京大フォーラム「これからの人生の話をしよう」

2016/9/10
京都大学時計台百周年記念ホールで8月7日(日)、男女学生たちのライフプランに新しい選択肢を提示することを目的とし、フォーラム「これからの人生の話をしよう」が開催された。
ライフプランに関するイベントには珍しく、参加者の約半数は男子学生。
そんな中、パネルディスカッション第一部では、ワーキングマザー・ファザーであるゲストの実体験を交えた議論が行われ、プロピッカーでもある徐東輝氏、牧野正幸氏、白河桃子氏、新居日南恵氏のほか、ピッカーの西村創一朗氏、日本たばこ産業株式会社の金山和香氏などが登壇した。
登壇者のプロフィール
:まずはゲストの方々に自己紹介がてら、どのような人生を歩まれてきたのかお話しいただきます。
西村:平日は某人材サービス会社で採用の仕事をしています。また、学生時代から父親の育児を応援するNPO法人ファザーリングジャパンで活動をしています。そして去年、もっと自分のやりたいことをやろうと思い、27歳の誕生日に会社を立ち上げました。
今28歳なのですが、長男が8歳、次男が4歳、長女が今年2月に生まれまして、3児の父です。実は僕、大学1年の時に高校2年から付き合っていた彼女との間に子供が生まれたんですね。なので、みなさんくらいの年齢の時にはすでに子供がいた、学生パパでした。
金山:理系出身で、JTの中でたばこ事業の活動をずっとやってきました。工場の仕事、エンジニア、マーケティング、海外事業などいろいろな畑を転々し、3年位前に会社内の多様化を進める多様化推進室の立ち上げに関わりました。小学4年生と5歳の男の子がいます。
白河:26歳で結婚して、その後30代で今の道に入りました。自然に任せていたら子供を自ら生むことはありませんでした。ですので、皆さんには「ここがポイントだから気を付けて」みたいな話をしたいな、と思っています。
やりたいことを追求する
:バリバリキャリアを築くか、福利厚生がちゃんとしている会社を選ぶか、どちらがいいでしょうか?
金山:入り口でそれを決めたからと言って、ずっと同じ気持ちを持ち続けるかもわからないし、入社前後で見えるものも違います。やりたいことも変わっていくので、あまり最初に決めつけなくてもいいのかな、とは思います。
最近はバリキャリという言葉もありますが、私自身そのようにしているつもりも、しようとしたつもりもないです。ただ、人生において何を重視していくのかは考えているので、その時々で、何を重視するか考えていけばいいんじゃないかと思います。
西村:僕自身、就活している時は既にパパだったので、それはすごく悩みました。結果としては、自分のやりたいことを追求しようと思いました。なぜかというと、ワークライフバランスとは会社に求めるものではなくて、自分自身で築きあげるものだと考えたからです。奥さんに「最初の3年くらいは毎日終電かもしれない」と断ったうえで、自分自身のやりたいことをやることでワークライフバランスを実現しようと思いました。
一方で、男性の育児休暇など「ワークライフバランスの取り方に寛容かどうか」は、すごく重視しました。
気を付けるべき会社は
:会社の中には福利厚生が形だけになっているところもあります。ホワイト企業とブラック企業の見分け方はありますか?
