「社会問題をみんなと考えたい」大友幸さんがNPに寄せる期待

2016/9/17
NewsPicksで活躍する一般ピッカーにお話を伺う本連載、今月は女性ピッカーさんに注目していきたいと思います。
7人目のピッカーとしてご紹介するのは、 大友幸さんです。
コミュニケーションのプロとして、国際プロジェクトやグローバル企業の広報を歴任してきた大友さん。現在はシンクタンクで広報と人口問題の研究を兼務するかたわら、NewsPicksでもマクロな視点でのコメントをされています。
そんな大友さんが、NewsPicksに感じている可能性について伺ってきました。

マクロの観点からコメントする理由

── NewsPicksでコメントを始めたきっかけから教えてください。
以前から閲覧はしていたのですが、コメントを始めたのは2016年6月頃と最近の話です。
LIXILグループからシンクタンクに出向することになり、研究員として自分の名前を公表して発言するようになりました。環境が変わったこともあって、仕事だけでなくNewsPicksでもコメントしてみようという気持ちになりました。
シンクタンクでの私の担当プロジェクトは、人口問題です。
現在の研究テーマである、少子高齢化や保育園のあり方、働き方のスタイルであれば、私もみなさんにお伝えできる情報があると思いました。
大友幸(おおとも みゆき)
駐日英国大使館、外務省ジュネーブ代表部を経て、アメリカ政府NSFで国際プログラムIntegrated Ocean Drilling Programのコミュニケーション統括に従事。LIXILグループのグローバルPR、M&Aコミュニケーション、世界経済フォーラムのコーディネーションに携わり、現在は日系シンクタンクの日本再建イニシアティブに在籍出向し、人口問題の主任研究員と広報統括を兼務。オックスフォードブルックス大学大学院でM.B.A.取得。チャータード インスティテュート オブ マーケティング(CIM)マーケティングディプロマ終了。
── ご自身の経験や日々の暮らしの中での感覚よりも、冷静に俯瞰したコメントが多い印象です。
本当は、自分の生活体験に根ざしたコメントの方が書きやすいんです。
ただ、ミクロとマクロの観点があるとして、私はなるべくマクロの観点で書こうと心がけています。
── それはなぜですか?
2点あります。1つには、私自身がマクロの観点で社会を見る目を鍛えたいからです。メーカーからシンクタンクに出向しているのも、消費者ニーズを理解できるよう、社会全体を見渡す力を養うためです。
もう1つは、 ニュースの奥にある社会課題を、みなさんと一緒に考えたいからです。
例えば人口問題にしても、何をどう変えていけばいいのかを突き詰めて考えると、本質への理解がどうしても求められます。
このニュースで取り上げられている事象は、どんな社会課題のもとに起きているのか。そこを理解しないことには、解決の糸口はつかめませんし、また同じ問題を繰り返す可能性があります。
NewsPicksを毎日使われている方々の多くは、私と同様、本質への理解を目的とされている方が多い印象です。そんな方々とともに、意見を共有し、一緒に考えていけたらと思います。

コミュニケーションで世界をつなぐ

──大友さんのプロフィールを拝見すると、国や言語を超えた、幅広いご活躍ぶりですね。
産業や業種を限らず、コミュニケーションに携わる仕事をしてきました。
英国でMBAとマーケティング課程を修了した後、日本に帰国して英国大使館に勤めました。それからまた海外に出て、外務省のジュネーブ代表部や民間の現地企業などで、計10年ほど経験を積んでいます。
6年前に帰国してからは、アメリカ国立科学財団のプロジェクトの広報統括を担当しました。約30カ国の科学者たちが参加する、国際深海掘削の共同プロジェクトです。
具体的には、日本の地球深部探査船「ちきゅう」や欧米の掘削船を用いて、海底の深部を調査することで、地球の内部構造や、巨大地震が発生するメカニズムを解明しようとするものでした。
私は、その意義を世界に知ってもらえるように広報活動を行いました。
例えば、『ネイチャー』や『サイエンス』などの科学誌を通じて研究成果を発表したほか、国際会議や展示会のコーディネーションをしました。
また、一般にも研究に興味を持っていただけるように、掘削船の航海の様子を現場からツイッターで発信してもらう企画も実施したんです。
── これまでのお仕事は、グローバルかつ、携わるテーマの幅が広いですね。
経歴だけ見ると、うまくキャリアをつないでいるように見えるかもしれませんが、ビザを握りしめながら就職活動したこともありますし、結構苦労しています(笑)。
社内幹部向けのリーダーシップやダイバーシティに関する講演会で、司会を務める大友さん。

大友さんの考える「ビジネスパーソンの必須能力」

── “広報”といっても、扱っているのが消費者向けの商品やサービスと、目に見えない「研究」をプロモーションするのでは、どんな違いがあるのでしょうか。
企業で商品やサービスを扱っている場合は、その価値を伝えたいエンドユーザーも一般の方が多いですね。
深海掘削も、現在携わっている人口問題もそうですが、「研究」を扱う場合には、メンバー内のコミュニケーションも大切になります。専門家の方々に協力していただくために、リレーションを築くのも重要な仕事です。
これは現職のLIXILグループで携わっている「M&Aコミュニケーション」にも共通することです。
買収先の企業の海外拠点から、「今後どうなるのか」と問い合わせがくることもあります。新しいブランドと既存ブランド、どちらを残すのか。雇用スタッフはどうするのか。相手が国を代表する企業の場合は、その国の政府から見解を求められることもあり、 説明責任も大きくなります。
── どこの国にいても、どんな言語を使っても、グローバルに求められるビジネスパーソンの能力とは何でしょうか。
普遍的に大事なのは、実行力ですね。
ゴールに至るために、どんなアプローチがあるか、思いつくことを全て用意する。何かできないことがあれば、それを補う方法を考える。
何よりもまずは、どうすればイメージしていることが実現するだろうかと、奮起して考えてみる。
考えることが実行力の第一歩ですね。でも、考え過ぎないで実行していくスピードも大切だと思います。

