最高の睡眠は、“寝る前”に作られる

2016/10/17
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、注目すべきイノベーターたちが時代を切り取るテーマについて見解を述べる。
イノベーターズ・トーク第48回は、医学博士で『一流の睡眠』の著者である裴英洙氏と“グローバル・エリート”のムーギー・キム氏が登場する。
裴氏は、大学病院や基幹病院を中心に、主に胸部外科に従事し、肺がんや心臓病などの手術を数多く手掛けたのち、金沢大学大学院に入学し、外科病理学を専攻し医学博士を取得。
さらに、医師として働きつつ慶應ビジネス・スクールにて医療政策・病院経営を学び、現在は臨床を行なう医師、経営者、病院の再建を支援するコンサルタントという「3足のわらじ」を履く。
片やムーギー・キム氏は、“金融・人材・メディアの国際化”を標榜する“グローバル・エリート”で『最強の働き方』などの著書が累計40万部を突破する作家としても知られる。
そんな2人が、仕事で100%の力を発揮するための「最強の睡眠法」について論じる──。
寝不足で疲れが取れない、なかなか寝付けない、たくさん寝たのに熟睡感がない……。
今、ビジネスパーソンの3人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているという。
よく眠れないと日中の仕事に悪影響を及ぼし、十分なパフォーマンスが発揮できないのは自明の理だ。
だが、卵が先か鶏が先か。医学博士の裴英洙によると、「一流の睡眠」は眠る前、日中の過ごし方や寝る前の行動で作られるという。
つまり、日中の過ごし方が良くないと快眠を得られずに、またよくない日中を過ごす……という無限ループにはまりやすい。
これを受け、自称“一流スリーパー”かつ“最強の睡眠術師”のムーギー氏は、「前夜から1日を管理する」という発想はこれまで浮かばなかった、と評する。
では、睡眠前にどのような行動をとれば一流の成果に直結する「最強の睡眠」が得られるのか。
当代随一のベストセラー作家の2人が、深い“睡眠談義”を繰り広げる。
裴氏は、外科医として重要な手術を執刀する前夜に、いつも心がけていたことがあるという。
それは、「前日の睡眠から手術はすでに始まっている」と意識することだ。
「特殊な睡眠法をやるのではない。そう意識するだけ。わたしの経験からすると、外科医だけでなく、ここに一流と普通を分ける大きな差がある」
一方、ムーギー氏は、「寝過ぎは良くないというのは、グローバル・エリートの不文律だ」と指摘。これに、裴氏もその通りと頷く。
寝過ぎも睡眠不足も問題だ。では、どんな睡眠が「一流」かつ「最強」なのか。
ムーギー氏は、裴氏に「一流の睡眠法として、優先順位の高いものをあげてください」と頼む。
その内容はいずれも納得のいくものだが、ムーギー氏は「意思の問題で、それがなかなかできないことが問題だ」と指摘する。
すると裴氏は、「安眠を妨げるものを全面禁止というのではなく、3回に1回くらいにしたらどうですか」と優しくアドバイスする。
曰く、「まずは“三流の仙人”になりましょう」と。
では、 “三流の仙人”になるための基本とは?
対談第2回まではオーソドックスな快眠法が語られた。そこでムーギー氏は「みんなが知らないような安眠法を教えてほしい」と尋ねる。
すると、裴氏は意外な快眠術を提案する。
そのポイントは歯ぎしり防止と、悩みの「見える化」だ。では、その方法とは?
安眠が疲労回復に有効なのは言うまでもないが、睡眠だけではカバーしきれない疲労もある。
裴氏によると、そもそも疲労には、肉体的疲労(筋肉疲労)、精神的疲労(心が疲れる)、神経的疲労(脳みそや目や耳が疲れる)の3種類があり、それぞれの疲労回復法は違うという。
これを受け、ムーギー氏は最強の仕事人たるグローバル・エリートは、独自の疲労回復法を持っていると指摘。
いったい、最強の疲労回復法とは何なのか。
冒頭で述べた通り、裴氏は医師、経営者、コンサルタントと3足のわらじを履く。ムーギー氏も「金融、人材、メディアのグローバル化」という自身のテーマを追求するため、シンガポール、フランス、そして年末にはアブダビにも拠点を拡大し、インキュベーションや情報プラットフォームの運営など様々な仕事を手がける。
ムーギー氏は言う。
「わたしにはやりたいことがいっぱいあり、全部やってしまおうと思っています。趣味であれ、仕事であれ、好きで得意なことをやっていると、自分の人生のクオリティが格段に高まります」
この意見には、裴氏も強く首肯し、「人生は幕の内弁当が素晴らしい」と独自の理論を展開する。
果たして、それが意味するものとは?
(予告編構成:佐藤留美、本編構成:栗原昇、撮影:遠藤素子、デザイン:名和田まるめ)