【証言】孫正義がワインを飲みながら語った「対グーグル戦略」

2016/10/15
ワインを飲んだせいなのか、その日、孫正義はあまり語らない企業名を口にした。
「グーグルが開発している、効率化、自動化の進んだ世界は、まるで人間の要らない世界をつくっているようじゃないか。私はそれに抵抗したい」
孫が言いたかったことは、こうだろう。
米シリコンバレーを代表するIT企業のグーグルは、膨大なデータを収集して、人間の生活を便利にしてくれている。「検索エンジン」は、インターネット上のあらゆるサイトを分析して、知りたい情報をすぐに探してきてくれる。
近年では、よりリアルな世界にも進出し、地図データや画像データを駆使して、コアラのようなデザインの無人自動運転車を開発しているのは周知の通りだ。
その根底には、ロボットやドローンによって、社会をさらに「自動化」「合理化」しようというグーグルの未来像がある。
孫は、そうしたアプローチをとるグーグルに対して、ソフトバンクに勝算がある分野は、合理化の“真逆”にあると考えた。
その一つが、人間の「感情」だ。
「機械のような存在よりも、ドジでまぬけであっても、もっと人間に近づこうとするロボットのほうが愛されるんじゃないかと思う」