コメントを通じた政策レビュー

── コミュニケーションのプロである大友さんが、NewsPicksでコメントをする際に心がけていることは何ですか。
私はNewPicksをつうじて、国の政策や状況のレビューをしているつもりなんです。
新しい政策や制度について、今の時代に即しているのか、誰にとってメリットがあるのか、デメリットを受ける人はいるのか。コメントをするときは、一つひとつ私なりに見直して、判断したいと思っています。
政策を検証することもシンクタンクの大事な仕事です。みなさんの生活に関わるところで、何が起きているのか、気づいてほしいし、関心を持ってほしい。そんな思いがあります。
── コメントをする上で、今後ブラッシュアップしていきたい点があれば教えてください。
コメントの書き方はまだまだ工夫せねばいけないな、という気持ちがあります。同じ高齢化の話も、理論だけを書くよりも、私が自分の家族や、日常生活から感じたことを、自分ごととして捉えた言葉で書いた方が、読んでくださる方にも共感していただきやすく、伝わりやすいのではないかと。
堅苦しいコメントにならないように、他のピッカーさんから勉強させていただいている途中です。
── 女性として、名前を出してNewsPicksを利用することに、不安などはありませんでしたか。
私自身は、性別を意識することはありませんでした。
名前を出して活動することについては、それができる環境にいらっしゃる方もいれば、そうでない方もいらっしゃると思います。
ただ、名前や経歴も公開してみたところ、フォローしてくださる方が増えるようになりました。この人の発言は信頼できるか、それを判断する1つの要素として、どんな経験を積んできた人間なのか、参考にされる方も多いのかもしれませんね。
── NewsPicksについて、「社会課題にチャレンジしていく場」ととらえていたコメントも印象的でした。単なるメディアやSNS以上の可能性を感じていらっしゃるのかなと。
NewsPicksは、ニュースを扱うメディアですよね。そこでは、即時性のある情報だけでなく、教育的な役割も、プラットフォームに併せ持っていると思います。
大手新聞など既存メディアでも、ニュースに加えて、社説や解説など読者が学べる記事をつくっていました。ただ、NewsPicksではさらにそれが発展して、コンテンツと教育をこれまでと違うかたちで提供していると思います。
具体的には、コメント投稿によって、ユーザーを巻き込み、意見を共有できるようになっています。集まってきたユーザーが互いに学び合うことができる。そこに可能性を感じます。
── このポケモンGOのニュースについても、「みんなで学ぶ」という感じがありましたか。
ポケモンGOという身近なトピックに対して、豊かなやりとりがありましたね。
みなさん最初は「ポケモンを何匹捕まえた」「レベルがいくつになった」と、プレイしてみての感想や実感を共有されていました。そのうちに、プレイしている人を見ていて「危険な面もある」という声があがり始め、その課題に対して、規制の必要性や、それに反対する声もあがりました。
ニュースをテーマに、記事やコメントを読んでインプットし、自分でもコメントを書いてアウトプットできる。みんなが参加でき、考えて、学ぶことができる。そこがNewsPicksの素晴らしさだと思います。

大友さんの新しい挑戦

── 最後に、今後はどんなことに取り組まれるのか教えてください。
研究テーマである人口問題は、高齢化や働き方の変化など、いろんな観点から論じることができます。そこで、それぞれのテーマを研究されている専門家に執筆をお願いし、書籍にまとめました。
この問題は、アジアの中でも日本が先進的で、他の国々も日本のように高齢化に直面する、と言われています。海外にもこの研究を知っていただく価値があると感じ、英語でも情報発信していこうとしています。
海外の出版社に売り込んでみたところ、割と大きな会社に興味を持っていただけまして、来年には出版される予定です。
私自身も出版の経験はこれまでなかったので、初めてのことですが、楽しみな挑戦ですね。

大友幸さんのオススメピッカー

しっかりした読みを、やさしい表現で伝えることができる方です。
コメントに安定感がありますね。ベースの専門知識(金融)が感じられ、分析も冷静な方です。
マーケティングの分析が、理論整然としている上に具体的だから。
小野 編集後記

「ニュースの奥にある社会課題を、皆さんと考えたい」。所属しているシンクタンクの使命を、NewsPicksでのコメントを通じて個人レベルでも果たそうと努めている大友さんからは、まさに実行力を感じました。

そして、真剣な眼差しで話してくださる合間に、「でも、失敗もたくさんしているんですよ」と、はにかむ姿がとてもチャーミングでした。

誰もが参加でき、ともに考えて、学ぶ合うことができる場に、NewsPicksをしていきたいという大友さんの思いに、私も強く共感します。そのために、自分に何ができるか。まずは奮起して考えます!