白河:企業は4タイプに分けられます。
まず「働きやすいけれど出世はしない会社」。ここでは、一度職を手放すと二度と手に入りません。転職復職禁止なのです。
次に「働きにくいけど出世はできる会社」。マスコミなんかまさにそうなんですけど、男女関係なく働けて3年くらいすればかなり実力もつきます。もしここであまりにワークライフバランスがだめだったら、「働きやすく出世もできる会社」への転職が可能になるわけです。
要注意なのは、「若い女性が楽しくキャッキャ働いている会社」なんですね。これは裏を返すと若い女性しか働く場所がないので、これだけ気を付けていただければ、柔軟な選択で最高の決断をしていただけると思います。
専業主婦のリスク
:女子学生の中には専業主婦になりたい人が少なからずいて、男子学生にも女性にそう望む人は多いと思います。実際のところ専業主婦になることをどう思われますか。
白河:きっと専業主婦がいいと思っている皆さんは、専業主婦の自分のお母さんが良かったんだと思います。自分のお母さんの良かったところと、今の専業主婦の奥さんが思っていること両方を見て、良いとこ取りをしていけばいいんじゃないかって思うんですよね。
ただ、経済的な面で男性に一番関係があるのは、生涯賃金の損失です。専業主婦になるのは、1億5000万から2億7000万の損害なんです。さらに、一度仕事を辞めてから年収300万以上に回復できる人は10%に過ぎない。これを踏まえて、奥さんが専業主婦になることは重たい選択だと覚えてほしいですね。
「パパスイッチ」を入れるには
:子供を産み・育てる際、仕事を辞めてしまう経済的負担は大きいですか? あるいは、仕事を辞めなくても、産休や育休による、機会損失での経済的負担は大きいでしょうか。
金山:単純に仕事の面から言うと、復職自体は難しくありません。とうのも、大体いつ頃戻ってくるかがわかっていると、会社側は計画的に仕事を組めるからなんですね。
一方で、難しいのは女性の精神的ハードルです。私の場合は、復職を前提に夫の「教育」をしていましたね(笑)。生まれてすぐから赤ちゃんの世話を一緒にして、ママ歴・パパ歴を重ねていくようにしました。
また、復職後に私と夫で役割に偏りが出ないように、私が週3、夫が週2で保育園に迎えに行くことを決めました。そのペースで、お互い会社の付き合いや、会社で遅くなる日はそれを尊重し合っています。
:やっぱり男性の教育は大事ですね。
西村:子供が生まれて急に「パパスイッチ」が入る人はいないので、強制的に入れなきゃいけないんですね。そのためには育休もいいなと思っていて。育休取った方に聞くと、「夫婦の絆がすごく強まりました」という声が多いんですね。結婚って二人で新しい社会を作っていくことで、自分だけの人生じゃないわけです。そう考えると、「奥さんのビジョンを実現するために自分に何ができるのか」「家庭に自分がいかにコミットするか」を考えることが、ひいては自分に返ってくるんですよ。
金山:男性の育休は大事ですが、短期間の育休よりもむしろ大事なのは、復職した後にどれだけ一緒に並走してくれるかなんです。瞬間風速的に「育休を取ったぞ」と言われても、キャリアや子供の成長を考えたら10年以上あるわけです。そこでどれだけ助け合ってくれるかですよね。
育児は夫婦の一大プロジェクト
:就活生からよくある質問で、ご夫婦で共働きされている時に、育児のタイミングでどちらかが仕事をセーブするなどの経験があったのかお聞きしたいです。
西村:まず、どちらかに頼り切るのはよくないです。逆にきっちり分けすぎてもしんどくなるので、それこそ掃除・洗濯も「気になった方がやる」って、緩やかに分担していくのが大事かなと思います。前提として、仕事をセーブするとか犠牲にする必要はまったくないな、と。
僕は学生結婚だったので、奥さんは大学辞めちゃったんですね。それもあって、僕は奥さんのやりたいこと、挑戦したいことを応援したいと思っていて。「プログラミングの専門学校に行って自宅でも働きたいな」と言っていたので、来年1年はスイッチして僕が100%家庭のことをやろうかなと思っています。
金山:私はやっぱり、両方働いていたほうが不確実な世の中では安定的に生きていけると考えました。役割分担では、夫に「来週ちょっと山場だから交換してくれ」と言うことなどがあります。特に育児面では、「育児」という長期プロジェクトのマネジメントをしていると思っていて。「周囲の外部リソースをどう上手く使い分けるか」や「今は育児の目標達成までの、どの段階なのか」を考えて、上手くコントロールしていこうと取り組んでいます。
若い男性社員にも、「まだ若いからプロジェクトマネジメントさせてもらえないじゃない?育児だったら君が主導権取れるよ」と話しますね。
二兎を追って二兎を得られる人生にしたい
:西村さんは以前インタビューの中で「ワークライフソーシャル」という、日本にはなじみのない言葉を使っていらっしゃいました。「ワーク」が仕事、「ライフ」が家庭や趣味の時間など、「ソーシャル」が地域活動など地域や社会との関わりです。この「バランス」でなくて「ミックス」が重要なんだとおっしゃっていて。そのお話もお聞かせ願えればと思います。
西村:もしやりたいことがあるなら、二兎を追って二兎を得られる人生の方がハッピーだと思うんです。無理にライフとワークで半分半分のバランスを取ろうとするんじゃなくて、やりたいことをやりたい分だけチャレンジすればいいと思っていて。足りない時間に関しては、むしろどうやって作っていくのかって話で。ロスタイムを前提として試合するサッカー選手なんていないじゃないですか。仕事も残業を前提とするんじゃなくて、仕事を設計する。それでできた時間を自分の人生にどう投資していくかだと思っていて。その意味でミックスした人生が一番ハッピーだと思って、そういう風に表現しました。
:人生の中でワークとライフとソーシャルをどうマネジメントしていくか。これもプロジェクトマネジメントの一つですね。
男性にもキャリアダウンはある
:最近働き方も変わってきて、女性のキャリアプランの話はよく聞くんですが、男性の話もすごく面白いなと。
白河:実は京大の男子学生とかは主夫になりやすい。なぜなら、女性も高学歴だから。夫婦どちらの仕事がより柔軟なのかとか、忙しいフェーズは違う。今は男性がキャリアダウンすることも十分あります。女性の方が子育てのために早く帰ります、っていうことが多いので、夫が理解されないんですね。だから夫が転職して、ちょっとお給料は下がるけど理解のある企業に行くご夫婦も多い。だから必ずしも女性だけがキャリアダウンするわけじゃなくて、これからは夫婦で戦略を立てて選択をしていく時代かなと思いました。
奥さんが働き続けることを応援してあげると、男性のチャレンジも応援されるんですよ。旦那さんが「本当にしたい仕事をするから」と言って資格取るために仕事を辞めて、その期間を養ってくれというご夫婦もいらっしゃったんですね。そういう時に女性の方の働くことに揺らぎがあると、なかなか応援してもらえないですよね。
男性の育休はキャリアアップにも有効
:西村さん、男性の立場としては、あまり理解がされにくい話かと思います。社内の位置づけなどはどうですか?
