかギャーギャー言うんです。
でも、やりたくなったから戻ってくる。それでいいんですよ。生きていれば考えも変わるだろ、と思います。
横山 そうですよね。
青木 僕は、引退する選手には「いつでも帰ってきていいからな」と声をかけます。引退すると言っちゃったから戻れないだなんて、自分が言った言葉に縛られるのはつまらないです。自分が良ければいいんだから。
横山 アイドルも再結成しますもんね。
――最後に、今回対談をしてみて、お互いにいかがでしたか。
横山 この連載で今まで対談してきた方は、「やっぱり一緒だな」と思うことが多かったのですが、青木さんは「一緒だな」と思う部分とまったく違う部分がハッキリ分かれていました。
「そういう生き方があるんだな」「そのやり方で成功しているんだ」と自分とは違う考えにふれてすごく勉強になりました。ありがとうございました。
青木 僕は、運も才能もない凡人としての生き方についてお話しさせていただきました。横山さんはタフだなあと尊敬します。人の前に立ち続けるプロフェッショナルと時間がもてて、その強さを目の当たりにして、とても良い刺激になりました。ありがとうございました。
(構成:合楽仁美、撮影:遠藤素子)