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「COMPANY Forum」レビュー(2014年、キーノートセッション)

あの“Joi”が語るこれからITが進むべき道

2016/8/29
常に変革し続けるITの最前線にあって、その先のテクノロジーとビジネスを 創造するMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏が、牧野正幸氏と「未来のITのあり方と、その中で企業が進むべき方向性」について語り合った。
*この記事は2014年10月7〜8日に開かれた「COMPANY Forum 2014」のキーノートセッションの内容をワークスアプリケーションズが取材した記事の転載です。

不要の資産を捨て「アジリティ」を装備せよ

牧野氏がはじめに問題提起したのは、「日本でベンチャーが育ってこない」という点だ。そして、「海外で採用した新卒者に比べ日本人新卒者は、仕事に対する姿勢などで幼い印象だ」と述べたうえで、クリエイティブな人材をどう育てていけばよいのか」について伊藤氏に見解を求めた。

それに対して伊藤氏は、「Project、Peers、Passion、Playの4つのPが重要」であるとし、次のように語った。

「プロジェクトという脈絡の中で、誰かから教わるのではなく、仲間から学んだり仲間と教え合うほうが人は育つ。また、学びにも仕事にも情熱は必要だ。さらに、金銭とプレッシャーでインセンティブを与えると、単純作業は効率化するがクリエイティブな作業は遅くなる。違う角度から発想するという意味で、遊びも重要な要素だ。困難だが、“権威を疑い、自分で考える”文化の会社にするしかない」(伊藤氏)

MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ 所長、ベンチャーキャピタリスト、実業家。2008 年、米『ビジネスウィーク』誌「インターネット上 で最も影響力のある世界の25人」に選出

MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ 所長、ベンチャーキャピタリスト、実業家。2008 年、米『ビジネスウィーク』誌「インターネット上 で最も影響力のある世界の25人」に選出

続くディスカッションのテーマは『ITのこれからをどう見るか』。牧野氏からは、「クラウドコンピューティングがITを大きく変えつつある。特に、オープンソースのベーシックテクノロジーは、ものすごい速度で進化している」との認識が示された。

この点を踏まえて伊藤氏は、「企業経営に則して言えば、経営の方向性を機敏に変えていく『アジリティ』が求められている」と述べ、「大企業に見られがちな利益を生まない資産を捨てられない姿勢」を「経営判断のスピードを遅らせるもの」と指摘。

そのうえで、1クラウドは“腐った資産”を作らない、2クラウドの活用で世の中のアイデアがフィードバックされるようになったという観点から、「クラウドコンピューティングは企業がアジリティを持つチャンス」と、とらえるべきだと訴えた。

また伊藤氏は、エンタープライズITの今後のあり方にも触れ、その中で「RDBをなくしてスピードを上げていく企業とそうでない企業のギャップは、相当広がるだろう」と述べた。最後に、牧野氏自身も強い問題意識を持つ「日本の大企業において、いかにしてイノベーションを起こしていくか」について意見が交わされた。

伊藤氏は「米国の元気な大企業はベンチャーのネットワークのプラットフォームになっている」という状況を説明し、そこから学ぶべきこととして、1大企業はベンチャーを下請けとして使うのではなくベンチャーの発想やノウハウ、人材を取り込むルートを作る、2顧客との壁をなくし、顧客からアイデアやパッションをもらうことなどを挙げた。

牧野氏は「大企業は新卒採用をやめ、ベンチャーからスカウトする方式にするくらいの大胆な試みがあってもいい」などと応じ、「人材の流動化を推し進め、イノベーションを起こし続けたい」との考えを示した。

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*伊藤穰一氏が登場した「COMPANY Forum」は、今年は9月28〜29日に開催します。人工知能(AI)の世界最高権威者であり発明家のレイ・カーツワイル氏やアップルの元CEOジョン・スカリー氏、元大阪府知事の橋下徹氏などが登壇します。無料で参加できます(事前登録制)ので、こちらでイベントの概要や見どころをご確認いただき、お申込みください。