西村:会社でマネジメント・評価をしている世代は僕らより一回り二回り上の世代なので、そういう世代からは「子どもが生まれる、じゃあ育休はどうするんだ」という話にはならない。働く個人側の意識が変わっている一方で、マネジメントする側の意識がまだまだ変わっていないところもあります。
もっと柔軟な働き方がしたい場合、その会社で働いている社員さんにどんどん会うことを勧めたいです。実際に柔軟な働き方ができるかどうか、OB訪問で会う社員さん自身が柔軟な考えを持っているかがすごく重要なので。
金山:会社側が本当に受け入れてくれるかも重要ですけれど、自分自身がどうしたいかをどんどんアピールしていってほしいなと思ってます。
これは一つの方法なんですけれど、私の夫が10年ほど前、まだイクメンという言葉もない時代に、1カ月育休を取ったんですね。かなりの衝撃だった代わりに、会社の中で「彼は子育てに価値観を置く人だ」というアイコンが立ったので、そのあとの仕事の調整も比較的理解が得られました。
西村:優秀な人ほど成果を上げながら育休を取得し、早めに帰って残業をせずにお迎えまでしている人が増えているなと思っています。実際にマネージャーとして評価されている人も、子育てに積極的な人が増えているんです。理由はシンプルで、マネジメントをする時、部下に子持ちの女性が増えているからなんです。自分自身が子育てを積極的に行っているからこそ、起こるだろうハザードの流れが頭の中にあって、そういう面で高い成果を上げている人が増えてきている。出世したいなら、むしろ育休を取っておいた方がいい時代になってきているかもしれないと感じます。
就活生に向けて
:こういう意識をもって就活してほしいとか、就活に向けたアドバイスがあればいただきたいです。
金山:たぶん、皆さん見えない世界に対して不安を抱いていると思うんです。会社に入っても全部が見渡せるわけじゃなくて、自分のライフイベントの面でも、仕事の面でも見えないことがどんどん訪れるのが現実だと思います。「どういう風に考えていけば間違いがないだろう」じゃなくて、「どういう状況になっても自分で考えて対処できるんだ」という自信をつけて、そのうえでやりたいことを軸に会社を選んだ方が、困難な状況も乗り越えられる活力になるんじゃないのかなと思います。
白河:やっぱり、妊娠できる時期は限られるんですね。それをちゃんと知っておかないと、キャリアプランなんてどうやって立てるの?と思います。ライフとワークとソーシャルと、いろいろあるわけですけど、まず自分の人生があって、その中で色んなことが起きていくんだっていう長い目で見てほしいなと思っています。
就活では、社長の発信をしっかり見てほしい。働き方改革に対してどういう姿勢をとっているか、今はダメでも改善する意思のあるところを選んでほしいです。
西村:本当に人生って正解がないんですよね。就活をしている時はついつい正解を求めてしまうんですけれど、自分の心の声を聞いて、自分の本当にやりたいことを選ぶ。僕自身が19歳でまさか、付き合っている彼女と赤ちゃんができるなんて思ってもみなかったです。「この人と結婚すべきかどうか」「この会社で働くべきか」と迷った時は、変に天秤に掛けずに、本当にしたいことを素直に選ぶべきだと思っています。自分の選択を正解にするために必死に考えて努力していくことに、人生の価値があると思っています。ぜひそういう感じで人生の選択肢を選んでもらえればと思います。
白河:まさに彼が言った通りで、人生の8割は偶然だと言われています。どんなに計画しても計画通りにいかないし、ITの進化も早くて未来は予測できないです。
あともう一つ、好きなことが見つからない人がいます。学生の経験からやりたいことを見つけるのはすごく難しいし、それは私も分かります。なので、分からない人は社会人としてしっかりお給料をもらって、自分の生活を立てることを考えてほしい。そうしたら、いくらお給料がもらえればいいのかとか、そのお給料がもらえるのにはどんな仕事があるのかとか、考えていけると思うんです。だから決してやりたいことが見つからないと言って焦らないでいただきたいなと思っています。
質疑応答
:皆さんにお聞きしたいのですが、今みたいにライフプランとキャリアを結び付けて考え始めたのはいつでしたか?
