【3分解説】アップル、任天堂、BMW。大発明に潜む「ARM忍者」

2016/10/12
1999年に公開されたハリウッド映画「マトリックス」と言えば、コンピュータが作った仮想現実の世界で、天才プログラマーが真実を求めて戦うというサイバーパンクの名作だ。
その作品前半、主人公がオフィスから脱出する際に、バナナ型にカーブした形の携帯電話を握りしめる場面が登場する。
Nokia 8110──。
この美しいデザインの端末は、北欧フィンランドのIT通信大手ノキアが作った「名機」であることは、一部のファンたちには知られている。
しかし英国の半導体設計会社ARMが、デジタル携帯電話の内部に、自社の半導体チップを入れ込むことに成功した最初期のモデルの1つだと知る人はほぼ皆無だ。
ARMはわずか12人のエンジニアが創業した、小さなベンチャー企業だった。大きな投資ができないため、工場は持たず、省エネルギーに特化した「設計」に力を注ぎ込んだ。
そしてどんな企業にも、有料で「設計図」をライセンスするというモデルを育てることで、彼らのデザインした半導体チップの居場所をじわじわ増やしてきた。
1997年には年間約1000万ほどだったチップの出荷数は、2015年には約150億個にまで増加している。
まるで忍者のように、あらゆるハイテク製品の中に潜んでいるARMは、どんな歴史を歩んできたのか。彼らが支えた「12の発明品」とともに、知られざる物語を紹介しよう。