【3分解説】黒田日銀、異次元緩和のコストはいくらか?

2016/9/24

日銀の損失、9兆円

量的・質的金融緩和(いわゆる異次元緩和)により、これまで日銀は市場から国債をネットで年間約80兆円ずつ買い入れてきたが、多くの識者が指摘する通り、この政策には限界がある。
理由は単純で、2015年度末時点で発行されている国債の総額は約1000兆円(財投債等を含む。普通国債のみでは約800兆円)であり、異次元緩和は2013年からスタートしたので、このペースが続くと約12年ですべての国債を買い尽くしてしまうためである。
このような状況の中、日銀は政策転換を図るため、2016年9月20日・21日の金融政策決定会合で「異次元緩和の総括検証」を行い、長短金利を誘導目標とする新たな金融緩和の枠組み(いわゆる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」)を導入した。
この新たな枠組みの本質は「量から金利への転換」だ。今回の政策転換は、異次元緩和の限界(=量ターゲットを重視するリフレ政策の失敗)を暗黙に認め、その軌道修正を図ったということが大きなポイントで、筆者も一定の評価ができる。
9月21日、日銀は異次元緩和の限界を暗黙に認め、軌道修正を図った
ただ、今回の政策転換で異次元緩和に関係する全ての問題が解決するわけではないという視点も重要である。 異次元緩和に伴う円安・株高という「偽薬効果」は消え、その「副作用」や「コスト」が顕在化する可能性の方が高い
まず1つは、 現在も日銀が保有する長期国債には損失が発生しているという問題である。
この損失は、異次元緩和により、日銀が長期国債を買い取るときに元本を上回る価格で購入した分で、償還時には元本しか戻ってこないために生じる。
では、どの程度の損失かというと、現在(2016年8月31日時点)それは約8.8兆円に膨らんでいる。
この損失8.8兆円は、「営業毎旬報告」で日銀が保有する長期国債(339.54兆円。2016年8月31日時点)から、「日銀が保有する国債の銘柄別残高」での合計(330.73兆円。同)を差し引くことで簡単に計算できる。