金山:私は2段階あって、1回目は自分が結婚しようと思った時。相手は東京にいて、自分が福島で仕事をしていたんですね。結婚するのか、時期を待つのか、仕事をするのか考えました。
2回目は意識して子供を作ろうとしていた時期ですね。キャリアと自分の死ぬまでの人生と、どうバランス取っていこうかと考えていました。
西村:僕の場合はすごく特殊で、キャリアとライフプランを考える順番が逆転しちゃっているんです。
思い返せば原点は、僕自身の家庭環境にあります。母は僕が生まれたころからずっと離婚したいと思っていて、でも専業主婦なんで金銭的な事情でずっと別れられなくて、悲しそうな母親をずっと見てきました。「こんな思いさせちゃいけないな」と小学校時代からずっと思っていたんです。
:理解のある男性や企業を増やすために、私たち学生の立場からできることはありますか?
白河:一つは、長時間労働を野放しにしている企業に行かない。人気が下がればやっぱり考えます。学生の選択が変われば、企業も変わっていくのかな、と思います。
西村:働く環境って、個人をベースに変わっていくんですよ。企業も企業として存続していくためには優秀な人を採用しなきゃいけないし、採用するだけじゃなくて優秀な人に働き続けてもらわなきゃいけない。競争戦略として、働き方を変えることをやり続けなきゃいけない。
金山:正直な話、企業は皆さんが思っている以上に学生の動向を気にしています。なので、まさに今就職する手前の段階で、ぜひそういうことを仲間とともに発信していただきたいなと思っています。
:金山さんに質問で、お互いのキャリアの節目に来たとき、パートナーとどのような話をして、どのような意思決定に至ったのでしょうか?
金山:転勤や昇進で、緊急対応が必要になる立場になる際は、事前に夫に相談しています。「こういう風にすればやっていけそうだ」「家庭にとってどんなメリットがあるのか」といった話をよくしています。そういう時に、「夫の教育」じゃないですけど、夫より先に立場が上がっていく時は「私の力で上がったんじゃなくて、あなたが仕事に集中できる環境を作ってくれた。だからこれは、あなたの成果でもある」と言っていますね。
白河:素晴らしいですね。女性が出世しない意識の問題に迫った時に、「夫より出世すると面倒なことになる」というのがあったんですよ。申し訳ないけれど、女性活躍推進で一定以上の企業は女性役員を必要とするので、皆さん世代では女性の方が上に行くのが早いと思う。
:最後に、今日来た学生に、メッセージをお願いいたします。
白河:婚活や妊活は個人の選択だからこそ誰にも強制されない。私がいつも言うのは、受け身でベルトコンベヤーにのっていたらどうにかなる時代は終わったよ、と。ですから皆さん自分の意志で色んなことを決めていってほしいと思っています。
西村:これからの人生で、皆さんは働き方・生き方の面で前例にとらわれないイノベーターだと思っています。やりたいこと、したい生き方があったら臆することなくチャレンジしていってほしいですし、皆さんの選択一つ一つがこれからの社会を作っていくと思うので、これから就活などがあると思いますが、臆せずにチャレンジしていっていただければと思います。
金山:自分がどうしたいのかは、人生の中でコロコロ変わっていきます。変わっていいんです。経験したことによってやりたい事や考えていることが変わるものだと思っています。だから、変わっていって自分が何をしたいのかを問いかけてほしいのと、「社会のせいだ」とか「制度のせいだ」とかじゃなくて、自分がどうしたら少しでもそこに近づけるかを考えられるようになって社会に出れば、社会も変わるんじゃないかなと思っています。
※続きは、明日掲載予定です。